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王様になった
出産~証の子~
しおりを挟むそして季節は夏になり、アルバートが出産した。
緑色の髪の女の子を。
──残るは、カルミネとエリア、さてどっちになる?──
等と、伴侶達に悟られないように考えている私だが、無事に出産が終わり、赤ちゃんを抱くアルバートを見てほっとはしていた。
出産に耐えられる体に変化していったとは言え、それでも負担が大きいのは分かる。
私にできる事は、彼らが求める物を渡したりする位だ。
「アルバート、今度の子の名前は何にしますか?」
「アンジェリカとかどうだろう?」
「良い名前ですね、それにしましょう」
女の子──アンジェリカはディアナを彷彿させて、眠っては乳を求め、お腹がいっぱいになると寝るというのを繰り返していた。
あと、オムツ替えの時だけ。
なので頭がぺったんこにならないように気をつかった。
つぎに秋になるとカルミネが出産した。
バターブロンドの髪の男の子を。
──つーことは、エリアが証持ちを出産?──
──でもエリアは魔力が低い、生まれてくるのが遅そうだ──
『そうだ、その通りだ、このままでは後二年かかるぞ』
──げ──
神様の言葉に、私は驚き、げんなりする。
二年もかかっては異常だし、エリアへの負担が大きく、出産後体を壊してしまいかねない。
『と、言うわけでだ、お前の魔力を注ぎ込んでやれ。飲み物に注ぎ込むことならできるだろう』
──了解でっす!──
その日からエリアの飲み物に魔力を注ぎ込んだり、キスをねだられると魔力を注ぎ込みつつキスをしたりをくりかえした。
「僕の赤ちゃん……なかなか出てこない」
他の子と違って遅い我が子の存在にまたエリアは不安になっていた。
なら私は励ますのみ。
「大丈夫ですよ、きっと貴方の胎内が心地よくて私達に会うのを忘れてるだけですって。そろそろ思い出してでてきますよ」
という言葉を繰り返すだけ。
死産はないのは有り難いが、こうも生まれる時期の差で不安になるのはいただけない。
他の皆もエリアを励ますが、エリアはやはり不安なままだった。
それに、他の伴侶やエドガルドも自分の子育てで大変そうだった。
だからエリアにかかりきりになれない。
その分母上がエリアの側で話を聞いてあげてくれているのは助かる。
そうして、私が雪解けの時期になりかけた頃──
「ダンテ様……破水しました」
気分が悪そうに言うエリアを急いで分娩室へと連れて行く、フィレンツォが持ってきた車椅子で。
そして、出産の時を待つ。
「ダンテ様、怖いです……!」
「大丈夫です、エリア私が側にいますから」
そう言って励ましにもならない励ましで私も必死だった。
なかなか生まれない赤ん坊、どうやら大きく育っているらしい。
一日近くかけて、漸く生まれた時、皆が喝采をあげた。
「ダンテ様、証を持つ、次期国王の誕生です!」
私と同じ、銀髪、褐色の肌、金色の目に、目の中に女神の証のある両性具有の子が誕生した。
「僕の、子、が?」
「ええ、エリア。貴方との子が次の国王です。が、そんな事より見てください、貴方そっくりで綺麗な子ではありませんか」
エリアに生まれた我が子を抱かせる。
「……いいえ、ダンテ様に似て綺麗な子です……でも嬉しい……生まれてきてくれて、ありがとう……」
赤ん坊はふぎゃぁと泣いた、返事をするように。
「エリアの子が証持ちか、ちゃんと育てないとな」
「はい、アルバート」
「エリア、証を持たない子と差別して育てるなよ」
「エドガルド様、分かっております」
「とりあえず、休め」
「……はい」
一日かけて出産したエリアは疲れ切っており、すぐに眠りについた。
「それにしても、伴侶が皆我が子を出産してこうしていられるのは幸せなことだと思っています」
「ダンテ……」
「私は皆を愛しています、こんな私に付いてきてくれて本当に感謝してもしきれません」
私がそう言うと皆は笑った。
「何を言うダンテ、私はお前に救われ、お前のおかげで子を抱くことができた」
「私もです、貴方のおかげで家族のぬくもりをしれた」
「俺もだよ、ダンテのおかげで家のゴタゴタと縁が切れた」
「それかカルミネ、俺はお前のおかげで素直になれたよ、ダンテ」
「……エリアはどうでしょう」
「きっと貴方のおかげで幸せなはずですよ」
クレメンテが言う。
「そうだといいのですが……」
「ダンテ様……」
「エリア起きてたのですか?!」
同室のベッドで寝ていたのだから起きしまっていても不思議ではないのだが。
「僕は、ダンテ様のおかげで、とても、幸せです……」
「……そうですか、有り難うございます、エリア」
「僕の方こそ……有り難うございます、ダンテ様」
そう言ってすぅっとエリアは再び眠りについた。
「起こしてしまいすみませんでした」
髪を撫で頬をなでてエリアを労る。
「これからが大変ですよ、ダンテ」
「母上……」
「この子が国王になるまで、模範となるよう努めなさい」
「はい」
「──なんて堅苦しいのはやめましょう、我が子を守り、国を守る貴方はもう立派な国王ですよダンテ」
母上はちゃめっけのある笑いを浮かべたので、私は一瞬ぽかんとしてから苦笑いを浮かべた。
──母上には勝てそうにないな、勝つ気はないけど──
と思いながら子等の面倒を見ることを始めた。
午前中、国王としての職務を終わらせ、午後は子等の面倒と伴侶達へのアフターケアなどを行って過ごす。
ちなみに疲労度がたまると、自己申告でフィレンツォに「済まない、疲れてるのだが仮眠をとれそうにない」と言ってアイアンクローで無理矢理寝かしつけて貰っている。
アイアンクローの時点でおかしいのだが、フィレンツォだしまぁいいかと思っている。
伴侶達の役に立ってるのか、足を引っ張ってるのかたまにわからなくなって皆に問いかける。
「何を言っている、役に立ってるぞ」
と、エドガルド。
「貴方は立派な父親ですよ」
と、クレメンテ。
「寧ろ無理しすぎ」
と、アルバート。
「無理しすぎて不安になるから休めるとき休め」
と、カルミネ。
そして最後にエリアが──
「ダンテ様、無理しすぎて不安です、公務も子育ても両方頑張りすぎているのですから、もうすこし気を抜いてください、僕も親なんですから」
言う始末。
どのくらい気を抜けばいいのか分からないが、もう少し伴侶達を頼ろうと決めた私であった。
ただし、できるとは限らないけど。
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