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デート④
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周りの人を巻き込み、みんなを笑顔にする求心力。
それは大人のみならず、子供に対しても同じだった。
私が魔法学園で見ているカイルとは、全く違う姿がそこにあった。
道を歩くと
「カイ!今日は寄っていかないのか?」
「よぉ、カイ。おぉ!遂にデート出来たのか!」
あちこちから声が掛かる。
それはきっと、カイルが誠心誠意尽くして来たからなのだろう。
きっと……カイルを好きになれたら、私は誰よりも幸せにしてもらえると思う。
このお日様の匂いがする、木漏れ日のような優しい彼を好きになれたら良いのかもしれない。
でも、私の心は……こうして抱き締められていても、ルイス様を求めてしまう。
どうしてか分からないけど、実物のルイス様はゲームのルイス様と違うような気がするのだ。
子供の頃は青みがかった黒い瞳が、歳を重ねる毎に黒くなって行く。
髪の毛も、光に当たると少し青みを帯びていた筈なのに、今では真っ黒になっている。それに比例するように、ルイス様の瞳は何処か寂しげだった。
常にニコニコしているから、周りの人は分からないみたいだけど……ルイス様ヲタクの私は見逃さないわ!
他の人の腕の中でも、ルイス様を想ってしまう私には、カイル様の手を取る事は出来ない。
「カイル様……あの……」
そう呟いた私の唇に、カイル様が人差し指で触れると
「今は友達で構わない。フレイアが結婚するその時まで、この気持ちを奪わないで欲しいんだ」
ガーネットの瞳が切なそうに揺れているのを見て、私は何も言えなくなってしまう。
「友達……なら」
そう答えた私に、カイルは太陽のような笑顔を浮かべると
「ありがとう、フレイア!」
と叫んだ。
帰り道、又、一緒に街を歩こうと約束して私を寮まで送り届けると、カイルも男子寮の方へと帰って行った。
カイルは最後の最後まで、楽しい時間を過ごさせてくれた。
寮の中に入り部屋へと戻ると、サラが待ち構えていたかのように浴室にフレイアを案内して体中をマッサージしてくれたり、あれこれ心配そうに聞いて来た。
そんなサラに苦笑いを浮かべながら、ふとゲームの事を思い出した。
確かカイルルートでは、ヒロインに一日貴族体験をさせるのだけど、逆に自分とは違う世界の人だと、距離を置かれちゃうのよね。しかもゲームのカイルは、ナルシストで自己中だったのを、ヒロインによって更生されていき、二人で身分の壁に立ち向かうのよね……。
アティカスやレイモンド兄様も、ゲームのキャラとは随分違ってしまっている。
それは、カイルも同じ事だ。
私はゲームのカイルよりも、今のカイルの方が好感が持てる。
……という事は、ルイス様もゲームとは違う性格になっていしまっているのだろうか?
湯船に鼻の下まで浸かると、そんな事を考えて不安になってしまっていたのだった。
それは大人のみならず、子供に対しても同じだった。
私が魔法学園で見ているカイルとは、全く違う姿がそこにあった。
道を歩くと
「カイ!今日は寄っていかないのか?」
「よぉ、カイ。おぉ!遂にデート出来たのか!」
あちこちから声が掛かる。
それはきっと、カイルが誠心誠意尽くして来たからなのだろう。
きっと……カイルを好きになれたら、私は誰よりも幸せにしてもらえると思う。
このお日様の匂いがする、木漏れ日のような優しい彼を好きになれたら良いのかもしれない。
でも、私の心は……こうして抱き締められていても、ルイス様を求めてしまう。
どうしてか分からないけど、実物のルイス様はゲームのルイス様と違うような気がするのだ。
子供の頃は青みがかった黒い瞳が、歳を重ねる毎に黒くなって行く。
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他の人の腕の中でも、ルイス様を想ってしまう私には、カイル様の手を取る事は出来ない。
「カイル様……あの……」
そう呟いた私の唇に、カイル様が人差し指で触れると
「今は友達で構わない。フレイアが結婚するその時まで、この気持ちを奪わないで欲しいんだ」
ガーネットの瞳が切なそうに揺れているのを見て、私は何も言えなくなってしまう。
「友達……なら」
そう答えた私に、カイルは太陽のような笑顔を浮かべると
「ありがとう、フレイア!」
と叫んだ。
帰り道、又、一緒に街を歩こうと約束して私を寮まで送り届けると、カイルも男子寮の方へと帰って行った。
カイルは最後の最後まで、楽しい時間を過ごさせてくれた。
寮の中に入り部屋へと戻ると、サラが待ち構えていたかのように浴室にフレイアを案内して体中をマッサージしてくれたり、あれこれ心配そうに聞いて来た。
そんなサラに苦笑いを浮かべながら、ふとゲームの事を思い出した。
確かカイルルートでは、ヒロインに一日貴族体験をさせるのだけど、逆に自分とは違う世界の人だと、距離を置かれちゃうのよね。しかもゲームのカイルは、ナルシストで自己中だったのを、ヒロインによって更生されていき、二人で身分の壁に立ち向かうのよね……。
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それは、カイルも同じ事だ。
私はゲームのカイルよりも、今のカイルの方が好感が持てる。
……という事は、ルイス様もゲームとは違う性格になっていしまっているのだろうか?
湯船に鼻の下まで浸かると、そんな事を考えて不安になってしまっていたのだった。
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