上 下
155 / 238

羽目を外す時期には~依頼が満載~

しおりを挟む



 街がイルミネーションで彩られる頃。
 零の事務所もまた大忙しだった。

「所長、さっきから浮気調査の依頼ばかりきます!」
「クリスマスとかで浮かれてやらかす奴がいるだろうからな、そこを突いてるんだろう」
「所長、ですが依頼数を私達ではこなせません!」
「今は断りを入れてるのに、もうそんなにか」
「はい」

 零は頭を抱える。

「ちょっと応援呼んでくる」

 零はそう言って二階に上がった。
 二階ではフエ達がままごとをしていた。

「──という訳だ、異形案件じゃないが協力を頼む」
「いいよーその代わり、クリスマスは私達と過ごしてね」
「職員達との後で良ければ」
「うん、交渉成立!」

「という訳でぇ」

 フエは影に手を突っ込み、蓮を引っ張りだした。
「ちょっと姉さん、何すんのよ! せっかく康陽さんとお茶してたのに!」
「ごめーん、蓮。実はね──」

 フエは蓮に事情を話した。

「それくらい余裕よ、内の使い魔達の目をレンズにしてそれを現像するなんて楽勝楽勝」
「本当か」
「うん、本当」
「では、今から頼む!」

 零はどさっと依頼内容が書かれた紙が入った封筒を机の上に置く。
 それを見て零は顔を引きつらせる。
 が、直ぐさま切り替えて中身全てに高速で目を通す。

「わかった、じゃあ行ってくるね」

 蓮はそう言って二階を下り、事務所から出て行った。

「大丈夫か、蓮一人で?」
「私も一応見てたから手伝っておくよ、でも蓮一人で十分だよ、内容がね」
「そうか……」

 フエの言葉に、零は少し安心したように息を吐く。
 そして慎次がもってきた紅茶を飲む。

「だがしばらくはかかるだろうな」
「多分ね──」

 それから二日後──

「おらぁ! 証拠全部集めてきたよ! 音声録音も含めて!」

 と、蓮が各自の封筒に証拠を集めてきたのを風呂敷に詰めてもってきて一階のテーブルの上に置いた。

「……早いな」
「それだけこの期間中にやってくれてたから楽で助かったよ」
「依頼人に連絡しよう、伊賀、高嶺、宜しく頼む」
「はい!」
「勿論ですわ!」
 二人は事務所内の固定電話を使って連絡をし始めた。

「さぁて、大忙しになるぞ」




 事務所が本格的に落ち着いたのはそれから一週間後だった。
 また、依頼が入り蓮がかり出され、証拠を集め。
 それを繰り返していた。

 クリスマスは当日、休業の看板を立てて探偵事務所で慰労会ならぬクリスマスパーティを零は主催した。
 と言っても慎次が作ったオードブルとケーキを皆で食べるだけだったが。


 それが終わり、解散すると、フエがやって来た。
「と言うわけで私達のパーティに来てね!」
 返事をする前に零は連行された。

「異形の子がクリスマス祝うってどうなんだ」
「仏教徒とかが祝うのと一緒よ、用にはお祭り騒ぎしたいだけ」
「そういうものか」
「理由つけてね」

 フエ達が作った料理を口にしながら零は言った。
 番い達は側で寄り添いながらケーキを食べさせあいをしている。

「どうした?」
「ああ、慎次。私、いる意味あるのか?」
「俺等みたいな番い持たない組が話すのがあるだろう」
「そうだ」

 紅が会話に参加する。

「紅」
「番いがいないなら『花嫁』と会話するのが良かろう?」
「そういうものか?」
「そういうものだ」

「さて、零。最近調子はどうだ?」
「……ふと思ったんだが、ニルスの影にしまわれてるロナクはどうしてる?」
「ああ『俺ぼっち、イヤー‼』と悲鳴を上げてな、仕方ないから今日だけ開放してる、ただしお前に近づかないのを約束させてな」
「ああ……」

 ロナにべったりのロナクを見て零は遠い目をした。

「酒は飲まないんだな」
「酔わないし、酒よりジュースの方がいいしな」
「そうか……」
「さぁ、楽しもう、飲んで喰って騒ごう」
「騒ぐのは辞めておこう、黒歴史が増える」
「仕方あるまい」

 零は異形の子等と和やかに過ごした──





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

OLサラリーマン

廣瀬純一
ファンタジー
女性社員と体が入れ替わるサラリーマンの話

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?

ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。 それは——男子は女子より立場が弱い 学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。 拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。 「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」 協力者の鹿波だけは知っている。 大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。 勝利200%ラブコメ!? 既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?

薄幸召喚士令嬢もふもふの霊獣の未来予知で破滅フラグをへし折ります

盛平
ファンタジー
 レティシアは薄幸な少女だった。亡くなった母の再婚相手に辛く当たられ、使用人のように働かされていた。そんなレティシアにも幸せになれるかもしれないチャンスがおとずれた。亡くなった母の遺言で、十八歳になったら召喚の儀式をするようにといわれていたのだ。レティシアが召喚の儀式をすると、可愛いシマリスの霊獣があらわれた。これから幸せがおとずれると思っていた矢先、レティシアはハンサムな王子からプロポーズされた。だがこれは、レティシアの契約霊獣の力を手に入れるための結婚だった。レティシアは冷血王子の策略により、無惨に殺される運命にあった。レティシアは霊獣の力で、未来の夢を視ていたのだ。最悪の未来を変えるため、レティシアは剣を取り戦う道を選んだ。

性転のへきれき

廣瀬純一
ファンタジー
高校生の男女の入れ替わり

処理中です...