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第84話

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 余り喋らずに、本気を出したサーロンは先程と違い、スピードもパワーも同じはずなのに、キレが違った。

 「おい、本気を出したら、もう傷を負わせられるなくなるのか」

 サーロンの言う通り、途端に攻撃が通じなくなり、優人達は苦戦にさらされた。

「なら、こちらからの攻撃もそろそろ激しくするぞ」

 サーロンが、そう言うと姿が消えて、再認識したのは優人の懐に潜り込み、優人の腹に拳が添えられた衝撃だった。

 そして、気付いた時には優人は壁に叩きつけられて、そのまま前に倒れこんだ。余りの痛さに久しぶりの死の実感に体が震えた。

 
 「大丈夫ですか、今、回復魔法をかけます」

 ゴーレンさんが、急いで駆け寄ってくれて回復魔法をかけてくれた。


 「さすが勇者だね、普通だったら腹に大きな穴が開いているところなのに」


 サーロンが笑いながら、そう言った。


 「なら、勇者の力を見せてやるよ」

 優人は、痛みが和らぐ程度には回復したので、気力を振り絞って立ち上がった。

 そして、優人は今まで使ってこなかったアビリティを使用した。

[アビリティアッパー]


 修行空間で最後に習得したアビリティ《アビリティアッパー》は自身が所有しているアビリティの階級を超級に30分間上げることが出来る。

 「みんな、サーロンから距離を取ってくれ」

 そして、優人はサーロンの懐に潜り込んだ。

 「へー、やるじゃあないか」

 先程、サーロンにやられた攻撃と全く同じことをサーロンに仕掛けた。

 「いい攻撃だ」

 しかし、サーロンは優人のように吹っ飛びはせず。その場で攻撃を耐えきった。


 「残念だよ。勇者の本気の一撃は確かに効いたが、君では戦闘の経験が違う。僕を倒しきるにはいかないね修行をやり直しな、死んだあとの世界でな」

 
 「残念だが、お前の予想は外れるよ」

 サロパスタが、サーロンの頭上から大剣を振り下ろした。

 「クッ」

 サーロンは、先程とは違う危機感を感じて、慌てて避けた。

 「やっぱり、長年生きた魔人の感は凄いな、今まで通りに気を体に張って、剣撃を防ごうとしたら真っ二つになっていたのにな」

サロパスタは、大剣を構えなおしてそう言った。


 「どういうことだい、《アビリティアッパー》は勇者にしか使えないはずなのに、どうして」


 「まあ、優人のアビリティのおかげだな、修行空間の能力で俺達も紛い物だが、《アビリティアッパー》を取得できたんだよ。3分しか持たないがな」

 「でも3分あれば十分」

 スノウが、そう言って誰もが認識さえできない速さでサーロンに蹴りを放った。

 「グハッ」

 先程の優人の攻撃と違って、サーロンは耐えきれずに吹き飛ばされた。

 そして吹き飛ばされた先にはアスカさんが、双剣を構えて、飛んできたサーロンに剣撃を叩き込んだ。


 「これは、マズイな」

 「どうにかする隙も与えねえよ」

 サロパスタがそう言って、サーロンにドンドン攻撃を叩き込んでいく。


 サーロンも攻撃をかわし、防ぎ、反撃するが、サロパスタやスノウが放つ攻撃が段々激しくなると、防ぎきれずに生命力を削られていった。


 そして、《詳細鑑定》でサーロンを見ると生命力は2割をきっていた。


 しかし、無情にも3分が過ぎてサロパスタ、スノウ、アスカさんが、その場に倒れこんだ。


 「やばかったよ。あと2分ほど《アビリティアッパー》を使われていたら、倒されていたよ」


 あちこちから血を流しながらも、サーロンはそう言い放った。

 「油断するのが早すぎるぜ」

サロパスタが倒れ伏しながらも、そうサーロンに言い放った。

 そして、サーロンはサロパスタの言葉に返答することができなかった。


 「サロパスタやスノウが出来るなら、私も出来るのよね」

 ホワイトが、そう言って《静止の魔眼》を再び使い、サーロンの動きを静止させた。

 「これで、おしまいだよ」

 静止したサーロンに、《簡易レベルアッパー》を使用したフィーレンさんにレイア、ポーレさんにデロックさんがサーロンに攻撃を加えた。

 サロパスタやスノウのように攻撃力が高くないので、少しずつ生命力を減らし続けていたが、ようやくサーロンの生命力が1割をきった。

 「勇者、トドメを頼むよ」

 フィーレンさんがそう言って、優人に告げると

 「はい、ヴォルテックスクラッシャー」


 優人は、ありったけの魔力を込めた雷魔法をサーロンにぶつけた。

 
 そうして、遂にサーロンの生命力が0になった。

 
 終わってみたら、あっという間のように感じるが、優人達は勝利した。
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