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2人での生活②

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「え?商店街の喫茶店に、一緒に行って欲しい?」
結局、良い案が浮かばず、創さんに正直に全てを話してお願いしてみた。
コーヒーを飲んでいた創さんは、驚いた顔で俺を見て呟くと
「僕が行っても良いのか?」
と、不思議そうな顔をして聞いて来た。
「え?何でそんな事を聞くんですか?」
今度は逆に俺が質問してしまうと、創さんはコーヒーカップに視線を落とし
「だって、はじめは……その……あの美人の店主さんが好きなんだろう?  前に彼の料理を捨てようとして、激怒したじゃないか……」
と、言い出した。
「え?  何でそうなるんですか?  違いますよ!  俺が好きな人は、創さんだけです」
そう叫んだ俺に、創さんは真っ赤な顔をして
「ば!  ……もう良い!」
と、慌てて席を立とうとした。
俺は創さんの腕を掴み、引き寄せて抱き締めながら唇を奪う。
「んっ……」
舌を差し込み、キスをすると創さんの腕が俺の首に回される。
「は……じめ……」
甘い創さんの声にクラクラするけど、創さんの下半身は全く反応しない。
唇が離れ、上気した顔が色っぽくてムラムラ……もとい、クラクラする。
その時、創さんの手が俺の下半身に伸びた。
「はじめ……、勃ってる」
そりゃ~、好きな人とあんなキスしたら……って思うけど、俺は創さんの手を下半身から引き剥がして
「トイレで抜いてくるんで……」
って答える。
すると創さんが
「抱いて上げられないけど……、はじめなら抱かれても構わない」
なんて言い出した。
好きな人にそんな事を言われて、普通で居られる奴が居たら会ってみたいもんだ。
「創さん……」
再び唇を重ね、シャツのボタンを外して首筋に舌を這わせる。
…………でも、創さんの身体が段々強ばり震え出した。

……まだだ。

必死に俺に応えようとしてくれる創さんの気持ちだけ頂いて、抱くのも抱かれるのも待とうと決めた。
そっと創さんの身体を抱き締めると
「はじめ?」
って、不思議そうな顔で俺を見上げた。
「創さんの心と身体が、俺を受け入れられるようになるまで待つから……」
と伝えると、創さんは涙を浮かべて
「ごめん……」
そう呟いた。
申し訳なさそうにする創さんに微笑み
「なんで謝るんですか?  創さんは悪くないですよ」
と言って頭を撫でると
「はじめ……、こんな欠陥品の僕で本当に良いのか?」
そう言った後、俺の身体に抱き着いて
「……でも、ごめん。僕はお前と離れるなんて、出来ない」
と呟いた。
俺はその言葉だけで充分だった。
創さんの身体を強く抱き締めて
「ゆっくり……、俺達のペースで歩いて行きましょう」
そう答えた。
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