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運命の番
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「懺悔のつもりですか?」
思わず出た言葉に、僕は慌てて口を手で押さえる。
すると石井先生は僕の前に座り
「悪いけど……那月のことはこれで良かったと思っている。きっとあいつは……あのままあそこに居たら、壊れていたよ」
そう言うと
「そのせいで、きみや葉月さんに大きな迷惑をかけてしまているのは分かっている。だから、俺と太陽はきみを助け出す為に此処に来たんだ」
と続けた。
「助ける?」
思わず言葉の真意を推し量れず、石井先生の顔を見つめると
「俺達と一緒に来い、月夜」
そう言われた。
「は?何を言ってるのか…」
「もう気付いてるんだろう?お前の運命の番は太陽だ」
と言われて言葉を失う。
「でも…彼は」
「太陽はαだよ」
言葉を遮るように言われて、思わず石井先生の顔を見つめた。
「はぁ?」
「βにしとかないと、この学校に交換入学させてもらえなかったものでね」
石井先生はそう言うと、僕の顔を真っ直ぐに見つめて
「これ以上、あの家に居たらダメだ。きみと恭弥君は…異母兄弟なんだ」
と話し出した。
「異母…兄弟?」
「正確に言えば…きみには母親は居ない。と言えば分かるかな?」
そう言われて僕は息を呑んだ。
「それって…」
「そう…。きみは父親の葉月から生まれたんじゃないかと俺は考えている。そしてその父親は…」
「恭弥の父親…。ということは、父さんもΩだったって事なんですか?」
僕の言葉に石井先生は
「それは分からない。俺はきみの父親に会った事は無いからね。那月も葉月と一緒に暮らした期間が短くて、その辺は確信が無いと言っている。これは仮説なんだけど、鵜森家はΩ遺伝子が強いんじゃないかと思ってるんだ。Ωが虐げられていた時代に鵜森家を守る為に手を組んだ相楽家に、いつの間にか手の平を返され、立場が逆転したんじゃないかと思うんだ」
そう言って深い溜め息を吐いた。
そしてゆっくりと僕の手を掴み
「実はね、きみと太陽はずっと前に一度出会っているんだ」
突然言われて、僕は目を点にする。
「あの日から、太陽はきみが運命の番だと言って他の人に目もくれなくなった。当のきみは忘れてしまっているようだけど」
と言って苦笑いした。
「今すぐ結論を出せとは言わない。でも、考えてみてくれ。こんな狭い世界で、きみは何も知らぬまま相楽の家に飼い殺しにされて良いのかい?」
僕をみつめる石井先生の瞳は優しかった。
すると授業が終了するチャイムが鳴り響き
「きみのナイトがお出ましになるから、俺はもう向こうに行くね」
そう言って、石井先生はベッドから離れた。
するとしばらくして恭弥が迎えに来て、僕は保健室を後にする。
2人で並んで歩きながら、もしかしたら僕と恭弥が兄弟かもしれないという言葉がグルグルと駆け巡っていた。
完璧を良しとする相楽家では、Ωが生まれたと言うのは許し難い事実だったんだろう。
だとしたら…、本家の人間は俺と恭弥が半分血が繋がっていると知っていて、番に選んだのだろうか?
そう考えたらゾッとした。
「何を考えている?」
黙って並んで歩いていると、恭弥がポツリと呟いた。
「え?」
思わず恭弥を見上げると、切れ長の目が悲しそうに揺れている。
でもそれはほんの一瞬で、すぐに氷のように冷たい感情の無い瞳に変わる。
相楽家次期当主になる為に徹底した教育を受けてきた恭弥は、表情を崩す事はあまり無い。
僕が俯いて首を横に振ると、恭弥は
「そうか…」
とだけ呟いて黙ってしまった。
隣に居るのに、こんなに遠い恭弥と僕。
それは…血を分けた兄弟なのに、子供を作らなければならないからなのだろうか?
ぼんやり考えて、僕は再び恭弥の顔を見上げた。
綺麗に整った横顔を見て、同じ血が半分でも流れているなんて信じ難かった。
僕達はそのまま黙って、教室への道のりを歩いていた。
思わず出た言葉に、僕は慌てて口を手で押さえる。
すると石井先生は僕の前に座り
「悪いけど……那月のことはこれで良かったと思っている。きっとあいつは……あのままあそこに居たら、壊れていたよ」
そう言うと
「そのせいで、きみや葉月さんに大きな迷惑をかけてしまているのは分かっている。だから、俺と太陽はきみを助け出す為に此処に来たんだ」
と続けた。
「助ける?」
思わず言葉の真意を推し量れず、石井先生の顔を見つめると
「俺達と一緒に来い、月夜」
そう言われた。
「は?何を言ってるのか…」
「もう気付いてるんだろう?お前の運命の番は太陽だ」
と言われて言葉を失う。
「でも…彼は」
「太陽はαだよ」
言葉を遮るように言われて、思わず石井先生の顔を見つめた。
「はぁ?」
「βにしとかないと、この学校に交換入学させてもらえなかったものでね」
石井先生はそう言うと、僕の顔を真っ直ぐに見つめて
「これ以上、あの家に居たらダメだ。きみと恭弥君は…異母兄弟なんだ」
と話し出した。
「異母…兄弟?」
「正確に言えば…きみには母親は居ない。と言えば分かるかな?」
そう言われて僕は息を呑んだ。
「それって…」
「そう…。きみは父親の葉月から生まれたんじゃないかと俺は考えている。そしてその父親は…」
「恭弥の父親…。ということは、父さんもΩだったって事なんですか?」
僕の言葉に石井先生は
「それは分からない。俺はきみの父親に会った事は無いからね。那月も葉月と一緒に暮らした期間が短くて、その辺は確信が無いと言っている。これは仮説なんだけど、鵜森家はΩ遺伝子が強いんじゃないかと思ってるんだ。Ωが虐げられていた時代に鵜森家を守る為に手を組んだ相楽家に、いつの間にか手の平を返され、立場が逆転したんじゃないかと思うんだ」
そう言って深い溜め息を吐いた。
そしてゆっくりと僕の手を掴み
「実はね、きみと太陽はずっと前に一度出会っているんだ」
突然言われて、僕は目を点にする。
「あの日から、太陽はきみが運命の番だと言って他の人に目もくれなくなった。当のきみは忘れてしまっているようだけど」
と言って苦笑いした。
「今すぐ結論を出せとは言わない。でも、考えてみてくれ。こんな狭い世界で、きみは何も知らぬまま相楽の家に飼い殺しにされて良いのかい?」
僕をみつめる石井先生の瞳は優しかった。
すると授業が終了するチャイムが鳴り響き
「きみのナイトがお出ましになるから、俺はもう向こうに行くね」
そう言って、石井先生はベッドから離れた。
するとしばらくして恭弥が迎えに来て、僕は保健室を後にする。
2人で並んで歩きながら、もしかしたら僕と恭弥が兄弟かもしれないという言葉がグルグルと駆け巡っていた。
完璧を良しとする相楽家では、Ωが生まれたと言うのは許し難い事実だったんだろう。
だとしたら…、本家の人間は俺と恭弥が半分血が繋がっていると知っていて、番に選んだのだろうか?
そう考えたらゾッとした。
「何を考えている?」
黙って並んで歩いていると、恭弥がポツリと呟いた。
「え?」
思わず恭弥を見上げると、切れ長の目が悲しそうに揺れている。
でもそれはほんの一瞬で、すぐに氷のように冷たい感情の無い瞳に変わる。
相楽家次期当主になる為に徹底した教育を受けてきた恭弥は、表情を崩す事はあまり無い。
僕が俯いて首を横に振ると、恭弥は
「そうか…」
とだけ呟いて黙ってしまった。
隣に居るのに、こんなに遠い恭弥と僕。
それは…血を分けた兄弟なのに、子供を作らなければならないからなのだろうか?
ぼんやり考えて、僕は再び恭弥の顔を見上げた。
綺麗に整った横顔を見て、同じ血が半分でも流れているなんて信じ難かった。
僕達はそのまま黙って、教室への道のりを歩いていた。
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