70 / 158
番外編~歳を重ね~
しおりを挟む
『コンコン』
ドアをノックする音に、ハッと我に返る。
「こんな所にいたんだ」
歳を重ねた田川君が、ゆっくりと隣に並ぶ。
「懐かしい物を持ってるな……」
私の手にある写真集に手を伸ばし、田川君が隣に並んで座る。
石橋君がミシェルさんに連絡を入れてくれて、寄贈された写真集をパラパラとページを捲る。
まだ幼さの残る私と田川君が、楽しそうに笑って写る写真集。
不思議なもので、年齢を重ねて見ると第三者目線で見られるものらしい。
「お似合いな、可愛らしいカップルだと思わない?」
私が笑って言うと
「自分で言うか?」
呆れた顔をする田川君。
改めて写真集を見て、田川君の私を見る瞳がこんなにも「大好き」だと語っていてくれたのだと改めて知る。
「私、鈍感だったのね……」
しみじみ呟くと
「今更?」
と呆れた顔をする田川君。
すると、廊下をパタパタと走る音が近付いて来た。
「あ!居た居た!じいじ、ばあば!お客様が来たよ」
小さな孫がドアから顔を出した。
「これ、見せたら盛り上がるんじゃない?」
「良いよ、恥ずかしい」
こっそり大切に自分の書斎に隠し持っていた本人が、無造作に書斎の本棚に戻す。
夫婦として長く連れ添うと、照れているのが手に取るように分かる。
「ほら、みんな待ってるよ」
私に差し出す手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
幾つになっても、変わらず私の手を引いてくれる田川君に、この人と歩く未来を選んで良かったと改めて思う。
賑やかな笑い声が聞こえる客間のドアを開けると
「よぉ!聡、たまちゃん」
同じく歳を重ねた変わらない4人の笑顔が私達を迎えてくれた。
お互いの呼び方が、「聡」「優里」から「パパ」「ママ」に変わり、そして「じいじ」「ばあば」に変わっても……変わらないで私の手を引いてくれる大きな背中。
でもね、子供や孫が居ない時は、ちゃんと「優里」って名前で呼んでくれる。
そんな優しさに、何度も救われた。
ねぇ、田川君。
口に出しては言わないけど……生まれ変わっても、私はあなたの隣に居たいって思っているよ。
そうしたら、今度は私が先に貴方を見つけて好きになるからね。【完】
ドアをノックする音に、ハッと我に返る。
「こんな所にいたんだ」
歳を重ねた田川君が、ゆっくりと隣に並ぶ。
「懐かしい物を持ってるな……」
私の手にある写真集に手を伸ばし、田川君が隣に並んで座る。
石橋君がミシェルさんに連絡を入れてくれて、寄贈された写真集をパラパラとページを捲る。
まだ幼さの残る私と田川君が、楽しそうに笑って写る写真集。
不思議なもので、年齢を重ねて見ると第三者目線で見られるものらしい。
「お似合いな、可愛らしいカップルだと思わない?」
私が笑って言うと
「自分で言うか?」
呆れた顔をする田川君。
改めて写真集を見て、田川君の私を見る瞳がこんなにも「大好き」だと語っていてくれたのだと改めて知る。
「私、鈍感だったのね……」
しみじみ呟くと
「今更?」
と呆れた顔をする田川君。
すると、廊下をパタパタと走る音が近付いて来た。
「あ!居た居た!じいじ、ばあば!お客様が来たよ」
小さな孫がドアから顔を出した。
「これ、見せたら盛り上がるんじゃない?」
「良いよ、恥ずかしい」
こっそり大切に自分の書斎に隠し持っていた本人が、無造作に書斎の本棚に戻す。
夫婦として長く連れ添うと、照れているのが手に取るように分かる。
「ほら、みんな待ってるよ」
私に差し出す手を取り、ゆっくりと立ち上がる。
幾つになっても、変わらず私の手を引いてくれる田川君に、この人と歩く未来を選んで良かったと改めて思う。
賑やかな笑い声が聞こえる客間のドアを開けると
「よぉ!聡、たまちゃん」
同じく歳を重ねた変わらない4人の笑顔が私達を迎えてくれた。
お互いの呼び方が、「聡」「優里」から「パパ」「ママ」に変わり、そして「じいじ」「ばあば」に変わっても……変わらないで私の手を引いてくれる大きな背中。
でもね、子供や孫が居ない時は、ちゃんと「優里」って名前で呼んでくれる。
そんな優しさに、何度も救われた。
ねぇ、田川君。
口に出しては言わないけど……生まれ変わっても、私はあなたの隣に居たいって思っているよ。
そうしたら、今度は私が先に貴方を見つけて好きになるからね。【完】
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
帰らなければ良かった
jun
恋愛
ファルコン騎士団のシシリー・フォードが帰宅すると、婚約者で同じファルコン騎士団の副隊長のブライアン・ハワードが、ベッドで寝ていた…女と裸で。
傷付いたシシリーと傷付けたブライアン…
何故ブライアンは溺愛していたシシリーを裏切ったのか。
*性被害、レイプなどの言葉が出てきます。
気になる方はお避け下さい。
・8/1 長編に変更しました。
・8/16 本編完結しました。
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる