揺れる想い

古紫汐桜

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修学旅行

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その日、長塚君から自由行動の予定が送られて来て、少しだけ話をした。
田川君の事を話そうとしたら
「あぁ……彼ね」
と不愉快そうに呟いたので、それ以上は話をすることは出来なかった。
それでも、自由行動が重なる日があるのが分かり、少し一緒に回れると良いね~と最終的には和やかな雰囲気で話が終了できた。
あの日以来、長塚君が優しくなったような気がする。
そんな些細な優しさが、少しは長塚君も私に対して好意を持ってくれているんじゃないか思えて幸せだった。

 修学旅行当日。
亀ちゃんや夏美ちゃん、理恵ちゃんとはクラスが違うので、集合場所で挨拶を交わした以降顔を合わせていない。
新幹線の車両が違うので、私達が行かない限り新幹線では会う事は無いのだ。
学校から新幹線をうろうろしないように言われているので、恐らく新幹線内で亀ちゃん達に会う事は無いだろう。
違うクラスだと、それがちょっと寂しい。
新幹線に乗り込むと、3人掛けの座席をひっくり返し、窓側から、私、ち~ちゃん、繭花ちゃん。繭花ちゃんの前が石橋君、小野君で田川君という並びで座る事になった。
修学旅行先は京都。
石橋君は
「今時、海外じゃないとか!」
と嘆いていたっけ。
 中学生の修学旅行は学校の引率の元で京都奈良を回っていたけど、高校の修学旅行では自分達で行きたい場所を決めて提出する。
何故、その場所を選び、修学旅行で何を学びたいかのか?を行き方や時効表を自分達で調べて、全体で回る清水寺とか金閣寺、銀閣寺の集合時間をスケジュールに組み込んで自分達で責任持って行動する。というものだ。
うちの班は、班長が石橋君。
報告係が小野君。
救護係は繭花ちゃんで、私達は特に何も無し。
その代わり、雑務は私達で分担して手伝った。
私達は、新幹線の中で京都に到着してからの予定を相談。

   京都駅に着くと、待機していたバスで三十三間堂へ向かう予定になっている。
先ずは京都駅に到着してから点呼。
小野君が全員揃っているのを先生に報告し、揃ったクラスからバスへと乗り込む。
ガイドさんの説明を聞きながら、日本一長い木造建築を眺める。
建物もそうだけど、私は1000体以上祀られた仏像に圧倒された。
「凄いね!」
と眺めていると
「バカみたいに口開けてると、迷子になるぞ!」
って、後頭部を叩かれる。
私は頭を撫でながら睨み上げ
「ちょっと田川君、一言いわせてもらっても良いかな?」
と言って睨み上げる。
「人の頭を、バカスカバカスカ叩かないでくれる?これ以上、ばかになったらどうするの!」
「大丈夫、大丈夫。それ以上バカにはならないだろうから」
「それって、私がバカって言ってる?」
「すげぇな!叩かれて、逆に頭が冴えたんじゃねぇのか?」
私の文句に、いつものようにのほほんと交わす田川君。
「キーっ!ムカつく!」
怒り出した私に
「ほら、みんな先に進んでるんだから、さっさと歩け」
と言いながら、私の頭を掴んで歩き出す。
「もう!なんでそんなに私の頭を叩いたり掴むのよ!」
「え?だって、ちょうど良いところに頭があるから」
「それって、背が低い事をバカにしてるの?」
睨み上げた私に、ニヤニヤ笑いながら
「いや~、ちっこくて可愛い(棒読み)」
って呟いたのだ。
「お前、身長3㎝?」
「3㎝だったら、小人でしょう!」
「だって、ちょうどお前の頭って俺の腕の位置にあるからさ」
「バカにしないでよ!これでも、155㎝はあるんだから!」
胸を張って言うと
「で、その実は……」
「うるさいな!どうせ154.6㎝よ!でも、四捨五入したら、155㎝なんだから!」
「どのみち、ちびだよな」
「チビ言うな!」
怒る私を、楽しそうにゲラゲラ笑ってる。
腹が立って、ち~ちゃん達に駆け寄り
「田川君なんか、ハゲてしまえ!」
と叫んでやった。
私の必死の抵抗も虚しく、田川君が大爆笑するだけだったのがめちゃくちゃ悔しい。
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