私とマリヤの世界征服録

琴葉悠

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レアと負の遺産

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 世界全体に外出制限令が出されたその日、レアはとある研究所を訪れていた。
 その研究所は『不老不死』について研究している場所だった。
 今は、人気もなく、不気味な静寂さを漂わせていた。
 レアはその研究所へと入っていく。
 そして入っていくと、様々な人体が混じり合ったような化け物が方向をあげて襲いかかってきた。
「1050――」
 レアはそういうと、化け物にメスを押し当てた。
 化け物は全身に亀裂を走らせ、赤い血を後ろに吹き出しながら崩壊した。
「随分と数だけは増やしてくれたな、おかげでここまで来るのに手間取ったぞ」
 レアはそう呟いて、化け物の数を数えながら、同じように化け物逹をほふっていった。
 壁や床が真っ赤に染まっても、レアの白衣だけは白いままだった。

 化け物逹が噴き出す血しぶきも、レアを汚すことはなく、レアは綺麗な姿のまま、研究所内部を歩き回った。
 ときおり、部屋をあけては生存者がいないか確認していたが、一向に生存者が見つからず、いらだったように扉を開け続けた。
 そして、最後の扉をあけたとき、物陰にうずくまりがたがたと震える影を見つけた。
 レアはその影に近寄り、姿を全て確認する。
 白衣を来た、男性だった。
 見るからに職員らしいその男に、レアは声をかけた。
「おい」
「ひぃ!!」
「逃げるな、答えろ。ここの研究所の奥にどうやってすすめばいい?」
 レアは職員を捕まえ、逃げさせないまま、問いかけた。
「こ、このセキリティカードを使えば入れます! ですから見逃して下さい!!」
「いいだろう、どこへとなり逃げるがいい」
 職員からセキリティカードを受け取ると、職員を解放し、レアは研究所の奥へと足を向けた。
 途中で、職員の悲鳴が聞こえてきたが、戻る頃には大量の血と肉と生き残っていた化け物しかいなかった。
「……前よりも隠れている率が高いな」
 レアは舌打ちすると、再び襲ってくる化け物の攻撃をするりとかわして、化け物の身体にメスを押し当てた。
 砕け散り、肉塊が溶け、血と混じった状態になったのをみてため息をつく。
「……前よりも厄介そうだな……」
 一人呟くと、研究所の奥へと入っていった。
 研究所の奥は、化け物だらけで入った瞬間レアに一気に襲いかかってきた。
 レアはそれを、紙一重でかわすと、化け物逹をメスで切り捨てる。
 メスが当たった箇所から化け物逹の身体に亀裂が走り、砕け、血しぶきをあげた。
 そして肉塊が融解し、床が化け物の体液で汚れる。
 レアはその汚れた水たまりの上でまだ襲ってこない化け物たちを見据えた。
「……こないのか? ならこちらから――行くぞ」
 そう声を出すと、化け物の懐に飛び込み、メスを押し当て、身体に亀裂をいれていく。
 化け物逹の叫び声が響きわたるが、レアは気にした様子もなくそのまま施設の奥へと進んでいく。
 血しぶきで壁を汚しながらも、自身は全く汚れないままで。
「……予想以上だな」
 レアは施設の奥にある、液体の入った筒逹をみて呟いた。
 筒の中には、化け物に変成途中の人の姿がみられる。
「……こんな姿でも不老不死になんてなれんのに、おろかだ」
 そう言ってから、筒を破壊し、中にいる人だったものにとどめを刺してからさらに奥へと進んだ。
「……」
 施設の最奥部では、たちすくんでいる人影があった。
「アルフレッド氏だったか、以前からこりない人だ」
 レアは人影に声をかける。
 人影は、レアの声に反応し、ぎろりと睨みつけてきた。
「また、また貴様か……!! 今回は、今回はうまくいくはずだったんだそれなのに何故……!!」
「模倣品などうまくいくわけがない。根底理解がない限りな」
「黙れ!! 最初のアレさえいればうまく行ったのに……アレはどこだ!! 貴様アレをどこに隠した!!」
「さてな」
 レアは肩をすくめて答える。
「アレがいてもいなくても、貴様の研究はこの程度だったろうさ」
「黙れ!!」
「ああ、黙ろう。周りがうるさいからな」
「何を……ひぃ?!」
 二人が会話をしている最中、周りは化け物に囲まれていた。
「どこぞのB級映画みたいな展開だな」
 レアは首をごきごきと鳴らしながら呟く。
「いったいどれだけの人数を使ったんだ貴様は」
「ご、50人程度しか使ってない! 勝手に増殖することを覚えたんだ!」
「50人も、の間違いだろう? それはともかく、こいつらを一瞬で消滅させる方法は?」
「それは言えない! せっかくここまで――」
「なら死ぬか?」
 研究者の首根っこをつかんで、襲いかかってくる化け物逹の攻撃をかわす。
「言え、ここで喰い殺されるか、生きるかの二択だぞ」
 レアは研究者を守りながら、化け物の攻撃をかわし、一体ずつ殺していく。
 しかし、それ以上のスピードで増殖していた。
「どうする?」
「く……や、奴らの核がこの奥にある! それを壊せば連中は自己を保てなくなる!」
「よく言った」
 レアはそう言うと、研究者の首根っこを掴んで、最奥のさらに奥へと向かう。
 そこには、巨大な培養液の中に浮かんでいる不気味な球体があった。
 まるで生物の核のような存在の球体だった。
「……」
 化け物逹はその存在を壊させないと襲いかかってきたが、レアはそれよりも速く動き、巨大な球体を筒ごと破壊した。
 球体に亀裂が走り、真っ赤な血しぶきを四方八方に吹き出して決壊し、崩れ、跡形もなく消え去った。
「よし……」
「ああ、私の研究の成果が……あと少しだったのに……」
「こんな、ハザード状態であと少しもくそもあるか」
 レアはため息をついて、血に塗れた白衣と身体をみた。
「ここまできて血塗れか、仕方ない家に見つからないように戻るか物色するか」
「お前はほしくないのか!? アレがいれば永遠の命だって手に入るのに!! 知っているのだろう、アレの場所を!!」
「永遠など、ほしいと思ったことはないね。死ぬのは恐ろしいが」
 レアはそう言うと、その場を後にした。

 血に塗れた服を鞄に押し込み、汚れていない服と白衣に着替える。
 そして外をみると、雨がやんでいた。
「そんなに時間がたっていたか……」
 レアはそう言うと、研究所から一歩踏み出す。
 晴れ間が広がり始めていた。
「――『アレ』か。アレは今のままでいるのがいいんだ。今の状態が、ちょうどいい」
 そう呟くと研究所を後にした。

 後に、研究所では、実験の失敗と被害状況から監査が入り、『不老不死』の実験は凍結し、研究所は閉鎖されることとなった。
 そして責任者は――







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