揺れる想い

古紫汐桜

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番外編~歳を重ね~

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『コンコン』
ドアをノックする音に、ハッと我に返る。
「こんな所にいたんだ」
歳を重ねた田川君が、ゆっくりと隣に並ぶ。
「懐かしい物を持ってるな……」
私の手にある写真集に手を伸ばし、田川君が隣に並んで座る。

   石橋君がミシェルさんに連絡を入れてくれて、寄贈された写真集をパラパラとページを捲る。
まだ幼さの残る私と田川君が、楽しそうに笑って写る写真集。
不思議なもので、年齢を重ねて見ると第三者目線で見られるものらしい。
「お似合いな、可愛らしいカップルだと思わない?」
私が笑って言うと
「自分で言うか?」
呆れた顔をする田川君。
改めて写真集を見て、田川君の私を見る瞳がこんなにも「大好き」だと語っていてくれたのだと改めて知る。
「私、鈍感だったのね……」
しみじみ呟くと
「今更?」
と呆れた顔をする田川君。

すると、廊下をパタパタと走る音が近付いて来た。
「あ!居た居た!じいじ、ばあば!お客様が来たよ」
小さな孫がドアから顔を出した。
「これ、見せたら盛り上がるんじゃない?」
「良いよ、恥ずかしい」
こっそり大切に自分の書斎に隠し持っていた本人が、無造作に書斎の本棚に戻す。
夫婦として長く連れ添うと、照れているのが手に取るように分かる。
「ほら、みんな待ってるよ」
私に差し出す手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
幾つになっても、変わらず私の手を引いてくれる田川君に、この人と歩く未来を選んで良かったと改めて思う。
賑やかな笑い声が聞こえる客間のドアを開けると
「よぉ!聡、たまちゃん」
同じく歳を重ねた変わらない4人の笑顔が私達を迎えてくれた。

  お互いの呼び方が、「聡」「優里」から「パパ」「ママ」に変わり、そして「じいじ」「ばあば」に変わっても……変わらないで私の手を引いてくれる大きな背中。
でもね、子供や孫が居ない時は、ちゃんと「優里」って名前で呼んでくれる。
そんな優しさに、何度も救われた。
ねぇ、田川君。
口に出しては言わないけど……生まれ変わっても、私はあなたの隣に居たいって思っているよ。
そうしたら、今度は私が先に貴方を見つけて好きになるからね。【完】
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