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記憶と思い出~レイモンド③~

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 何万年も昔、この世界は妖精と人間と魔族で暮していた。
それぞれが各々の領域を守り、仲良く暮しいたのだが、魔族の一部が人間界にやってきて、魔力をもたない人間を奴隷として扱うようになってしまう。
まるで物のように扱われ、誰もが絶望に打ちひしがられていた時、後の王族の祖先になるアーサーが生まれた。
妖精王と美しい人間の娘の間に生まれたアーサーは、人間でありながら魔力を持ち合わせていた。
父の妖精王から聖剣を託され、アーサーはバルフレア家の先祖マクシムと、セヴァランス家の先祖トマを引き連れて人間解放を行った。
その時に助けられた、ワーロック家の先祖ユーゴとミューレンバーグ家のエタンが加わり、彼等はこの世界に平和をもたらした。
参謀だったワーロック家は、この世界に秩序を。武器調達や魔族との交渉に長けたミューレンバーグ家は流通と経済を。
帝国の王となったアーサーを軸に、王族の剣として王家に仇なす者を全て排除して来たバルフレア家。
又、王の為に自らの命を省みず、表立って護衛をして来たのがゼヴァランス家。
このようにして帝国はどの国よりも発展し、繁栄を築いて来た。
そして平和が続いたある日、金儲けに目が眩んだ輩が違反を起こし、魔族の領地に入り込んでしまったのだ。
再び魔族と人間との戦いが始まり掛けた時、なんとかミューレンバーグ家が話し合いでカタをつけたのだが、魔王の妻だった破滅の魔女から
「お前らを許す代わりに、お前達に呪いをかけてやる。お前ら王族と4家紋には、女の子が生まれない呪いをな」
と言われたのだ。
しかし、王アーサーには妖精王からの加護があり、呪いを弾く力が備わっていた。
そして4家紋は、女の子が生まれないという呪いにより、女児が誕生する事が無かった。
男児だけでは血筋が途絶えてしまうと嘆き悲しむ4家紋に、妖精王が王家に男児が生まれた時、各家紋に与えた苗から女児が一人だけ生まれるようにと苗を託した。
苗は王妃の妊娠と共に成長し、蕾になる。
その蕾が光った時、選ばれた4家紋の女主が触れると蕾が開いて女児が現れる。
すると、選ばれなかった家紋の花は一瞬にして枯れ、新しい芽が現れて次の王子誕生まで土の中で眠り続けるのだという。
しかし、破滅の魔女がそれに気付き、人間界に同じ苗を植えて
「2つの花が咲いた時、一つは聖女となり、一つは我が後継者となるであろう」
そう言い残して消えたのだという。
そして「破滅の魔女の呪いが1000年で一度弱まり、4家紋に女児が生まれた時、新しい破滅の魔女が生まれる」とも言い残していたらしく、フレイアとリリィが生まれた時、フレイアが破滅の魔女の生まれ変わりだと言われていたと聞かされた。
フレイアが生まれた時、母上が光る蕾に気付いて庭園に行くと、花は既に開いてルイスが赤ちゃんを抱っこしていたらしい。
しかも、フレイアを抱っこしていたルイスは瞳も髪の毛の色も真っ黒で、魔族の子供であるだろうと言われたらしい。
現国王にルイスと生まれたばかりのフレイアを連れて行くと
「女児はバルフレア家の瞳の色をしておる。バルフレア家の娘として育てよ!ルイスは、魔族の子かも知れぬ。セヴァランス家にて、監視せよ」
と命を受けてそれぞれ引き取られたと聞かされた。
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