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満天の星空の下で

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「ぎゃーー!」
それはまだ、夜が明ける前の真夜中。
「はじめ!何で起こしてくれなかったんだよ!満天の星空!見に連れて行くって約束だったのに!」
おそらく目が覚めた創さんは、自分が寝落ちした事に気付いたのだろう。
悲鳴を上げた後、俺の上に馬乗りになり、胸ぐらを掴んで身体を揺すりながら叫んだ。
寝ている所を襲われ、俺は創さんのなすがままに揺すられている。
「凄く楽しみにしていたのに!はじめ!聞いてるのか!」
怒っている創さんに
「創さん、疲れていたみたいですし…。星なら、今夜も見られますよ」
瞼を擦りながら答えると、創さんはおもむろに立ち上がって
「今から見に行く!」
って言い出した。
「今から?」
驚く俺を無視して、目の前で創さんがパジャマを脱ぎ出す。
「そ…創さん!待って下さい!」
慌てて顔を逸らし、俺も着替えを始める。
(俺の気持ちを知ってるのに、無防備というかなんというか…)
溜め息を吐きながら着替えていると、するりと背後から抱き着かれた。
驚いて振り向くと
「はじめ……無防備過ぎだよ」
って微笑まれる。
創さんの手が俺の胸元へと這わされ、慌ててその手を押さえる。
「創さん、星を見に行くんじゃないんですか?」
と呟くと
「あ!そうだった。早く行こう!」
そう言って、創さんが身体から離れた。
本気なんだか揶揄っているんだか……。
創さんの本意が分からなくて、戸惑ってしまう。
着替えて外に出ると、懐中電灯を持って山を登る。
「多分、星は見えないと思いますけど…」
そう言いながら森を抜け、開けた場所に出た。
下の街並みを見下ろせるその場所で、暗い空がゆっくりと街並みの方から紺色から紫へと空の色が変わって行く。
紫から茜色に染まっていくのと一緒に、空もゆっくりと白くなっていく。
創さんは黙ったまま、白く空けて行く空を見つめていた。
目を見開き、空けていく空をじっと見つめているその姿は、朝日を浴びて神々しい程に美しかった。
朝日が昇りきると、創さんは興奮したように
「はじめ!朝焼けの空なんて、初めて見たよ!」
逆光を浴びて微笑む創さんは、なんて美しいんだろうって俺は思わず見惚れてしまっていた。

「で!山菜採りに行くんだろう?」
   思い出したように言葉を投げて来た創さんに、思わず手を伸ばした。
まるで消えてしまいそうな程に美しいこの人が、このまま天に召されてしまいそうだった。
思わず細いその身体を抱き締めてしまった俺に、創さんは驚いた顔をして俺を見上げた。
「はじめ?」
不安に震える俺の身体を抱き締めると
「はじめ、山菜採りに行かないと…」
背中に手を回して、創さんが俺の背中を優しく撫でる。
「創さんが…消えてしまいそうです」
そう呟いた俺に、創さんは驚いた顔をしてから吹き出して
「バカだな!僕は消えたりしないし、ずっとお前のそばに居るよ」
と言って微笑んだ。
「それに…消えてしまいそうなのは、僕からしたらはじめの方だよ」
創さんはそう言うと
「きみは、穢れの無い純粋無垢な美しい魂を持っているんだ。だから僕からしたら、本当に美しいのははじめなんだと思っているよ」
そう言って俺の頬に触れた。
「だから、もう僕の前から消えたりしないで欲しいんだ」
創さんの言葉に涙が溢れて来た。
「はじめ…僕と永遠に、生きてくれないか?」
ゆっくりと広がる光の中で、俺は創さんからプロポーズをされた。
俺は溢れる涙を拭うのも忘れて、創さんを見つめ続けていると
「はじめ、返事は?」
って微笑まれながら、流れる涙を創さんが手で拭ってくれる。
「ずっと一緒に…居たいです……」
俺の言葉に創さんは優しく笑い
「うん、ずっと一緒に生きて行こう」
と答えた。
「創さん、愛しています」
俺の言葉に、創さんは一瞬目を見開いてから微笑んで
「僕も愛してるよ、はじめ」
って答えた。
俺はきっと、今日見た光景を忘れないだろう。
美しい景色と朝日に包まれ、俺と創さんは永遠の愛を誓った。
この先、何があっても俺は大丈夫だと思えた。
止まらない涙を苦笑いする創さんに、必死で涙を拭って微笑み返す。
「はじめ」
そう呼ばれて、俺と創さんは朝の光の中で永遠の愛を誓う口付けを交わした。
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