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僥倖~出会いと片思い~
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彼女と別れてから、暫く新しい彼女を作るつもりはなかった。6ヶ月を過ぎた頃、クラス替えになる。
隣の席は知らない子だった。
見た感じ、大人しそうな清楚系?
第一印象は「可愛い子」だなぁ~だった。
隣の席の子は、田上優里という名前だった。
田上は俺の顔を見るなり興味津々の顔になり、腕を人差し指でつんつんと突っつくと
「田川君、田川君、背が高いね。身長いくつ?」
と聞いて来た。
黙っていると大人しそうな清楚系の顔をしているのに、口を開いたら明るくて屈託の無い顔で笑う。
ギャップの激しさに最初は驚いたけど、いつしかくるくると変わる表情から目が離せなくなり、何気なく俺の腕に触れる田上を意識し始めていた。
本音を言えば、あまりに俺の事を聞くし、ボディタッチも多いから、俺の事が好きなんだと勘違いしていた。
いつしか、自分の中で田上が隣で笑っているのを望むようになっていた。
……でも、気が付くと田上が親しくしている奴等と俺への対応は変わらない。
しかも、結構田上を狙っている奴等が多いのにも気付いた。(本人は全く気付かず、田上を口説く奴等に斜め上の反応をしていた)
あの無防備で屈託の無い笑顔を、他の奴等に向けられるのは癪だった。
だからわざと、身長が低いのを気にしているのをしっていて揶揄った。
ムキになって怒る彼女の瞳に、いつしか俺だけが映されれば良いのに……と願うようになった。
でも、彼女の瞳はいつだって別の男を映してた。
それを知ったのは、部活に行こうと体育館に向かって歩いていると、田上が教室に走って行く姿が見えた。
様子がおかしかったので、先輩に適当な言い訳を言って教室に向かった。
すると、田上が机に突っ伏して泣いていたのだ。
「やっぱり一人で泣いてる」
そう呟くと、田上が顔を上げて驚いた顔で俺を見上げた。
「なんで?部活は?」
慌てて涙を拭いながら聞く田上に
「あ、先輩に少し遅れますって連絡して来た」
そう言って自分の席に座り
「で、何があった?」
と、声を掛けた。
でも田上は、必死に涙を堪えながら首を横に振る。
その姿が頼りなくて、思わず抱き締めたくなる。
そんな気持ちを振り切るように
「そっか……。話したくないなら、無理には聞かないけど……。まぁ、お前が泣き止むまでは隣に居てやるよ」
そう呟いた瞬間、我慢していたであろう田上の瞳から涙が零れ落ちた。
こんな時は、どんな言葉も田上に意地を張らせてしまいそうで、そっと頭をポンポンっと撫でながら
「お前さ、少しくらいは頼って良いんだよ。消しゴムを借りてる分くらいは、優しくしてやるからさ」
って呟いた。
すると田上は吹き出して
「何?消しゴムのお礼なの?」
と泣き笑いを浮かべる。
そんな田上に、胸がギュッと軋んだ。
「理由はなんだって良いよ。で、どうした?」
必死に絞り出した言葉に
「私さ、好きな人が居るの」
田上の口から決定打を突きつけられた。
「うん」
と答えるのが精一杯の俺に
「出会ったのは入学式でね、ずっとずっと大好きだった。今年のバレンタインに告白して、「友達から始めよう」って言われたんだけどね……。友達にすらなれていない関係なんだ」
彼女の言葉が重く伸し掛る。
残酷なもので、彼女の「好きな人が居る」と言う言葉が、俺の中で彼女がどれだけ占めて居たのかを思い知らされてしまったのだ。
深い深い深呼吸をしてから
「そっか……。それは、辛いな。それで?お前はどうしたい?」
そう言いながら、そんな奴とさっさと別れてしまえば良いと願った。
でも、田上は泣きながら
「分からない……。学校では冷たくても、電話で話すと優しいの。二人で居るときに見せる顔と、学校での顔が違い過ぎて……どっちを信じたら良いのか分からないんだよ」
と呟いた。
それは、俺のつけ入る隙間も無いと言われているようだと思った。
「それでもお前、そいつが好きなんだろう?」
自分を追い込む言葉だと分かっていながら聞くと、田上は躊躇なく頷いた。
「だったら、頑張れるまで頑張ってみたら?それで、辛くなったら俺に愚痴を言えば良い。聞いてあげることしか出来ないけど、少しは楽になるだろう?」
そう言って、俺は無理やり微笑んだ。
苦しかった。
田上への気持ちを自覚したと同時に、振られるなんて……。
そんな俺の気持ちも知らず
「田川君……、あんた嫌なやつだって思ってたけど、良いやつだったんだね!」
泣きながらそう呟いた田上の言葉に
「えぇ!お前、俺の事を嫌な奴って思ってたの!」
そう叫んでしまった。
隣の席は知らない子だった。
見た感じ、大人しそうな清楚系?
第一印象は「可愛い子」だなぁ~だった。
隣の席の子は、田上優里という名前だった。
田上は俺の顔を見るなり興味津々の顔になり、腕を人差し指でつんつんと突っつくと
「田川君、田川君、背が高いね。身長いくつ?」
と聞いて来た。
黙っていると大人しそうな清楚系の顔をしているのに、口を開いたら明るくて屈託の無い顔で笑う。
ギャップの激しさに最初は驚いたけど、いつしかくるくると変わる表情から目が離せなくなり、何気なく俺の腕に触れる田上を意識し始めていた。
本音を言えば、あまりに俺の事を聞くし、ボディタッチも多いから、俺の事が好きなんだと勘違いしていた。
いつしか、自分の中で田上が隣で笑っているのを望むようになっていた。
……でも、気が付くと田上が親しくしている奴等と俺への対応は変わらない。
しかも、結構田上を狙っている奴等が多いのにも気付いた。(本人は全く気付かず、田上を口説く奴等に斜め上の反応をしていた)
あの無防備で屈託の無い笑顔を、他の奴等に向けられるのは癪だった。
だからわざと、身長が低いのを気にしているのをしっていて揶揄った。
ムキになって怒る彼女の瞳に、いつしか俺だけが映されれば良いのに……と願うようになった。
でも、彼女の瞳はいつだって別の男を映してた。
それを知ったのは、部活に行こうと体育館に向かって歩いていると、田上が教室に走って行く姿が見えた。
様子がおかしかったので、先輩に適当な言い訳を言って教室に向かった。
すると、田上が机に突っ伏して泣いていたのだ。
「やっぱり一人で泣いてる」
そう呟くと、田上が顔を上げて驚いた顔で俺を見上げた。
「なんで?部活は?」
慌てて涙を拭いながら聞く田上に
「あ、先輩に少し遅れますって連絡して来た」
そう言って自分の席に座り
「で、何があった?」
と、声を掛けた。
でも田上は、必死に涙を堪えながら首を横に振る。
その姿が頼りなくて、思わず抱き締めたくなる。
そんな気持ちを振り切るように
「そっか……。話したくないなら、無理には聞かないけど……。まぁ、お前が泣き止むまでは隣に居てやるよ」
そう呟いた瞬間、我慢していたであろう田上の瞳から涙が零れ落ちた。
こんな時は、どんな言葉も田上に意地を張らせてしまいそうで、そっと頭をポンポンっと撫でながら
「お前さ、少しくらいは頼って良いんだよ。消しゴムを借りてる分くらいは、優しくしてやるからさ」
って呟いた。
すると田上は吹き出して
「何?消しゴムのお礼なの?」
と泣き笑いを浮かべる。
そんな田上に、胸がギュッと軋んだ。
「理由はなんだって良いよ。で、どうした?」
必死に絞り出した言葉に
「私さ、好きな人が居るの」
田上の口から決定打を突きつけられた。
「うん」
と答えるのが精一杯の俺に
「出会ったのは入学式でね、ずっとずっと大好きだった。今年のバレンタインに告白して、「友達から始めよう」って言われたんだけどね……。友達にすらなれていない関係なんだ」
彼女の言葉が重く伸し掛る。
残酷なもので、彼女の「好きな人が居る」と言う言葉が、俺の中で彼女がどれだけ占めて居たのかを思い知らされてしまったのだ。
深い深い深呼吸をしてから
「そっか……。それは、辛いな。それで?お前はどうしたい?」
そう言いながら、そんな奴とさっさと別れてしまえば良いと願った。
でも、田上は泣きながら
「分からない……。学校では冷たくても、電話で話すと優しいの。二人で居るときに見せる顔と、学校での顔が違い過ぎて……どっちを信じたら良いのか分からないんだよ」
と呟いた。
それは、俺のつけ入る隙間も無いと言われているようだと思った。
「それでもお前、そいつが好きなんだろう?」
自分を追い込む言葉だと分かっていながら聞くと、田上は躊躇なく頷いた。
「だったら、頑張れるまで頑張ってみたら?それで、辛くなったら俺に愚痴を言えば良い。聞いてあげることしか出来ないけど、少しは楽になるだろう?」
そう言って、俺は無理やり微笑んだ。
苦しかった。
田上への気持ちを自覚したと同時に、振られるなんて……。
そんな俺の気持ちも知らず
「田川君……、あんた嫌なやつだって思ってたけど、良いやつだったんだね!」
泣きながらそう呟いた田上の言葉に
「えぇ!お前、俺の事を嫌な奴って思ってたの!」
そう叫んでしまった。
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