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 ティーカップに入った紅茶を飲み干し、小説の最後の1ページを読み終わる。不意に見上げた壁掛け時計に反射した夕陽に顔を顰め、ヒロトは本を閉じた。
「もうそろそろいい時間だけど、まだかな」
自室の一角に置かれた椅子から立ち上がり、彼はカーテンを閉める。時刻は17時頃で、ヒロトが帰宅してから1時間ほどが経過していた。
 十分ほどして、部屋の外の階段が軋む音が聞こえる。ヒロトはようやく待ち続けた人物がやってきたのだと思った。
 ドアが開く。そこには、ひどく汗をかいた長身の高校生が立っていた。
「遅かったじゃん。何していたの、コウキ」
 コウキは質問には答えず、荒々しい呼吸をしながらその場にへたりこんだ。ドアを開けたまま持ち続けていたドアノブが、彼が床に崩れ落ちると同時に大きな音を立てる。
「何していたの、って聞いているんだけど」
 ヒロトはコウキがへたりこんでいる場所まで移動し、彼を冷たい目で見下ろした。コウキが恐る恐るヒロトを見上げる。その目は怯えきっており、全身は小刻みに震えていた。汗に濡れた長いまつ毛が、蛍光灯の光に照らされてきらきらと光った。数秒ほどしてから、喉から絞り出した声が掠れ気味にヒロトの耳元まで届いた。
「い、委員会が……長引い…たから…」
「ふうん。」
 コウキの返答にはそれほど興味を示さず、ヒロトは机の上の鍵に目をやった。彼がその鍵を取りに行き、また元の場所まで戻るまでの間、答え方を間違えたらまた彼に何かされるのではないかと思っていたコウキはひとまず安堵した。
「立って。」
 一段と大きな声でヒロトが言った。その声に気圧された臆病なコウキは、ヒロトが不快にならないようにすぐに立ちあがろうとした。しかし足に力が入らず、結局時間をかけてよろめきながら立ち上がる形になってしまう。
 壁に手をついたままなんとか立ち続けているコウキの腰をいきなり掴み、制服のズボンに通されたベルトをヒロトが取った。
「な、なにするの、やめ」
 焦ったコウキがズボンを掴む。ヒロトは鋭い目でコウキを見上げた。その目に怯えて、コウキはズボンから手を離した。
「いい子」
 ズボンと下着を強く掴み、そのまま下におろす。貞操帯を付けられたコウキの下半身が露出した。そのまま持っていた鍵で貞操帯を外す。
「うわあ、すごいことになってる」
 貞操帯が外されたコウキの陰茎は大きく勃起しており、朝ヒロトに散々塗りたくられた媚薬と、先から止めどなく吐き出され続けた先走り液が床に滴り続けていた。
「こんなんが優等生なんだからって、笑っちゃうよね。まあ、君は本当は優等生ではなかったみたいだけど」
 コウキが泣きそうな顔をして床を見続ける。そのよく整った顔が後悔と恥ずかしさに歪む様子を、ヒロトはいい気になりながら見つめていた。
 突然、思いついたかのようにヒロトがコウキの肩を強く押した。コウキは激しくよろめき、壁に強く背中を打ち付けてから尻餅をついた。
「っ、ぁ…」
 十分に働かない頭では急な衝撃に何が起こったのかわからず、背中の痛みに一層息が上がる。ようやく視界がはっきりした頃、コウキの目の前には大きくなったヒロトの股間が押し出されていた。
「舐めて」
 意味がわからず、返答までに時間がかかる。気を悪くしたヒロトがもう一度、大きな声で言った。
「舐めて」
「いや、いやだ……」
 コウキが目に大粒の涙を溜めて拒否する。首を何度も左右に振り、口を両手で隠した。その間、何度も何度も拒否の意を口にしていた。
「いいの?」
 そう言いながらヒロトはコウキの両手を口から剥がし、両頬を片手で掴んだ。そのまま手に力を入れ、無理やりコウキの口をこじ開けた。
「んーっ、んーっ!」
「みんなにバラすよ。先生にも、君のお母さんにも」
 目から涙を流し、大きく肩を震わせながらコウキは静かになった。しかし、まだヒロトの言う通りの行動を取ろうとはしない。ヒロトはコウキの髪の毛を掴み、その口内に股間を押し込んだ。
「んーーーっ!!!!」
 全身で抵抗しながら、なんとか口をヒロトから遠ざけようとする。しかしヒロトは強い力でコウキの頭を抑え続ける。陰茎の先が乱暴にコウキの喉の奥まで当たり続け、その刺激にコウキは背中を震わせながら何度もえずいた。
「いい子いい子。そう、君は僕の言うことを聞いていればいいんだから」

 コウキは優しく、控えめながらも全ての人に平等に接し、困っている人を放ってはおけない好青年であった。成績も優秀なため教師からも好かれており、彼のことを信頼しない人はいなかった。それゆえ彼は多くの人から好かれていた。ヒロトも例外ではなかった。ヒロトは無意識に目線がコウキを追うようになった頃から、彼の人目を引く容姿も従順な性格も、全てを支配したいと考えていた。その頃であった、ヒロトがコウキの弱みを握ったのは。
「君、カンニングしていたよね。」
 放課後の誰もいなくなった教室で、ヒロトはコウキに詰め寄った。
「え………?」
 てっきりいつも通り何かの頼みごとをされると思っていたコウキは困惑して答えた。
「いや、だからカンニングしていたよね。こないだの日本史のテストで。僕、見ちゃったんだけど。」
「………」
 その性格上嘘をつくのが極端に苦手なコウキは、暗い顔でしばらく俯いてから声を振り絞って言った。
「………いけないことだと、わかっていたんだ…わかっていたんだ本当に、でもお母さんがこわ…くて………もう、怒られたくない…」
 彼は半ばパニックのようになりながら、母親の要求する成績に応えることが段々難しくなっていることを説明し、ストレスが極度に溜まった状態でカンニングをするしかないという判断に至ったのだと弁明しようとした。そして、掠れた声でもう二度としないと誓った。
「ふうん、でもそれってただの言い訳だよね。それにもう二度としないと言ったって、一度してしまったことはもう遅いんだよ。」
 ヒロトは、自分の発した言葉を聞いたコウキの呼吸音が浅くなるのを感じとった。同時に、彼を自分のものにできると確信し始めていた。
「君ってさ、クラスでもだいぶ人気あるよね。きっとお母さんからも信頼されてるんじゃないのかなあ。それでさ、僕が本当のこと喋っちゃったらどうなるんだろう。お母さんは、なんて言うのかな」
 そう言いながら、ヒロトはコウキの顔を覗き込んだ。俯いたままのコウキの瞳が小刻みに震え続け、顎から汗が滴り落ちているのが見えた。
「…大丈夫安心して。僕は、そんなふうにして君を陥れたりしない。ちょっと、言うことを聞いてくれるだけでいいから」
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