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まだ、デートは続くらしい

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 翌日は、昨日とは打って変わって、豪華絢爛な馬車が迎えに来た。
昨日はカイルで、今日はジャックスとのデートな訳だけど……。
これを乗り切れば、来週のお休みは遂にルイス様とのデート!!
そう思って浮かれていると
「フレイアお嬢様、ルイス様の前にアティカス様もいらっしゃるのを忘れないで下さいね」
と釘を刺されてしまう。
私は頬を膨らませ
「分かっているわよ!」
そう答えながらも、憂鬱な気分に溜め息を吐いた。
 魔法学園に入学してからも、月に一度、アティカスを伴い国王と妃殿下とのお茶会があるのだ。
すっかり魔法学園を卒業したら、アティカス王子と結婚すると思っているお二人に会うのは気が引けるのだ。
アティカス王子もアティカス王子で、気が付くと外堀を埋めまくって婚約破棄する気配が全く無い。
レイモンド兄様がオリビア姉様と婚約した事で、レイモンド兄様ルートのフラグは折れた訳だし。
この際、さっさとヒロインとくっ付けば良いのに!!と思っている。
特にアティカス王子の母親である正妃様に
「早く魔法学園を卒業しないかしら。私ね、フレイアちゃんの為に、今からウエディングドレスのデザインをデザイナーに頼んでいるのよ。フレイアちゃんのお部屋もね、可愛らしくしてあるから」
と言われる度に、苦笑いしか返せない。
御歳36歳になられても、夢見る乙女のような正妃様。
イケメンアティカス王子のお母様なだけあって、美しくて優しいから大好きなのだけれど……。
お二人に気に入られているが故に、尚更、私から婚約破棄だなんて言い出せないし、言い出せる訳が無い。
ゲームの中では王様も王妃様も出て来ないから、家族ぐるみの付き合いをしていたのかは分からないけど……。
案外、アティカス王子は腹黒なのでは無いか?と考え始めている。
「フレイアお嬢様。お茶会の事で悩む前に、本日のお相手の事もお忘れ無いようにお願いしますね」
と、再びサラに釘を刺されてしまう。
はいはい、分かっていますよ。
サラに身支度を整えて貰い、軽く朝食を取ってお迎えが来るのを待っていた。
(お父様、一体何を考えていらっしゃるのやら……)
溜め息を一つ吐き出し、窓の外を眺めた。
憂鬱な気分とは裏腹な、眩しい程の晴天。
ふと青空を眺めながら、ジャックスの瞳も薄い水色だったのを思い出した。
ゲームでのジャックスとのデートは、図書館デートがメインだった気がする。
ヒロインと勉強するうちに、心を通わせて行くのよね。
ドSキャラが、段々とツンデレになって行くのは攻略しがいがあったのを思い出す。
しかし、図書館デートはヒロインとだったからなので、フレイアではどうなるのだろう?
カイルの時のように、やはり変わるのだろうか?
ぼんやりと考えていると、迎えの馬車がやって来たらしい。
従者の人が現れて、私は絢爛豪華な馬車に案内された。
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