揺れる想い

古紫汐桜

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私って……なに?

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その日の午後の授業は、上の空だった。
「長塚君の顔が見たいな……」
ぼんやりと考えて、溜め息を吐く。
こんな時、漫画とかドラマなら窓側の席で長塚君の運動している姿とか見られるだろうに……。なんで私、真ん中の席の一番後なんだろう?って考えて、溜め息を吐いた。
すると、田川君がノートをこちら側に押し出して来た。
私が無視していると、シャーペンの先で私の腕を軽く刺して来たのだ。
「痛っ!」
と小声で言って田川君を睨むと、ノートに走り書きで『なんかあったのか?』って書いてある。
「別に……」
ポツリと答えて、田川君と逆の方に視線を向けた。
すると今度は、ノートの切れ端を丸めて投げて来た。
仕方なく開くと
『俺、何かしたか?』
って書いてあった。
田川君が悪いわけじゃない。
無防備に、亀ちゃんの好きな人と話していた私が悪いんだ。
首を横に振って、ノートに
「少し一人で考えさせて」
って書いて見せると、田川君は頷いてから
「辛かったら、抱えずに声掛けろよ」
と、ポツリと呟いたのだ。
(あぁ、亀ちゃんが言ってた優しい人って、こういう所なんだ)
危うく泣きそうになって、グッと涙を堪えた。

   放課後になり、私は走って長塚君の姿を探した。
声が聞きたかった。
少しだけで良いから、話を聞いて欲しかった。
下駄箱に長塚君の姿を見つけて
「長塚君!」
って声を掛けると、冷たい視線で私を見下ろし
「なに?」
と短い返事が返って来た。

「あのね、少しだけ時間もらえない?」
そう呟いた時
「長塚、お待たせ」
と言いながら、星川君と伊良部君が現れた。
「悪いけど、これから三人で出掛けるから。用事があるなら、いつもの時間に電話してくれば良いでしょう」
そう言うと、私に背を向けた。
すると星川君が私の様子を気に掛けて
「俺達は良いから、話を聞いてあげたら?」
って長塚君に呟いた。
すると長塚君は振り向きもせずに
「平気だよ。用事があるなら、夜に聞くから大丈夫」
そう言い残して去ってしまった。
私は傷口に塩を塗られたような気持ちのまま、教室に戻った。
足取りは重くて、私は長塚君の何なんだろう?って考えた。
付き合うって……こういう関係なの?
友達から始めようって……友達ですら無いじゃない。
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