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何故?~りらの疑問と人間~
しおりを挟むいつも通り人形遊びをしていたりらと銀。
そこへフエが訪れる。
「りらー?」
「なに、フエおねえちゃん?」
「悪いんだけど今日一緒に『お仕事』に出てくれる? 他の子みんな諸事情で出払っててさ」
「うん、いいよ」
りらはにこりと笑って頷いた。
「銀おにいちゃん、おるすばん、しててね?」
「……」
銀はこくりと頷いた。
「つかいまさんたちはいちぶおいていくから、えんりょなくいってね?」
「……わかった」
りらの言葉に銀は静かに答えた。
「い、いのちだけ……ひぎゃぁ⁈」
血だらけになったその場所にりらは静かにたたずんでいた。
肉片がそこら中に散らばっている。
人だったものが、肉塊に変わっている。
「りら、終わったー?」
「うん、子ども達は?」
「ばっちり保護して安全な場所に移転させた、そのあと『魔法使い⁈』ってしつこくきかれたのは大変だったよー」
「まほうつかい、くすくす、まほうつかいじゃないのにね」
「そう、ちっちゃい子って大変。後の事は零さんに任せて誘拐された子ども達は親御さんの所に帰って行ったよ」
「かえりたくないこは?」
「孤児院へ、零さんが育った孤児院へ、私達が援助している孤児院へ行くことになったそうだよ」
「親は?」
「さぁ? 今頃、ロナクとジンが肉にしてるんじゃない? 悪意がある親達は」
「そうじゃない親は?」
「さぁ、どうだろうね」
「……フエおねえちゃん」
「なぁに、りら」
「どうして、にんげんはこどもをびょうどうにあいせないのかな?」
りらはフエに問いかける。
「それは……わからないわ」
「うまれてきたこをいたぶるとかできるんだろうね?」
「うん、どうしてだろうね」
「よくわかんないよ、にんげんってたすけてていいものなの?」
「異形や悪い人を好きにさせたら銀おにいちゃんみたいな人がたくさんでるかもしれないとしても」
「それはいや!」
フエの言葉にりらは大声を上げる。
「でしょう?」
「あ……」
「だから私は人間も助けるし、殺しもするの」
「……」
「りらにはまだちょっと難しかったかな?」
「うん、むずかしい、わかんない」
「いつか分かる日がきたら、でいいのよその程度で。今は異形と悪い人を野放しにしておくと銀おにいちゃんみたいなひとがたくさん増えるっておもってればいいからね?」
「うん」
りらは頷いた。
「じゃあ、帰ろっか」
フエが手を差し出す。
「うん」
りらが手を握る。
すると、二人は姿を消した。
「誘拐事件の犯人は新興宗教の教団だった! しかし、教主以外教団員のほとんどが死亡、子ども達は別場所で保護され無事帰還……ね」
「新聞を読むのはいいが、私の事務所に来て読むのか?」
「だって、うちに新聞こないもん」
事務所の居住スペースである二階でフエと零は話をする。
「全く、警察に後は任せたがマスコミが内を嗅ぎつけそうになって大変だったんだぞ」
「あ、そのマスコミの連中いってくれる? 二度としないように仕置きするから」
「ほれ」
と写真を渡す。
「明るさ補正で見えるだろう」
「うん、有り難う」
「頼むぞ」
「オッケー!」
フエは姿を消した。
「やれやれ……」
零は疲れたように無造作に置かれた新聞を丁寧に畳んでしまった。
そしてソファーに横になった。
「無事親元に帰ったのはごく一部、ほとんどが被虐待児で孤児院行きになって、親は死亡したなんて事実新聞には書かれないのが残念だ」
そうどこか寂しげに言って目を閉じた──
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