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第43話

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 「外は、もう夜ですね」

 レベル2のダンジョンから出ると、外は暗く門の周りには誰もいなかった。しかし

 「何だか視線を感じますね」

 「ちゃんと分かっているようですね」

 アスカさんが、そう言ってホワイトを抱っこしながら、周囲に気を放った。

 すると、周囲から人影が現れたが夜で暗くよく分からない。

 「まあ、あの視線からレベル1のダンジョンの外で出会った冒険者達だろうね、力の差を感じたと思ったけど、只の準備不足だったみたいだね」

 アスカさんはそう言って、周囲の人影に話しかけた。

 「今すぐ、退散するなら見逃します。しかし襲いかかるならば容赦はしませんよ」

 赤ちゃんを抱きながら、そう言うエルフを見て襲撃者達は武器を抜きながら距離を詰めてきた。

 しかし、そんな彼等を襲ったのは

 「今ので、リーダー以外は全員死にましたか」

 ゴーレンさんの闇の魔法で、闇夜に紛れて襲撃者達の急所を闇の刃で貫き、リーダー以外はこの世から永遠に立ち去った。

 「ふざけんじゃねぇぞ。何で俺たちが殺されるんだ」

 リーダーが的外れなことを言ったが、ゴーレンさんはそんなリーダーに冷酷に言った。
 
 「武器を抜き放ってから襲いかかってきて、その言い草は見過ごせませんね」

 そう言って、ゴーレンさんはリーダーに再び闇の魔法で攻撃し、今度は防ぐことができずリーダーも物言わぬ骸となった。

 「ほんとうに、赤ん坊の情操教育に悪いものを見せないでよ」

 ホワイトがアスカさんの胸元に頭を預けながら、そう言った。

 「まあ、何にせよ早く街に戻りましょう」

 ゴーレンさんがそう言って、4人はジャリスに向かって走っていった。


 そして、夜もすっかり深まった頃4人はジャリスにたどり着いた。ギルド出張所で襲撃者達の遺体を提出してから急いで馬車に乗った。馬車に乗っている間にホワイトはアスカさんの腕の中ですっかり眠っており、その表情は幸せそのものだった。

 「さて、今日は2つもダンジョンを攻略できましたし明日は1日休日にして、明後日にレベル3のダンジョンを攻略しませんか?ナセルとデロックも誘って安全にダンジョン攻略をしましょう」

 アスカさんがそう言って、優人もゴーレンさんもその考えに否定しなかったので、明日は休日となった。

 「さて、本日はお祝いをしようと思いましたが予想外の出来事で時間がかかりましたからレベル3のダンジョンを攻略した後に皆さんでお祝いをしましょう」

 ゴーレンさんがそう言って、4人はそれぞれの部屋に戻っていった。



 翌朝、目を覚ました優人は休日だと分かっても2度寝をせずに食堂に行って、久しぶりに街を1人で探索しようと思った。

 「おはようございます。ユート君」

 「おはようございます。ゴーレンさん」

 食堂には、ゴーレンさんとふてくされた表情を浮かべているホワイトがいた。

 「ゴーレンさん、ホワイトはどうしたんですか」

 「アスカが、今日は1人で妹さんの情報を集めたいと言って、ホワイトを私に預けて出て行ったんですよ」

 「アスカに今日は1日抱っこしてもらいながら、ショッピングでもしたかったのに、赤ちゃんの成長のスピードは早いんだから少しでもベッタリしたいのに」

 ホワイトは頬を膨らませながら、念話でぶつくつ言っている。

 それから一緒のテーブルで朝食をとって、優人は席を立った。

 「じゃあ、自分も街を探索してきます」

 そう言うと

 「わたしも連れて行きなさいよ」

 ホワイトがそう言って、優人を見つめてきた。

 「え~、ホワイトも一緒に来たいのか?」

 「なに、もしかして淑女には見せられないような店に行くつもりなの」

 「違うわ、わかったよ。一緒に行こうか、ゴーレンさんも一緒に行きますか?」

 「いえ、私は結構です。あまり羽目をはずしすぎないように楽しんでくださいね」

 「はい、ちゃんとしろよホワイト」

 「いや、あんたもよ」


 そうして、優人はホワイトを抱っこしてから宿屋を出て、ダンジョン都市ジャリスの街中に繰り出した。


 「いや~、色々とあるな」

 色々とあてもなくブラブラとお店や露店を見て歩き、ホワイトと一緒にそこそこ楽しみながら歩いていると段々と街の外れ近くまで歩いてきてしまった。

 「何だか治安が悪そうだな、戻るか」

 「そうね、ならあっちの道を歩いて戻りましょう」

 そう言って、来た道とは一本ずれた道を歩いて行った。暫くするととある店が優人の目に飛び込んできた。


 「奴隷の販売店か」

 異世界ものの定番の奴隷商の店が目に入った。

 「あんたは別に奴隷は必要ないでしょ、さっさと行くわよ」

 ホワイトはそう言うが、初めての奴隷商である。少し見ていきたいという興味が凄くあった。

 「ちょっとだけでいいから、見ていかないか」

 「あんたも物好きね、まあいいわよ。見ていけば」

そうしてホワイトの許可も得たので、幾つかある店のうちで、一番外観が綺麗で大きな店に入ってみた。

 
 「ようこそタウィス奴隷店へ、本日はどのような奴隷をお求めで」

 入って早々、奴隷商の店員に捕まり

 優人は、少し内心焦りながらも言葉を紡いだ。

 「これといった希望はないんだけど、大体の奴隷はいくらぐらいなのかな」

 「そうですね、人間の成人男性で平均600万リスタですね、成人女性で平均650万リスタですね。獣人やエルフ、ドワーフなどの異種族になると値段も跳ね上がり安くても1000万リスタぐらいですかね」

 値段を聞いて、優人は驚き店員に言った。

 「そんなにもするんですか、今はお金もないので失礼します」

 そう言って、踵を返して店を出た。

 
 「いや~、あんなにも高いとはビックリだね」

 「当たり前でしょ、さあ宿屋に一旦戻りましょう」

 そう言って、初めての奴隷商はあっという間に終わった。

 「今まで読んできた小説とは違うな、てっきり可愛い獣人の女の子がいると思ったのにな」

 「そんな娘がいたら、値段は凄く高いでしょうね」

 そうして、奴隷商の店が立ち並ぶエリアも終わりそうになった時、露店で奴隷を商っている店の前を通った時に、その言葉が2人の耳に届いた。



 「そこの赤ん坊を連れた若いお父さん、年上の大人も養ってみないか」

 渋い声で、そんなゲスな言葉を吐いたのは、檻の中にいる40代ぐらいの男だった。
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