136 / 158
僥倖
しおりを挟む
その日は俺の部屋にみんなで集まり、夏休みの宿題をしていた。
何故、うちになったのか?
そんなの、俺が一人っ子で親が共働き。
尚且つ、部屋が一番広かったからだ。
健太は弟と同室。小野は祖父母の家。
石塚の家は親がお店をやっていて、田上と添田は部屋が6畳でベッドがあるから6人は無理!という話になり、何故か我が家になった。
みんな一軒家だからなのか、多分、マンションの高層階に行きたかったんだろうな。
まぁ……高層階と言いながら、別に普通のマンションで、12階建ての12階なだけなんだけどなぁ~と苦笑いした。
実際、健太と小野はリビングからベランダに走って行くと
「久しぶりだけど、相変わらず見晴らし最高!」
盛り上がる二人に、呆れた顔をしながら
「ほら!宿題しに来たんでしょう!」
と添田が呟いた。
優里も苦笑いしながら
「良くベランダに行けるよね」
って言うと、添田にしがみついている。
「優里、高所恐怖症だったよな?大丈夫か?」
ふと清水寺事件を思い出し、そう声を掛けながらモヤっとしてしまう。
そんな俺の気持ちに気付かず
「聡が高い所が平気な理由が分かった」
そう呟きながら、添田にしがみついているのにも気に入らない。
「優里、そこは添田じゃなくて俺だろう?」
と言って手招きすると
「意地悪しない?」
ビクビクしながらそう聞いて来る。
(どうしよう……今日も、優里が安定の可愛らしさだ!!)
心の中で滝の涙を流し頷くと、優里は添田を気にしながら手招きする俺に近付く。
おずおずと俺のシャツの裾を掴む仕草も、(くそ!マジ可愛いな!)って思いながら手を出すと、優里が俺の手を握り返した。
こういう瞬間、恋人で良かった!!と思う瞬間だったりする。
普段は甘えベタな優里が、こうして甘えてくれる度に幸せを噛み締める。
え?簡単な男だって?
良いんだよ。俺は優里の為なら、いくらだって簡単な男になれる。……いや、違うな。簡単な男になっちゃうんだよ。
仕方ない。それが、惚れた弱みって奴だ。
「取り敢えず、部屋はここだよ」
部屋のドアを開けて中に招き入れると
「意外!田川の部屋って散らかってるかと思ってた!」
添田に開口一番に言われて苦笑い浮かべると
「田川君の部屋、初めて来た」
そう言いながら、珍しそうに優里が部屋をグルリと見て呟く。
「え!」
すると、優里の言葉に全員が俺の顔を見た。
「なんだよ!」
ムッとして睨む俺に、添田が目を輝かせて
「田川、あんたを見直したよ!」
そう言って俺の背中をバシバシと叩く。
「添田!痛てぇ!」
と呟く俺に
「たまちゃんを大事にしてくれて、本当にありがとう」
そう言って添田が小さく微笑んだ。
「なんだ~、聡。とっくに部屋に連れ込んでヤ……」
と言いかけた小野の知りに、切れ味抜群の添田の蹴りが入った。
「小野、下品!」
睨んだ添田に
「え~!なんで?普通に思うじゃん?でも小野っち、そこはラブホ」
と言いかけた健太を、石塚のチョップが脳天にめり込んだ。
「田川君を健太と一緒にしないで!」
石塚の言葉に困惑する。
石塚よ、俺はいつからお前の中でそんな位置になっているんだ?
健太の話では、石塚の中で俺は田上のナイトなんだとか。
どうしてそうなった?
俺だって、健全な男子高校生な訳で……。
隙あらば……と思っていても、田上の天然が他の人とは違う隙を作らないだけなんだけどなぁ~と苦笑いを浮かべるしかなかった。
何故、うちになったのか?
そんなの、俺が一人っ子で親が共働き。
尚且つ、部屋が一番広かったからだ。
健太は弟と同室。小野は祖父母の家。
石塚の家は親がお店をやっていて、田上と添田は部屋が6畳でベッドがあるから6人は無理!という話になり、何故か我が家になった。
みんな一軒家だからなのか、多分、マンションの高層階に行きたかったんだろうな。
まぁ……高層階と言いながら、別に普通のマンションで、12階建ての12階なだけなんだけどなぁ~と苦笑いした。
実際、健太と小野はリビングからベランダに走って行くと
「久しぶりだけど、相変わらず見晴らし最高!」
盛り上がる二人に、呆れた顔をしながら
「ほら!宿題しに来たんでしょう!」
と添田が呟いた。
優里も苦笑いしながら
「良くベランダに行けるよね」
って言うと、添田にしがみついている。
「優里、高所恐怖症だったよな?大丈夫か?」
ふと清水寺事件を思い出し、そう声を掛けながらモヤっとしてしまう。
そんな俺の気持ちに気付かず
「聡が高い所が平気な理由が分かった」
そう呟きながら、添田にしがみついているのにも気に入らない。
「優里、そこは添田じゃなくて俺だろう?」
と言って手招きすると
「意地悪しない?」
ビクビクしながらそう聞いて来る。
(どうしよう……今日も、優里が安定の可愛らしさだ!!)
心の中で滝の涙を流し頷くと、優里は添田を気にしながら手招きする俺に近付く。
おずおずと俺のシャツの裾を掴む仕草も、(くそ!マジ可愛いな!)って思いながら手を出すと、優里が俺の手を握り返した。
こういう瞬間、恋人で良かった!!と思う瞬間だったりする。
普段は甘えベタな優里が、こうして甘えてくれる度に幸せを噛み締める。
え?簡単な男だって?
良いんだよ。俺は優里の為なら、いくらだって簡単な男になれる。……いや、違うな。簡単な男になっちゃうんだよ。
仕方ない。それが、惚れた弱みって奴だ。
「取り敢えず、部屋はここだよ」
部屋のドアを開けて中に招き入れると
「意外!田川の部屋って散らかってるかと思ってた!」
添田に開口一番に言われて苦笑い浮かべると
「田川君の部屋、初めて来た」
そう言いながら、珍しそうに優里が部屋をグルリと見て呟く。
「え!」
すると、優里の言葉に全員が俺の顔を見た。
「なんだよ!」
ムッとして睨む俺に、添田が目を輝かせて
「田川、あんたを見直したよ!」
そう言って俺の背中をバシバシと叩く。
「添田!痛てぇ!」
と呟く俺に
「たまちゃんを大事にしてくれて、本当にありがとう」
そう言って添田が小さく微笑んだ。
「なんだ~、聡。とっくに部屋に連れ込んでヤ……」
と言いかけた小野の知りに、切れ味抜群の添田の蹴りが入った。
「小野、下品!」
睨んだ添田に
「え~!なんで?普通に思うじゃん?でも小野っち、そこはラブホ」
と言いかけた健太を、石塚のチョップが脳天にめり込んだ。
「田川君を健太と一緒にしないで!」
石塚の言葉に困惑する。
石塚よ、俺はいつからお前の中でそんな位置になっているんだ?
健太の話では、石塚の中で俺は田上のナイトなんだとか。
どうしてそうなった?
俺だって、健全な男子高校生な訳で……。
隙あらば……と思っていても、田上の天然が他の人とは違う隙を作らないだけなんだけどなぁ~と苦笑いを浮かべるしかなかった。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
2番目の1番【完】
綾崎オトイ
恋愛
結婚して3年目。
騎士である彼は王女様の護衛騎士で、王女様のことを何よりも誰よりも大事にしていて支えていてお護りしている。
それこそが彼の誇りで彼の幸せで、だから、私は彼の1番にはなれない。
王女様には私は勝てない。
結婚3年目の夫に祝われない誕生日に起こった事件で限界がきてしまった彼女と、彼女の存在と献身が当たり前になってしまっていたバカ真面目で忠誠心の厚い騎士の不器用な想いの話。
※ざまぁ要素は皆無です。旦那様最低、と思われる方いるかもですがそのまま結ばれますので苦手な方はお戻りいただけると嬉しいです
自己満全開の作品で個人の趣味を詰め込んで殴り書きしているため、地雷多めです。苦手な方はそっとお戻りください。
批判・中傷等、作者の執筆意欲削られそうなものは遠慮なく削除させていただきます…
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
あなたなんて大嫌い
みおな
恋愛
私の婚約者の侯爵子息は、義妹のことばかり優先して、私はいつも我慢ばかり強いられていました。
そんなある日、彼が幼馴染だと言い張る伯爵令嬢を抱きしめて愛を囁いているのを聞いてしまいます。
そうですか。
私の婚約者は、私以外の人ばかりが大切なのですね。
私はあなたのお財布ではありません。
あなたなんて大嫌い。
【完結】やさしい嘘のその先に
鷹槻れん
恋愛
妊娠初期でつわり真っ只中の永田美千花(ながたみちか・24歳)は、街で偶然夫の律顕(りつあき・28歳)が、会社の元先輩で律顕の同期の女性・西園稀更(にしぞのきさら・28歳)と仲睦まじくデートしている姿を見かけてしまい。
妊娠してから律顕に冷たくあたっていた自覚があった美千花は、自分に優しく接してくれる律顕に真相を問う事ができなくて、一人悶々と悩みを抱えてしまう。
※30,000字程度で完結します。
(執筆期間:2022/05/03〜05/24)
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
2022/05/30、エタニティブックスにて一位、本当に有難うございます!
✼••┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈••✼
---------------------
○表紙絵は市瀬雪さまに依頼しました。
(作品シェア以外での無断転載など固くお断りします)
○雪さま
(Twitter)https://twitter.com/yukiyukisnow7?s=21
(pixiv)https://www.pixiv.net/users/2362274
---------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる