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ルイーズ?それとも……
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魔界に来たのは、ルイス様を諦める為。
私の存在はルイス様の邪魔にしかならない。それなのにルイーズのせいで、ちっとも忘れられない!
あの顔と声は、どうにかならないもんかな!と思っていた矢先に、私は真実を知る事になる。
魔界は基本的に、太陽というものが無い。
赤黒い太陽のようなものと、夜には月らしいモノが空に浮かぶ。
だから、花も特殊な花ばかりが咲いている。
その日は、もふもふ隊と野いちごを摘みに少し遠出をしていた。
大人のフェンリルの背中に乗り、ビュンビュンと風を切って魔界散策は楽しいものだった。
城の近くにある野いちごとは少し違い、どうやらグミの実っぽい感じだ。
甘酸っぱい赤い実に、つまみ食いしながらフルーツタルト用に籠にたくさん摘むと、私はフェンリルの背中に乗って城へと戻っていた。
すると城に魔族と人間の、いわゆる半魔と呼ばれる人達が傷だらけになって城にやって来ていた。
どうやら、心無い人達に酷い目に遭ったようだ。
こっそり怪我の治療をしているらしい部屋を覗くと、ルイーズが一人一人に声を掛けて治療しているじゃない!
その姿はまるで、ルイス様そのものだった。
(いやいやいや!しっかりしなさい、私!あいつはルイーズであって、ルイス様じゃないのよ!)
心の中で叫び、再び治療している部屋の窓からこっそり覗き込むと
「フレイア、何を覗き込んで見ているのですか?」
ふわりと微笑むその笑顔は、ルイス様そのものだった。
すると中から
「ルイーズ様、後ろがつかえていますので……」
と、ルイス様のコピーとしか思えないルイーズを呼ぶ声が聞こえた。
「ごめんね、フレイア。又、後でね」
くしゃりと頭を撫でる手が、私の知っているルイス様の手だった。
(まさか……そんなバカな……)
その場から動けなくなっていると、ゆっくりと窓が開いて
「まだそんな所に居たの?風邪引くよ」
優しい笑顔を浮かべたルイス様が、私を手招きしている。
(私、しっかりするのよ!あれはルイス様では無くて、ルイーズなのよ!)
そう言い聞かせていても、あの笑顔も声も……ルイス様なのだもの。
どうして良いのか分からずに、窓の外で戸惑っていると、ルイス様が軽々と窓を超えて私の目の前に立っていた。
「フレイア、どうしてそんなに戸惑っているの?」
優しい笑顔は、どう見てもルイス様だ。
するとそっと私の身体を抱き締めたルイス様は
「フレイア……大好きだよ」
と囁いたのだ。
「ルイ……ス様?」
見上げた瞳は、漆黒では無くて濃紺の色をしている。
甘く囁かれた声はルイス様そのものだし、私を抱きしめる逞しい腕は温かい。
そっと頬に触れると
「フレイア……、ずっときみに触れたかった」
そう囁かれて、ルイス様の顔がゆっくりと近付いて来る。
夢にまで見た、ルイス様とのキス。
ルイーズかもしれないという疑問が拭えないまま、流されてしまっても良いのか?と思っていると
「ダメだ!フレイア!」
突然ルイス様は叫ぶと、私の身体を引き剥がし
「止めろ!フレイアに手を出すな!フレイアは、お前に渡さない!」
そう叫んだのだ。
「ルイス様……、ルイス様なのですか?」
驚いて叫んだ私に
「フレイア……辛い時に、傍にいられなくてごめんね」
悲しそうに瞳を陰らせルイス様はそう呟くと、今度は優しく……壊れ物に触れるように私を抱き締めた。
「ルイス様……、本当にルイス様なのですね」
その背中に手を回すと
「フレイア……、逃げるんだ。僕が僕で無くなる前に……」
そう言って、私の肩を掴んだ。
私の存在はルイス様の邪魔にしかならない。それなのにルイーズのせいで、ちっとも忘れられない!
あの顔と声は、どうにかならないもんかな!と思っていた矢先に、私は真実を知る事になる。
魔界は基本的に、太陽というものが無い。
赤黒い太陽のようなものと、夜には月らしいモノが空に浮かぶ。
だから、花も特殊な花ばかりが咲いている。
その日は、もふもふ隊と野いちごを摘みに少し遠出をしていた。
大人のフェンリルの背中に乗り、ビュンビュンと風を切って魔界散策は楽しいものだった。
城の近くにある野いちごとは少し違い、どうやらグミの実っぽい感じだ。
甘酸っぱい赤い実に、つまみ食いしながらフルーツタルト用に籠にたくさん摘むと、私はフェンリルの背中に乗って城へと戻っていた。
すると城に魔族と人間の、いわゆる半魔と呼ばれる人達が傷だらけになって城にやって来ていた。
どうやら、心無い人達に酷い目に遭ったようだ。
こっそり怪我の治療をしているらしい部屋を覗くと、ルイーズが一人一人に声を掛けて治療しているじゃない!
その姿はまるで、ルイス様そのものだった。
(いやいやいや!しっかりしなさい、私!あいつはルイーズであって、ルイス様じゃないのよ!)
心の中で叫び、再び治療している部屋の窓からこっそり覗き込むと
「フレイア、何を覗き込んで見ているのですか?」
ふわりと微笑むその笑顔は、ルイス様そのものだった。
すると中から
「ルイーズ様、後ろがつかえていますので……」
と、ルイス様のコピーとしか思えないルイーズを呼ぶ声が聞こえた。
「ごめんね、フレイア。又、後でね」
くしゃりと頭を撫でる手が、私の知っているルイス様の手だった。
(まさか……そんなバカな……)
その場から動けなくなっていると、ゆっくりと窓が開いて
「まだそんな所に居たの?風邪引くよ」
優しい笑顔を浮かべたルイス様が、私を手招きしている。
(私、しっかりするのよ!あれはルイス様では無くて、ルイーズなのよ!)
そう言い聞かせていても、あの笑顔も声も……ルイス様なのだもの。
どうして良いのか分からずに、窓の外で戸惑っていると、ルイス様が軽々と窓を超えて私の目の前に立っていた。
「フレイア、どうしてそんなに戸惑っているの?」
優しい笑顔は、どう見てもルイス様だ。
するとそっと私の身体を抱き締めたルイス様は
「フレイア……大好きだよ」
と囁いたのだ。
「ルイ……ス様?」
見上げた瞳は、漆黒では無くて濃紺の色をしている。
甘く囁かれた声はルイス様そのものだし、私を抱きしめる逞しい腕は温かい。
そっと頬に触れると
「フレイア……、ずっときみに触れたかった」
そう囁かれて、ルイス様の顔がゆっくりと近付いて来る。
夢にまで見た、ルイス様とのキス。
ルイーズかもしれないという疑問が拭えないまま、流されてしまっても良いのか?と思っていると
「ダメだ!フレイア!」
突然ルイス様は叫ぶと、私の身体を引き剥がし
「止めろ!フレイアに手を出すな!フレイアは、お前に渡さない!」
そう叫んだのだ。
「ルイス様……、ルイス様なのですか?」
驚いて叫んだ私に
「フレイア……辛い時に、傍にいられなくてごめんね」
悲しそうに瞳を陰らせルイス様はそう呟くと、今度は優しく……壊れ物に触れるように私を抱き締めた。
「ルイス様……、本当にルイス様なのですね」
その背中に手を回すと
「フレイア……、逃げるんだ。僕が僕で無くなる前に……」
そう言って、私の肩を掴んだ。
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