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女はしたたか……

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私がポカンとした顔で2人を見ていると
「あの……そのような大事な話を、私のような平民が聞いても大丈夫なのでしょうか?」
リリィが不安そうに呟いた。
「まぁ、大丈夫じゃないか?だって、あなた達は友達なのだろう?いずれ嫌でも知る事になるしな」
オリビア姉様はそう言うと
「フレイア嬢とリリィ嬢。きみ達は、違う意味でこの王国の未来の鍵を握っている」
そう続けた。
「未来の鍵?」
私とリリィが顔を見合わせて呟くと
「4家紋全てにおいて、女性が何故1人しか生まれないのか?平民なのに、何故、妖精王の加護を受けたのか?」
意味深な言葉を言うと、オリビア姉様はニッコリと微笑んだ。
「こら、ビィ!あまり二人を脅かすんじゃない」
私とリリィが固唾を呑んでいると、レイモンド兄様が近付いて来て、オリビア姉様の頭を軽く小突いた。
「全く……。歴史好きで、そこまで妄想出来るなら大したもんだよ」
呆れた顔をするレイモンド兄様に
「やれやれ。風魔法の使い手が傍に居たら、内緒話も出来やしない」
そう言って立ち上がると
「邪魔したな」
と言い残し、オリビア姉様はレイモンド兄様と並んで食堂を後にした。
唖然とした顔で見送ると、シャーロットもゆっくりと立ち上がり
「私もそろそろ行きますね。あ、そうそう。ルイス様だけ悪者にするのも申し訳無いので、これだけは伝えておきますね。私、最初からライアン様に近付く為にルイス様と婚約しましたの。勿論、ルイス様もそれを承知の上で」
そう言うと、ニッコリ微笑んで立ち上がり
去って行った。
おとなしそうな淑女だと思っていたシャーロットの、意外な一面に驚いていると
「皆様……凄いですね」
リリィがポツリと呟いた。
「あ!折角、ランチを一緒にしたのに、とんだ話になってしまってごめんなさいね」
慌ててフォローすると、リリィは小さく微笑んで
「気になさらないで下さい。私は、バルフレア様と仲良くなれただけで嬉しいです」
と答えた。
(さすがヒロイン、やっぱり良い子!) 
感動していると、リリィは不安そうな瞳で私を見つめると
「あの……、一つお願いをしてもよろしいですか?」
そう言って来た。
「お願い?何かしら?」
笑顔でリリィに返事をすると
「私も……フレイア様とお呼びしてもよろしいですか?」
と、頬を染めて聞いて来た。
(ひゃー、可愛い!さすがヒロイン)
心の中で叫びながら、顔ではニッコリ微笑んで
「もちろんよ。だって私達、お友達じゃないですか!」
と、手を握り締めた。
この日、私はようやく『友達』と言うものを手に入れた。
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