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マヨイの言葉

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「うー♩ うー♩」
「マヨイか、機嫌よさそうだな」
「うー♩」
「そうか、それはよかったな」
「あの、所長。何をお話に?」

 二階でお茶を飲んでいる瑞穂と零。
 その零の膝の上で丸くなっているマヨイ。
 瑞穂にはマヨイの言葉は理解できなかった。

「ああ、何。昔体の状態を教えた女性の子どもがお礼しようとやってきたのが嬉しかったそうだ」
「うー♩」
 マヨイは機嫌よさげに頷いた。
「ちなみに、その女性離縁されたりしたか? 一度」
「う!」
「やはりか、で離縁したところはどうなった」
「う!」
「なるほど」
「しょ、所長、私に全く分かりません」

 瑞穂は困った顔をした。

「おお、そうだったなでは翻訳しよう」
「う!」
「今のはお願いしますって言っている」
「は、はあ……」

 瑞穂はなんとも言えないような顔をする。

「離縁されたか、一度。に対しては『一回離婚された、子ども産めなくて』と返された」
「な、なるほど」
「で、離縁された所はどうなった。に対しては『お家断絶』と来た」
「うわぁ……」
「以上だ」

 零は紅茶を飲み干した。

「お家断絶ってことは一人っ子?」
「ああ、そうだ。子独りで養子も取らなかったからそこで終了だ」
「養子、取れば良かったのに」
「う!」
「実子主義だったらしいな」
「う!」
「だから、実子以外は受け付けないそうだ」
「嘘でしょう……」
「と言うわけで家は無くなった、合ってるか?」
「う」
「合ってるらしいな」
「うー」
「寡婦で子持ちの女とも結婚したが子どもができず、息子は『俺が悪いんじゃ無い、女達が悪いんだ』と叫んだが、最終的に医者の診断で自分が原因で子どもができないと言われショックで自殺したらしい、それで家は終わり」
「な、なるほど……後味悪いですね」
「確かに」

 零は新しく紅茶を入れ直した。

「さて、マヨイ。お前の村ではそういう問題はあったか?」
「う」
「ふむ、あったが必ず社に来てお参りするから治してた、か。さすがマヨイとその父上だな」
「うー♩」
 マヨイはまた機嫌よさげに声を上げた。
「マヨイさんのお父さんが異形なんですか?」
「ああ、人間よりのな」
「へぇ……」
「今は各地を巡っているよ、ただ見た目が巨大なワームっぽいのがなぁ」
「oh……」
「うー!」
「すまない、悪く言ったつもりはない」
「う!」
「許してくれて有り難う」

「何だ、お前らそろって茶会か? 見廻り終わったから」

 慎次が其処へ現れた。
「あの、慎次さんもマヨイさんの言葉分かります?」
「分かるぜ? 俺も異形の子だからな」
「異形の子や私なら分かるからなぁ」
「私も分かりたいなぁ」
「う」
「マヨイも止めておけといっている、私もやめておいたほうがいいと思う。深淵を除くことになるぞ」
「『う』って言葉の意味を判別するだけで⁈」
「そうだ、止めておけ」
「は、はいぃ……」
「うー……」

 しょんぼりする瑞穂の頭をマヨイは撫でて上げた──





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