宵の月

古紫汐桜

文字の大きさ
上 下
12 / 33

運命の番

しおりを挟む
「月夜先輩」
その日、恭弥が珍しく生徒会の仕事で帰宅が遅くなるらしく、僕が1人で帰宅していると後ろから声を掛けられた。
声の主はもちろん…日浦太陽だ。
「1人なんて、珍しいですね」
そう言って微笑む笑顔は、相変わらず爽やかだ。
「先輩、1人ならちょっと一緒に出かけません?」
と言われて、僕は慌てて首を横に振る。
「僕…お金持ってないんだ」
そう言うと、日浦太陽は明るく笑って
「そんなの、俺が奢りますよ!ね。行きましょう」
と言うや否や、僕の手を握り締めて走り出した。
「ちょ…ちょっと待って!」
戸惑う僕を他所に、強引な日浦太陽の手を解き
「ダメだよ。家に真っ直ぐに帰らないと、学校にさえも通わせてもらえなくなる」
僕の言葉に、日浦太陽は驚いたように目を見開いた。
「そんなに?そこまで束縛されて、どうして何も言わないんですか?」
彼の真っ直ぐな言葉に、僕は顔を逸らして
「大人しくしてるって約束するなら…」
そう言って、裏口からこっそり彼を僕の離れへと招き入れた。
一度、きちんと話をしなければならないと思っていたのでちょうど良い。
離れの鍵を静かに開けて
「中で待ってて」
と、小声で促す。
母屋に声を掛けて、僕は離れに戻る。
「待たせてごめんね」
離れの玄関を開けると、離れの玄関に座ったままで日浦太陽はスマホをいじっていた。
「あ…大丈夫ですよ」
そう言って微笑むと、日浦太陽はスマホをポケットに入れた。
「とにかく……入って」
中に招き入れると、ワンルームにテーブルと机。そしてキングサイズのベッドがあるだけの部屋に驚いた顔をした日浦太陽にテーブルの座布団を進める。
「お茶、飲むよね。ちょっと待ってて」
そう言って冷蔵庫を開けてペットボトルのお茶を出すと
「此処で……1人で生活しているんですか?」
と聞かれて、僕は日浦太陽の前に座ってペットボトルのキャップを開けながら
「まぁ、基本的にはそうかな?」
そう答えて、僕は制服の上着を脱ぐ。
「で、きみは僕に付き纏って何がしたいの?」
真っ直ぐ見つめて言うと
「俺、月夜先輩が好きなんです」
「その話は聞いた」
「俺と先輩は、絶対に運命の番なんです!」
「……なんで言い切れるの?」
真っ直ぐに見つめて話す日浦太陽に、僕は意地悪な事を聞いてみた。
でも彼は真っ直ぐな瞳で僕を見つめて
「先輩だってわかってますよね?」
そう言って僕に近付いて頬に触れる。
『ドクリ』と心臓が高鳴る。
「ほら…先輩の体温が上がって匂いがして来ましたよ」
日浦太陽はそう言って、僕の唇に唇を重ねる。
重なる唇から舌が差し込まれ、無意識に応えるように舌を絡めて背中に必死に手を回して縋り付く。
角度を変えて唇を重ね、身体が日浦太陽を求めて奥が疼いて切なくなる。
唇が離れると
「ほら…キスだけでこんなになってる。もう、逃れられないでしょう?」
頬を撫でてそう囁いた。
「でも、俺は身体だけは嫌なんで……、まだ抱きません。あなたが俺に身も心も委ねたくなるまで…」
僕の額に日浦大輔は額を当ててそう呟き、身体を抱き締めると
「月夜先輩、世界は広いんです。あなたがこんな場所で、息を潜めるように生活する必要なんて無いんです」
そう呟いた。
抱き締められた日浦太陽の匂いは…やっぱりお日様の匂いで安心する。
僕が背中に回した手で縋り付き、日浦太陽の匂いを嗅ぐ。
「日浦太陽……良い匂い……」
そう呟いた瞬間、身体を押し倒された。
「それ、反則です。俺……我慢してるのに…」
のし掛かった状態で呟かれ、僕は背中を掴んでいた手を首に回して
「良いよ……好きにして……」
と答えた。
僕の言葉に、日浦太陽の唇が僕の唇に重なる。
僕を抱き締めている日浦太陽の手が、僕の背中から腰のラインを撫でる。
「んっ…」
小さく喘ぐと、日浦太陽の唇が僕の唇から頬。
頬から耳に移動して、耳朶を甘噛みされる。
「あっ……」
髪の毛をかき上げられ、耳の後ろから首筋へと唇が移動する。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あの可愛いオメガを孕ませよう!

天災
BL
 あの可愛いオメガを孕ませよう!

君を一生、愛してる。もう、ハナサナイ。

∞輪廻∞
BL
君が死ぬ時は、一緒に死のう。 君が苦しい時は、一緒にそれを背負おう。 君が楽しく笑いたい時は、一緒に笑おう。 君を、もう一生、ハナサナイ。

僕はあなたに捨てられる日が来ることを知っていながらそれでもあなたに恋してた

いちみやりょう
BL
▲ オメガバース の設定をお借りしている & おそらく勝手に付け足したかもしれない設定もあるかも 設定書くの難しすぎたのでオメガバース知ってる方は1話目は流し読み推奨です▲ 捨てられたΩの末路は悲惨だ。 Ωはαに捨てられないように必死に生きなきゃいけない。 僕が結婚する相手には好きな人がいる。僕のことが気に食わない彼を、それでも僕は愛してる。 いつか捨てられるその日が来るまでは、そばに居てもいいですか。

ドSな俺複数の従者を飼う

雫@更新再開
BL
ドSなご主人様が一夫多妻制の世界で色んな従者を買う話。 SM、玩具、コスプレなど色々します。尿道開発、アナル開発、調教。ほかの作品(自分)と似ている部分が多々あることをご了承済みでお読みください。よろしくお願いします!

ご主人様のオナホール

いちみやりょう
BL
▲ただのエロです。ご注意ください。 ▲♡喘ぎ注意 女性オメガである姉を持つ、ベータのポチ。 ポチはオメガが優遇される家庭に生まれて、5歳の定期検診でベータであることが発覚してすぐに捨てられた。 女性オメガは体も小さく、体力もなく、アルファを受け入れるのは相当大変なため、ポチは姉の旦那にオナホールとして引き取られた。 それ以来、地下で生活させられているポチのことを姉は知らない。 いつもエールありがとうございます☺️

オメガバース 悲しい運命なら僕はいらない

潮 雨花
BL
魂の番に捨てられたオメガの氷見華月は、魂の番と死別した幼馴染でアルファの如月帝一と共に暮らしている。 いずれはこの人の番になるのだろう……華月はそう思っていた。 そんなある日、帝一の弟であり華月を捨てたアルファ・如月皇司の婚約が知らされる。 一度は想い合っていた皇司の婚約に、華月は――。 たとえ想い合っていても、魂の番であったとしても、それは悲しい運命の始まりかもしれない。 アルファで茶道の家元の次期当主と、オメガで華道の家元で蔑まれてきた青年の、切ないブルジョア・ラブ・ストーリー

【ひみつの巣作り】

悠里
BL
明るく可愛いオメガバを…♡ 何もかもを張り合ってきた同級生と、運命の番になってしまった元αのΩ。 番になって結婚してからは、αのことが好きだけど、前の名残で素直になれない。 巣作りってやつをしてみたいので、αのいない隙に、やってみることにした。 ◇表紙絵:モロツヨシさま「人間(男)メーカー(仮)」 ◇ ◇ ◇ ◇ 2023/9/9投稿→9/10BLranking15位♡  9/14 12位🥰♡ ベスト10入りありがとうございます💖 9/20 ベスト5入り🥰♡ BL大賞初日6位スタートでした。ありがとうございます☺️ 最終結果8位でした🥰 ありがとうございました✨ ◇ ◇ ◇ ◇ 感想やエール、更新する力になります♡  楽しんで頂けますように!

処理中です...