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探偵療養中~無理する「花嫁」~

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「全く……」
「うー……」
「どうして無理するのかなぁ?」
「すまん」

 ベッドで横になって筒状の何かに包まれている零に、フエ達が呆れたように言った。

「私ら言ったよね、無理せず呼べって!」
「呼ぼうかどうか迷った」
「迷ったら呼ぶ!」

 フエは怒って言う。

「マヨイ、怪我の様子は?」
「う!」
「よし」

 ずるると筒状の何かが抜けてパンツ一丁でべとべとになった零が現れた。

「シャワー……」
「お風呂に入る! つか入れる!」

 フエはそう怒鳴って、零を風呂に入れ髪の毛を洗い、背中も洗い、流し、ちゃんと浸かって温まったのをみると風呂から出ていいサインをだした。
 零は風呂から上がると、体を拭かれ、下着と寝間着を着用させられる。

「ほれ、飯だ」
「……こんなに食えないぞ」

 どっさりと出された料理の数々に零は眉をひそめる。
 それを見てフエははーと息を吐き出した。

「零さん、余ったら紅姉さんが責任もって食べるから食べれる分だけ食べてちょうだい、というかできるだけ食べて」
「分かった」

 フエに言われて零は食事を取る。
 分厚いステーキを一切れ、白いパンを二つ、サラダを少々と、デザートを一つ手をつけた。
 そしてスムージーを飲む。

「もういい?」
「本当?」
「本当だ」

 そういう零に、フエはなんとも言えない顔をしてから、紅に残った料理を持って帰るように言った。
 紅は指を鳴らし、料理をその場から消した。

「もう食べた」
「相変わらず早いよね……ってか持って帰るように言ったよね?」
「皿はこの家にある物を使ったからな」
「お皿とかだけは大量にあるのね……」
「もらい物だ」
「そうなん」

 フエはそう言うと、皿を全て洗い出した。
 コップも。

「なんか家政婦みたいだな」
「しょうがないでしょう! 零さんの私生活が破滅的なのに、命知らずすぎるんだから!」

 紅に指摘されフエは怒鳴ってスポンジを握りしめる。
 本来なら圧縮されて使い物にならなくなるはずだろうが、フエの理性がそれを防いだ。

「いっそ家政婦兼ボディーガードになったらどうだ?」
「そしたら柊さんに浮気者と言われる、辛い」
「実際浮気者だしな」
「あーあーあー‼ きこえなーい!」

 紅とフエのやりとりを見てぽかんとしてるマヨイ。
 一方自分の事が原因だというのに、零は苦笑した。

「零さん、何笑ってるの⁈」
「いやすまない、おかしくてついな」
「こっちは大変なのよー!」

 フエが声を張り上げる。
 零は吹き出した。

「なーして吹き出すの!」
「いや、何。異形から恐れられる異形の子のこんな場面を見られるのは少ないだろうなと思ったら笑えてきてな」
「もう……次は気をつけてよ」
「分かってる」
「しばらく安静ね、仕事はレオンとニルスの二人に任せる事」
「分かってる」

 そう言って零はベッドに横になり、眠りに落ちた。
 それを見て、フエは零に近づき、唇をぷにぷにと触る。

「ふーんだ、こっちの気も知らないで」
「フエ、異形が出たらしいぞ」
「分かった行く、行こう、マヨイ」
「うん!」

 そう言って三人は部屋から姿を消した。
 静かな寝息だけが部屋に響いた──





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