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何でもできる故の過信~依存する番い達~

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「うう……フエの浮気者」
「マヨイ、マヨイはまだ帰ってこないのか……?」

「「……」」

 相変わらず依存度の強い二人を見て康陽と蓮は顔を見合わせた。
 蓮はため息をつく。

「本当、あの二人どうしてるのかな、見に行くべき」
「それもいいかもしれない、気をつけて」

 蓮が居なくなると、康陽は椅子に座り、紅茶をいれて飲み始めた。

「康陽、お前は不安にならないのか……?」

 柊が泣きはらした目で聞いてくる。
 すると、康陽はカップを置き即答した。

「ならん」

 と。

「どうしてそう言い切れるんだ⁈」

 柊が康陽の服の襟を掴んで揺さぶった。
 康陽は鬱陶しそうな顔をする。

「俺はお前らと違い、依存ではなく信頼している。だからその信頼に揺らぐことはない」

 そう言って、柊の手を離させ、服を整える。
 柊はがくりとその場に座り込んだ。

「依存……? 私はフエを愛しているし、フエも私を愛している……」
「お前らのはどう見ても相手に依存してるようにしか見えない。相手がそれを否定したとしてもな」
「……」

 柊達は呆然としている。
 そうこうしていると、蓮がフエとマヨイを連れて戻って来た。

「もう、あんな事になってるなら連絡寄越してよもっと早く!」
「ごっめーん!」
「ごめんなさい」

 怒鳴る蓮に対して、フエとマヨイは謝罪の言葉を口にする。

「マヨイ……!」
「エル……!」
「一体何があったんだ? 蓮?」

 取り乱すように、すがりつく二人と違い、康陽は蓮に事情を聞いた。

「零さんが異形から人をかばって大けがして、更に異形逃がすところだったらしかったから私ら呼べって怒ったの、二人でなんとかなるかなーと思ってたらこの様よ」
「零の怪我の具合は?」
「マヨイが完治させたから問題はない、けど大事とってしばらく安静にしてもらうことにした」
「それが良かろう」
「全く、力を過信するからこうなるのよ」

 蓮はジト目でフエを見る。

「ごめん、マジごめん」
「何でもできるが故の失敗だな、次は気をつけるといい」
「うーそうする」

 康陽も注意するように言った。

「フエを責めるな……!」

 それに怒ったのが柊だった、だが、フエは柊を抱きしめる。

「いーのいーの、責められてしゃーないの」
「だってフエは……」
「今回の件は私は自分を過信しすぎて起きた事件」
「……でも」
「何でもできるから大丈夫だろ、で異形の子等私達の大切な『花嫁』さんに怪我させたんだもの、怒られてしょうがないよ」
「『花嫁』がそんなに大切なのか?」
「本能が求めてやまないのよ、誰もが」
「柊」

 フエが話している途中に康陽が口を挟んだ。

「これはフエやマヨイ、蓮が異形の子だから起きていることだ、だから私達にはどうすることもできん」
「番いなのに⁈」
「そうだ、番いだからできない」
「康陽さん、私達の事理解してくれるのは嬉しいけど、柊さんをあんまりいじめないでね?」
「善処する、あとそれなら浮気者と呼ばれるのをどうにかしろ」
「うー……」

 康陽に言われ、フエはばつ悪そうな顔をする。

 後ほど、紅に呼び出されたフエは、自分の力を過信せず、同胞である自分達を呼ぶように叱られたそうだ──





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