揺れる想い

古紫汐桜

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私だけが知っている長塚君の癖

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私がその様子にニヤニヤしていると
「別に良いけど。そうしたら俺、和風ハンバーグにするから」
といつもの無表情で答えてるけど、眉が少し上がってるから「してやったり顔」をしているのに気付いて私は笑いを噛み殺す。
「何笑ってるんだよ」
私の反応に気付いて、長塚君が私の額を指で突いてきた。
「だって……今、超得意顔したでしょう」
「してないよ」
「してたよ。眉がちょっと上がってたもん」
「眉?」
眉を撫でる長塚君を見てクスクス笑っていると
「あの~、私達が居るの分かってる?」
って、ち~ちゃんがニヤニヤして呟いた。
思わず長塚君と顔を見合わせていると
「で、どうするの?」
と、ち~ちゃんがメニューを私達に向けた。
「どうする?」
「ん~」
「今、考えるの面倒臭いと思ってるでしょう?」
「そっちが決めて」
「じゃあ、さっきの和風ハンバーグにする?あ!おろしハンバーグもあるよ。これにする?」
思わず夢中になって決めていて、再び視線を感じて
(そうだ、ち~ちゃん達と一緒だったんだ)
と、思わず前のめりになって話していた自分に気付いてしまい、ゆっくりと元に戻る。
「じゃあ、そっちはおろしハンバーグ二つね」
と言って注文を新井君がテキパキとしてくれた。
食事中はずっと二人にニヤニヤされていて、ちょっと居心地が悪かった。
食事を終えて、私達と反対回りで回っていたち~ちゃん達とは此処でバイバイした。

「緊張した~!」
二人と分かれた後に呟くと
「そんな風に見えなかったけど」
って笑いながら、長塚君が隣に並んで歩き出す。
「え?本当に?もうさ、ずっとニヤニヤされてたからさ~」
顔を両手でパタパタと扇ぐと、突然、長塚君が頬に手の甲で触れてきた。
「本当だ、熱い」
って言われて、益々真っ赤になる。
「長塚君まで、私で遊ばないでよ!」
そう叫ぶと、長塚君が声を上げて笑い出した。
長塚君の笑顔を見ると、胸がギュッとなる。
大好きがいっぱいになって、いつも笑っていて欲しいって心の底から思ってしまう。

 その後、いくつかアトラクションを回って、お土産店巡りをする事になった。
私はみんなにチョコクランキーを買って、チケットをくれたお姉さんにもこっそりお土産を買った。
その時、ふと夢の国のキャラクター。
猫の「モッキー」のぬいぐるみが着いたキーホルダを見つけた。
モッキーの彼女、モニーとパワーストーンを抱いているキーホルダーだった。
手に取ると、モッキーとモニーの首に突いている鈴が「チリン」っと高い音を立てた。
「欲しいの?」
突然、背後から聞かれて驚いて手から落としてしまう。
すると素早くキャッチして、そのまま無言でレジに向かって行く。
(もしかして……)
ってドキドキしていると、何やら店員さんと会話をしてキーホルダーを返してしまっている。
(だよね~。現実はそんなに甘くないか……)
としょんぼりして、私は他のお土産を見ていた。
しばらくして
「此処に居たんだ」
って、店内を見て歩いてた私の背後に現れると
「まだ、何か買い物する?」
と聞かれた。
時計を見ると、そろそろパレードが始まる時間だ。
「パレード見たいかな?」
笑顔でそう呟くと、お店の外に出た。
夕暮れ刻の薄暗い園内。
みんながパレードへと向かう人並みに向かって歩こうとすると、何故か長塚君が反対方向へと歩いて行く。
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