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不穏な空気のまま、飲み会スタート

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そんな不穏な空気の中、飲み会が始まった。
最初こそ、私達女子側にいた彼女は、気が付いたら男性席に座って女王様状態。
葉子の好きな人に対して、膝頭を相手の足に付けてキャッキャと話している。
葉子の顔が、段々と暗くなって行く。
「並本さん、そろそろ帰らないとご主人が心配するんじゃないですか!」
怒った凛が叫ぶと、きょとんとした顔をしてから小首を傾げ
「やだぁ~、凛ちゃん。何言ってるの?」
と言って笑っている。
そして凛の彼氏の腕に手を乗せて
「なんか~、凛ちゃん怒ってるぅ~。彼氏さん、優しくしてますか?」
なんて言いながら、凛の彼氏の頬を人差し指でツンツンしている。(もちろん、葉子の好きな人の足に当ててる膝は離さない)
「あのさ、並本さん。これ、合コンじゃないよね?」
さすがに私も腹が立って言うと
「隆二(私の婚約者の名前)~、菜穂ちゃんが怖い~」
と言い出したのだ。
男性陣、すっかり鼻の下を伸ばしていて
「まぁまぁ、菜穂も怒らないで」
なんて言って、まるで私達が悪者だった。
そんな中、そろそろお開きにしようとなった時だった。
「あの、並本さん。LIME交換しませんか?」
と、私の婚約者以外の二人が言い出したのだ。
「え~、でもぉ~」
二人にわざとらしく私達の方を見て言うと、葉子の片想いしていた相手が
「こうして出会ったのも、何かの縁だし」
そう言って、結局、私の婚約者以外の二人とLIMEの交換をしてしまったのだ。

「金曜日のあれ、どういうこと!」
 怒った凛が、昼休みに開口一番に叫んだ。
「どういうって? 普通に男友達だけど?」
飲み会では、やたら鼻に掛かった声と語尾が伸びていたのに、今は普通に会話している。
「葉子、あれから沢口さんに並本さんの事をあれこれ聞かれて、結局、振られちゃったんだよ!」
烈火の如く怒る凛ちゃんに
「凛ちゃん、それって嫉妬? 凛ちゃん彼氏も今朝、私にモーニングLIMEして来たよ」
ニッコリ微笑んでそう言ったのだ。
しかも、凛ちゃん彼氏もの「も」は、葉子の片想いの相手からも連絡が来ているのを匂わせているのだろう。
「え?」
彼女の言葉に、凛ちゃんの顔が強ばって行く。
「朝晩と、男の人ってマメだよね~。私、子供の準備とかあるじゃない? だからレス遅いって返したんだけど、『俺が送りたいだけだから』だって!」
「アハッ」って笑いながら、LIMEの画面を見せて来た。
しかし、その画面は凛ちゃん彼氏の画面じゃなくて、葉子の片想いの相手の画面だった。
明らかに口説きに入っている内容が映し出された画面を見て、遂に葉子が泣き出してしまった。
「あ、ごめ~ん。こっちだった」
その後、何故か私の婚約者の画面になっていて、いつ交換したんだ?と目が点になる。
「あ、間違えた。隆二のLIME画面出しちゃった」
てへぺろって顔して、凛の彼氏の画面を出した。
救いだったのは、私の婚約者とのやり取りした画面は、形式的なお礼のみのやり取りだった事。
しかし、凛の彼氏のものは、凛の愚痴から始まり、彼女の容姿を可愛いだとか美人芸能人の○○に似てるだとか書いてあり、二人で個別に会おうとまで書いてあった。
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