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メイソンのお母さんと妹

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通された部屋も、アルトの力で元の美しい部屋に戻っており、アルトは火が灯っていない暖炉に火を灯した。
メイソンは、目の前で簡単に魔法を使うアルトに驚いていた。
(これが……太陽の神子の力……)
普段、アルトは決して目の前で神力や魔法の類は使わなかった。
部屋にはすっかりやせ細った母親と妹が、突然起きている魔法に驚いているようだった。
「母上、アメリア」
メイソンの声掛けに
「あぁ、メイソン!あなただったのね?」
きっと健康体なら美しいであろう、やつれた女性が焦点の合わない瞳でメイソンを探している。
メイソンがそっと近付き、母親の手を取ると
「母上、長らく留守にしてしまい、申し訳ございませんでした」
と呟くと、メイソンの母親はふわりと微笑み
「メイソン……、顔を触らせて頂戴」
そう言って、メイソンの顔に触れながら
「立派になられて……。今日はどうしたの?」
と言われて
「母上とアメリアを治しに戻りました」
そう答えたメイソンに、母親と妹のアメリア涙を流して首を横に振ると
「もう……良いのよ。諦めているから……。私達の病は、神様で無ければ治せないと言われたわ」
母親の言葉に、メイソンの妹も母親の隣のベッドで声を殺して泣いている。
メイソンの妹も、メイソンと同じ漆黒の髪の毛に美しい容姿をした娘だった。
「兄様、私もじきに嫁ぎます。ですので、私達の事は気になさらずに……」
そう言われ、メイソンがカッとなった顔で
「アメリア! きみに縁談などと、俺は聞いていない!」
と叫ぶと
「ゴリアス男爵様が、こんな病持ちの私でも娶って下さるとおっしゃったのです」
そう言葉を返してきた。
「ゴリアスだと? あんな妾をはべらかせた強欲男に、可愛い妹を嫁がせる訳が無いだろうが!」
メイソンが怒りに任せて叫ぶと、アルトがメイソンの母親の手にそっと触れた。
「初めまして……、メイソンのお母様。僕は、アルト・フィルナートと申します」
アルトの優しい声に、メイソンがハッとすると
「フィルナート?……あの、公爵家の?」
メイソンの母親が、慌てて青い顔になると
「あぁ、そのままで大丈夫です。僕は、太陽の神子なのです。あなたの病を治しに来ました」
優しく語りかけるアルトの声に、メイソンの母親が
「太陽の神子様?……何故、そのようなお方が?」
戸惑うメイソンの母親に
「メイソンは、僕の執事をしてくれています。優秀な執事ですよ。そんなメイソンのご家族が病と聞いて、飛んで来たのです」
アルトは労るようにそう言うと
「ヒューストマン夫人、僕にあなたを治療する事を許して下さいますか?」
それはまるで、高爵位のある女性を敬うようにアルトはメイソンの母親に訊ねた。
「そんな……。神子様にお会い出来るだけでも光栄ですのに、治療だなんて……」
泣き出すメイソンの母親に
「ヒューストマン夫人?」
と優しく問いかける。
「許します。どうか、私と私の娘のアメリアを、この病からお救い下さいませ」
泣きながら頷くメイソンの母親に、アルトは優しく頷くと
「では、ヒューストマン夫人から、アメリア様の順番で治療しますね」
とアルトは答えた。
そっと夫人の右手を両手で包み
ヒール
そう呟いた瞬間、アルトの身体が眩い光に包まれてメイソンの母親の身体を光が包み込んで行く。
あまりの眩しさにメイソンが目を閉じると、光がゆっくりと弱くなっていくのを感じた。
そして母親の身体の上に、紫色の液体が浮いていた。
「メイソン……、この液体がきみのお母様の病気の正体だ」
そう言うと、アルトは胸からフランシスが持っていた小瓶を取り出した。
そして瞬く間に、紫の液体が小瓶の中へと消えて行った。
「アルト様、母上は?」
メイソンが恐る恐る聞くと
「安心して良い。もう、大丈夫だ」
そう言って微笑むと、アルトはアメリアのベッドへと移動して
「アメリア様、これからあなたの治療を行います。許して頂けますか?」
メイソンの母親の時のように、優しく問いかけるアルトに、アメリアは泣きながら頷くと
「アルト様、ありがとうございます」
と、何度も頭を下げた。
「アメリア様。この治療が終わったら、あなたは自由です。婚約も、全て無かった事にします。これからは、アメリア様の足で自由に羽ばたいて下さい」
優しく両手で包み込むように、アメリアの右手を包むと
ヒール
そう呟いた後、再び閃光が部屋を包み込んだ。
そして再びアメリアの身体からも、量は少ないが同じ液体が身体から分離して現れた。しかし、アメリアの身体には、2種類の液体が現れた。
アルトはアメリアの身体から分離した液体を小瓶に移すと、警護隊の1人に小瓶を箱に移して手渡すと
「これを大至急、フランシス様に」
そう伝えていた。
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