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マリヤと戻ってきた日常
しおりを挟む世界中で出された外出制限令がなくなった日に、レアが基地にやってきた。
「レア先生!」
マリヤはレアの顔を見るやいなや抱きついた。
「レア先生だけお姿が見えないから不安だったんです……!」
マリヤがそう言うと、レアは少しだけ微笑み、そしてどこか申し訳なさそうな顔をした。
「すまなかった、あんな状況だったからこっちにはこれなかったんだ」
「危ないこととか、してませんか?」
「ああ、特にはしてないよ」
「よかったぁ……」
マリヤはそういうと、腰が抜けたのかその場に座り込んでしまった。
「ふふ、立てるかい?」
「ちょっと無理そうです……」
レアがマリヤの手をにぎり抱き起こそうとするが、その前にすっと黒い手がさしこまれマリヤを抱きあげた。
「ぶ、ブラッド様?!」
「やはりくたばっていなかったか、さすがだな」
「貴様こそ、おいたができなくて残念だったな」
「ぐっ……」
ブラッドはレアの言葉に忌々しそうに顔を歪める。
「貴様は相変わらずだな!」
「当たり前だ、それよりも話したいことがある」
「……わかった、ちょっと待ってろ」
ブラッドはマリヤを彼女の自室に運び、ベッドに座らせる。
「私はレアと話がある、貴様は大人しくここで休んでいろ」
「は、はい。わかりました、ブラッド様」
「それでいい」
マリヤの返事を聞いたブラッドは、満足そうに邪悪に笑い、部屋から姿を消した。
ブラッドが自室に戻ると、すでにレアが壁に背中を預けて立っていた。
「来たか、何が用か解ってるな?」
「ああ、貴様が対応していた件についての話だろう」
「その通りだ、率直に言う奴らが探しているぞ」
「計画は完全に潰れたのではないのか?」
レアの言葉にブラッドは眉をひそめる。
「責任者も責任とらされたと思うがそうならないのが世の中だ、どうせまた計画を実行するつもりだろう」
「いい加減あきらめればよいのに、愚かだな」
ブラッドは呆れのため息をついた。
「まぁ、連中のオツムじゃまた同じことが起きるとしかいえないな。何せ天才二人は協力者じゃないからな」
「あの爺とマリヤの事か」
「正解だ」
ブラッドの言葉に、レアは頷いた。
「マリヤも爺も協力するとはおもえん」
「しかもお前の監視つきだからな、マリヤは。基本接触はできないだろう」
「当たり前だ、マリヤは私のだ」
「貴様のじゃないんだがな……」
ブラッドの発言にレアがそっとため息をついた。
「だが、いつまでも隠し事はできんぞ」
「……そうだな、貴様の能力について暴露してしまったしな」
「予想通り暴露か」
レアは額を押さえて息を吐いた。
「ああでもしないと貴様の能力について言えないからな」
「私の能力の弱点つかれたらアウトフラグなのだが……」
「何、『ロボット』なら貴様の『生物』範囲になってるから問題あるまい」
「そうだが、あまり人にいう能力でもないだろう」
レアはそう言うと、壁に背中を預けるのを止めて椅子に座った。
「無差別に見えるが、弱点はある。私の認識ができなかったら、その時点でお終いだ。たとえば地震で建物が崩れた場合、私は生物認識ができないから建物の下敷きになるぞ」
「ならこう考えろ、『生きているこの星の鼓動で建物が崩れた』とな」
「……貴様頭がいいな、こういう時は知恵が働くな」
「最期の一言は余計だ」
感心したような言葉をレアが言うと、ブラッドは少しだけいらだったような口調で返した。
「その認識なら災害時の大半が対処できそうだ、助かる」
「貴様はそうでなくては困る、唯一私を殺せる可能性なんだ」
「前回殺せなかったがな」
「それは貴様の実力不足だ」
ブラッドはレアを鼻で笑うと、自分の椅子にどかっと腰を下ろした。
「マリヤの選択によっては私はそれを公使しないぞ」
「――そうだな、全てはマリヤの選択だ」
ブラッドは両手を口の前で組み、ため息をついた。
「……だが、永遠の孤独なんぞ、耐えられるまい」
ブラッドは深いため息をついて、目を閉じた。
ブラッドがいなくなって一人部屋に残されたマリヤは、暇つぶしにゲームをしていた。
最近流行の陣取りゲームだ。
しかし、対戦に飽きたのかゲームを終了させ、ベッドに横になった。
誰もいない自室に一人きりという空間が彼女の気持ちを暗くさせたのか、周囲にどんよりとした空気が流れる。
「ああ……気持ちが重い、苦しい……」
心臓が締め付けられるような苦しさから、マリヤはうずくまった。
「何が苦しいのだ」
「あびゃ?!」
いつも通り突然姿を見せたブラッドに、マリヤは奇声を上げた。
ブラッドが体を起こすのをみてから、なんとかマリヤも体を起こした。
「ぶ、ブラッド様! いきなりでてこないで下さい! 心臓にわるいです!!」
「いい加減なれん貴様が悪い」
ブラッドは邪悪に笑うと、マリヤはひぃっと情けない声を上げた。
「全く、貴様はいつまで立っても変わらんな……いや、その変わらないというのは悪いことではないが」
ブラッドは一人呟くと、マリヤを見下ろす。
「ブラッド様?」
急に雰囲気が変わったブラッドを、首を傾げながら見上げた。
「――気にするな、さて今日は暇なのだろう、ならば私と遊べ」
「ええ?!」
「この間の陣取りゲームのリベンジだ、負け越しのままでは終われん!」
いつも通りの顔を張り付けて、ブラッドが言うと、マリヤははぁとため息をついて頷いた。
「……ブラッド様」
「何だ」
「……ありがとうございます、少し気分が楽になりました」
マリヤは微笑みブラッドに礼を言った。
ブラッドはそれをみて、少しだけ頬を赤くする。
「……当然だ、貴様は私のものなのだからな」
マリヤに聞こえないよう小声でいうと、ブラッドはゲーム機を取り出し、テレビ画面を見る。
「さあやるぞ!」
「はい」
マリヤもゲーム機を取り出し、画面の方を見た。
それから二人で仲良くゲームを始めた。
結果、押されてゲームで敗北しつづけてムキになるブラッドの姿が見られた――
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