私とマリヤの世界征服録

琴葉悠

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決断とこれから

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「愛している――」

 その言葉に、マリヤの表情がなんとも言えないものに変わった。
 ブラッドはダメだったかとうなだれると、マリヤがそっとブラッドの手に触れた。
「ブラッド様、言ったはずです。あの日からすべてブラッド様に捧げていると」
 マリヤの言葉に、ブラッドははっとした表情になる。
「愛されるなんておこがましいと思っていました。でも――」

「今とても嬉しいのです」

 マリヤは穏やかに微笑んだ。
「マリヤ……だが……」
「ブラッド様、一つ言い忘れていたことがあります……」
「なんだ?」
 マリヤは少し言いづらそうにしてから、口を開いた。
「実はワクチン副作用がありまして……」
「何だと?!」
「老化現象のストップと、寿命が延びるというのがあって……」
「は……?」
「ハツカネズミで試したら細胞がわかいまま長く生きつづけるというのがでてまして……ちょっと自分、やらかしたな……と」
「……」
 ブラッドは何も言わずマリヤの両頬を引っ張った。
「いふぁいれしゅびゅりゃっどしゃま」
「心配した私の気持ちを返せ貴様ー」
 さも楽しげに引っ張るブラッドを見て、マリヤも頬を引っ張られながら笑ってしまう。
「……しかし、その薬は未発表なのだろう?」
「はい……さすがにこれを出したらいろいろと問題ありそうで……」
「では出すな、その副作用がないものを開発しろ」
「はい、ブラッド様」
「……いい加減様づけはやめんか?」
「出来たら苦労はしませんよ……」
 そういって二人して笑いあう。
「永遠というわけにはいきませんが、末永くお供させて下さい」
「ああ、長くつきあってやろう。貴様がいやだといってもな」
 ブラッドは頬を引っ張るのをやめて慈しむように撫でた。
「……あ、そうだ学校……いたた……」
「無理に動くな! お前も爆破テロの時いたんだろう?」
「そうなんですが先生が私をかばって怪我を……!」
「レアが治療したから安心――」
 その時、通信機がなり、ブラッドは少し渋い顔をしながら電話をとる。
「何だ、レアか?」
『ブラッド、すまないがマリヤをつれて急いできて欲しい』
「……分かった行こう」
 ブラッドは通信を終えると、マリヤを抱き抱えてその場から姿を消した。
 マリヤが目をあけると、学園の研究室前であり、マリヤは青ざめた顔をしてブラッドを見る。
 ブラッドはそれを見て少し深刻そうな顔をして、扉を開けはなった。
「おい、爺!」
 扉をあければ、ジョシュアが横たわっていた。
「先生!」
 ブラッドがマリヤを抱えたまま駆けつけ、ジョシュアに近づくと――
「ぐぅぐぅ……」
 寝息が耳に届き、思わず抱き抱えたままずっこけそうになった。
「おい、この爺人の心臓に悪いことばかりしやがって……!」
「おーい、ブラッドキャラ崩壊だぞ」
「先生、起きて下さい……!」
 マリヤがブラッドから抱き抱えられながらジョシュアを揺さぶる。
 すると、ジョシュアがむにゃと何かいいながら目をさました。
「おや……おはよう二人とも……」
「先生! 心臓に悪いことはやめてくださいませ」
「倒れていると思ったら寝ていてな。無事を知らせたくて呼び出したんだ」
「なら普通に呼び出せ!!」
 普段はしない意地悪そうな笑みを浮かべるレアにブラッドはかみつく。
「それにしてもマリヤくん、立てないのかね……?」
「その……緊張の連続で足がふらふらなんですよね……」
「ほほ、それはそうだろうね、こんな経験滅多にないからねぇ」
「出来ることなら一生経験せずに終わりたいです」
「ほほほ、君ならそういうだろうね、でもいい経験になったろう」
「は、はぁ……」
「さて、マイヤー社の不祥事というか悪事が世間に暴露されたわけだし、教え子の一人だったということもあるから私にも質問がくるだろうから、君たちは帰りなさい」
「あ……」
「出来の善し悪し関係なく、私の授業を一度でも受け取った子は皆私の弟子のようなもの。君の存在はあまり知られてないから大丈夫、マリヤくんをつれて帰ってもらえるかね」
「先生……」
「ほほ、安心したまえ。元生徒の不祥事はなれっこだから」
 ジョシュアの台詞にマリヤは前のめりになり、ブラッドが抱き抱えていなければ倒れていそうなほどのめっていた。
「わかりました、先生お気をつけて……」
「はい、ああ彼との結婚式があるなら呼んでくれると嬉しいのですがな」
「え」
 ジョシュアの台詞にマリヤの顔がカーッと赤くなる。
「この爺本当に厄介だな!」
「見抜く爺さんも爺さんだが、見抜かれるお前逹もお前逹だと思うぞ」
「簡単にいいおって……! 不愉快だ、先に帰るぞ!」
「せ、先生お元気で!」
 そういうと、マリヤとブラッドの二人はその場から姿を消した。
「……相変わらず意地の悪いことをなさるな、ひいおじい様は」
「ほほ、普段はそう呼んでくれんのに、珍しいですなぁ」
「気分ですよ、ではお体に気をつけて」
 レアもそう言うとその場から立ち去っていった。

 屋敷に戻るとフミがふみゃーという鳴き声とともに出迎えた。
「フミちゃん、ただいま」
 マリヤがそう言うとフミはブラッドの足下にまでかけより、ぴょんぴょんと飛び跳ねてマリヤの腕の中に入ろうとしたが、入らなかった。
 見かねたブラッドがフミを片手で抱き抱え、マリヤの腕の中に納める。
 すると、フミは満足そうにごろごろとのどを鳴らした。
「ふふ、よしよし……」
 ブラッドに抱き抱えられながらマリヤは嬉しそうにフミに微笑んだ。
「全く……これでようやくいつも通り、か」
 マリヤを抱き抱えたままソファーにすわり、ブラッドは息を吐いた。
「いや、いつも通り、ではないな」
 猫に夢中なマリヤの頬を撫でて、口づけをする。
「あびゃ?!」
「くくく、貴様はいつも通りだな」
「そ、それは驚きますよ、いきなり頬に、きす、されるなんて……」
「私と共に歩むと誓ったのだろう、なら少しは覚悟……」
「いちゃつくならもっと別の場所でやらんか」
 げしりとブラッドの後頭部にレアの蹴りが入る。
「レア、貴様!」
「私の目が黒いうちは変なことしたら締めるからな」
「まだ邪魔ものか……! くそ、こいつとの縁も一生つづくとなると本当に悪夢だ!」
「え?」
「ああ、言ってなかったな。こいつがアホしないように私も私が殺さない限りしなんようになってる」
「ええええええ?!」
 予想外の真実に、マリヤは素っ頓狂な声を上げる。
「自殺しか死ぬ方法ないなんて最悪だなーはははー」
「貴様が選んだんだろうが! こんなロクデナシ一人生かしたら何おきるかわからねぇって!」
「ロクデナシの自覚ありか」
「ないわ!」
 ぎゃーぎゃーと言い合う二人を見て、マリヤはふふっと笑った。
「これからも一緒で嬉しいです」
「……ふふ、そうだな」
「貴様に言われると文句は言えんな……」
 そして三人で笑いあった。
 その様子を、猫は満足そうに眺めて鳴き声を上げて、そのまま眠った――



 
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