上 下
21 / 238

異形の子等は『花嫁』を語る~もう一人のフエ~

しおりを挟む




「何で俺は零の事にノータッチさせられなきゃいけない訳⁈」
 ロナクが大声で会議室でわめく。
「お前が零と性交渉すれば零の体に傷がつくからだ」
 パソコンに何かをカタカタと打ち込みながら紅がそっけなく言う。
「ねーちゃんはどう思うよ⁈」
 首から上がない女性にロナクは声をかける。
 女性は手のひらの口から声を発した。
『私も紅姉さんと同じ意見よ、貴方は暴力的だもの』
「そんなぁねーちゃんまで!」
「ロナが言うようにお前は暴力的すぎるのだ」
 首から上がない女性──ロナの言葉に紅は同意する。
「じゃあ、フエはどうなんだよ! こいつ番いいるのに零とヤってるんだぜ!」
「んあ?」
 フエは聞いていなかったかのような反応をしめした。
「フエ姉さん、ロナクがフエ姉さんは番いいるのに零さんと性交渉してるのはどうなんだって文句つけてるけど?」
 蓮が若干呆れたようにフエにささやく。
「あー私、私は番い大事だけど、本能強いから零さんとしたくなっちゃうのはしょうがないの」
「創造の異形を食らったからなフエは、自分の親を。その結果本能が強いのだ、子どもを作らないだけまだマシだと思え」
「何だよ、俺だと子どもつくるって言いたいのか」
「そうだ」
「ちぇ、異形少女組・・・・・はずるいよなぁ、番いもってるし、零と自由にできるし、羨ましい」
「異形少女、か」
 紅がふぅと息を吐く。
「異形少女組はそれ以上成長をしない、私のように大人の姿になることはない、それが幸せかどうかはわからんが」
「……だよなぁ、エルは異形少女組じゃなかったのに、飢餓状態になって悪人食い殺しまくった結果、幼児化して異形少女組になっちまったもんなぁ」
「あの子の飢えは酷かった、どうすることもできなかった、だから今が最善と諦めるしかないのだあの子の場合」
「でもさぁ、番いのヤンデレ兄ちゃん怖すぎねぇ? 俺に人間の悪意増幅させて悪人を増やさせることはできるかとか聞いてきたんだぜ」
「後で説教だな、よく報告してくれた」
「よっしゃ」
 ロナクはガッツポーズを取る。
「フエは親を喰らった性で異形少女に、蓮はその特異体質から異形少女に、エルは飢餓から逃れようとした結果異形少女に、幸せなのはマヨイかもしれん、あの子は親の愛も知っている、そして人の善意も知っている、その上で成長ができない異形少女なのだから」
「……」
「そしてライラック──りら、だな。あの子は異形性を発露した結果異形少女になってしまった。人の悪意が原因で」
「あー人形みたいなにーちゃんといっつも人形遊びしてるもんなぁ」
「異形少女だけど、私自分が不幸だとか思ったことないからね」
 フエが反論するように言う。
「クロード見てみなよ、零さんに惚れてるのに体内に取り込みたい欲求が出るから距離置いてるじゃん」
「頼むから黙っててくれ」
 金髪碧眼の青年クロードが頭を抱えてため息をついた。
「まぁ、そういう例もあるな」
「結局私らが不幸とか幸せとかまだわかんないんだよ、いつまで続くか分からないし」
「何が?」
「零さんのこと、零さんがいつまでも生きられるか不明なんだよ。以前一回首落としたことあるし」
「あー……」
異形私たちと関わり続けるっていうのはそういう事、今までの『花嫁』は皆それを苦に自殺しちゃったけど零さんは違うから心配なのよ」
「だからレオンを派遣してるんだろう?」
「でも側に『黒き愉快犯』『黒き蹂躙者』であるニルスの野郎がいるから安心できない」
「その主人だった創造の異形食ったお前が今は主人なんだからどうにかしろよ」
「食ったけど主人としての扱いが微妙だから言ってるの!」
「──今し方レオンから連絡が来たぞ」
「何?」
 部屋の空気が硬直する。
「ニルスが寝込んでいる零を襲おうとしたとな」
 部屋の温度が一気に下がった。
「よし、乗り込んでくる」
 ドスのきいた声でフエは言うと姿を消した。

 十数分後、フエが服を不気味な色の体液で染めて戻ってきた。
「どうだった?」
「絞めてきた」
「そうか」
「殺そうと思ったら逃げられた、あの野郎逃げ足速い」
 フエが忌々しげに呟く。
「なぁ、俺が『花嫁』貰っちゃ駄目?」
「駄目」
 しつこいロナクに紅が立ち上がりげんこつを喰らわす。
「いっで!」
「げんこつですんで良かったと思え、今のフエがやっていたらお前はバラバラだぞ」
「うへぇ」
「うん、バラバラにしようと思った」
「こっわ! ねーちゃん助けて!」
 ロナクは隣にいる姉のロナに抱きつく。
『ごめんなさい、私も助けてあげられないわ』
「そんなぁ」
「レオンもクロードも欲しくてたまらないのに我慢してるの。一番安全なレオンが我慢してるんだからお前が我慢しなくてどうするのさ」
 フエが椅子にどかっと腰をかけて不満そうに言う。
「いいじゃんかーちょっと位」
「駄目」
『ロナク、あまりフエ姉さんにそう言っては駄目よ、フエ姉さんが怒ったらどうなるかわかってるでしょう?』
「ちぇー分かってるよ」
「あー今日はイライラするからちょっとあそこに行ってくる」
「あそこ?」
「ああ、あそこか」
「うん、じゃあね」
 紅だけが納得している様子で、他の者はきょとんとしていた。
 フエはその場から姿を消す。
「あそこってどこだよ」
「言葉で説明できない場所だ」

「はぁ?」

 ロナクは首をかしげ、他の異形の子等も首をかしげていた。




「はぁい、私。そっちはどう?」
『やぁ、私、こっちは決行大変』
 真っ暗な空間に、透明な仕切り、板、よく分からない壁で区切られた場所でフエと、フエ瓜二つの少女がいた。
 その少女をフエはと呼んだ。
「どんな風に?」
『ロボットとかいっぱいいるし、宇宙規模だから大変、宇宙にまで行かなきゃならないのめんどくさいー』
「とかいいつつ、楽しそうじゃない」
『わかる』
「わかるよ、だって貴方は私なんだもの!」
『そうよね!』
「時代が違うだけで、出会いも他も全部一緒って面白いわね」
『うん、面白いよ』
「そっちの零さんは無理してる」
『めっちゃ無理する』
「やっぱりねー」
 フエは「フエ」の言葉に納得した。
「じゃあ、貴方の方で起きたこと、聞かせて?」
『いいよじゃあ』

『大量の異形を作る為に人を誘拐した話をしようか』

 そう言って「フエ」はにっこりと笑った──






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

召喚術師はじめました

鈴野あや(鈴野葉桜)
恋愛
【VRSLG×乙女ゲーム ファンタジー恋愛小説】 二○七○年。時代の流れに合わせて、子供から大人まで遊ぶゲーム機も進化し、ついには夢のまた夢とまで言われていたVRMMOまでもが実現した。もちろんVRMMOだけではない。オンラインゲームが苦手な人用向けにもVRSLGというオフラインであり、一人プレイ専用のゲームも開発された。 主人公鈴もVRSLGに魅了された一人であり、一年前からVRSLGの乙女ゲームにはまっていた。 そんなある日のこと、鈴は電車にはねられた死んでしまう。 しかし目を覚めしてみれば、そこは死後の世界ではなく、はまっていた乙女ゲームの世界だった……。 ※「小説家になろう」のムーンにも掲載しております。

本物の聖女が現れてお払い箱になるはずが、婚約者の第二王子が手放してくれません

すもも
BL
神狩真は聖女として異世界に召喚されたものの、 真を召喚した張本人である第一王子に偽物として拒絶されてしまう。 聖女は王族の精力がなければ生命力が尽きてしまうため、王様の一存で第一王子の代わりに第二王子のフェリクスと婚約することになった真。 最初は真に冷たい態度を取っていたフェリクスだが、次第に態度が軟化していき心を通わせていく。 そんな矢先、本物の聖女様が現れ、偽物の聖女であるマコトは追放されるはずが── 年下拗らせ美形×お人好し不憫平凡 一部嫌われの愛され寄りです。

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

【完結】断罪エンドを回避したら王の参謀で恋人になっていました

志麻友紀
BL
「私、男ですから」 女子として育てられ、王の十三番目の愛妾としての御披露目の席で、複数の男性と関係したあげく不義の子を身籠もったと糾弾されたレティシアは、自分が男だと真っ平らな胸を見せて、人々を驚かせた。 そこで突如、起こった公爵の反乱。二十歳なのに子供の姿のままの王のロシュフォールを守って、レティシアは奮闘空しく追い詰められたが、そのロシュフォールがいきなり大人の美丈夫になって公爵を倒し、危機は脱せられた。 男の姿に戻り、王の参謀となったのはいいけれど、ロシュフォールが「愛している」と求愛してきて? ※この世界の人間には獣の耳と尻尾がついてます。 ※第二部から男性妊娠要素はいります。 ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。

もしも○○だったら~らぶえっちシリーズ

中村 心響
恋愛
もしもシリーズと題しまして、オリジナル作品の二次創作。ファンサービスで書いた"もしも、あのキャラとこのキャラがこうだったら~"など、本編では有り得ない夢の妄想短編ストーリーの総集編となっております。 ※ 作品 「男装バレてイケメンに~」 「灼熱の砂丘」 「イケメンはずんどうぽっちゃり…」 こちらの作品を先にお読みください。 各、作品のファン様へ。 こちらの作品は、ノリと悪ふざけで作者が書き散らした、らぶえっちだらけの物語りとなっております。 故に、本作品のイメージが崩れた!とか。 あのキャラにこんなことさせないで!とか。 その他諸々の苦情は一切受け付けておりません。(。ᵕᴗᵕ。)

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

[R18] 引きこもり令嬢が先生になりました。

あみにあ
恋愛
外出するのも、貴族の付き合いも苦手。 でも魔道具の研究は大好きなんだ。 だから屋敷出ず、引きこもる毎日。 母の小言はうるさいけれど、何度も聞いていれば慣れてくる。 だけどそんな私を見かねて、ある日友人に無理矢理に連れていかれた夜会。 明け方に目覚めると、私の隣には知らない男が寝息を立てていた。 なぜだかわからない、夜会での記憶はとても曖昧で……。 動揺し慌てふためく中、私はその場から逃げ出した。 王の婚約者である姉に縋り付き、抱かれた事実を両親にばれぬよう画策してもらうと、私はまた部屋へ引きこもったんだ。 トラブルにも巻き込まれることなく穏やかに過ごしていたある日、引きこもる私にしびれを切らした母から、ある選択を迫られた。 「教師になるか婚約者を作るか、選びなさい」 そして教師を選んだ彼女は家を出て働く事になった。 でもその学園は男子学園で……。 引きこもりな令嬢が恋に抗い奮闘するお話です。 表紙イラスト:玉子様(@tamagokikaku(Twitter)》 (玉子様に表紙を描いて頂きました、美しいイラストをありがとうございます!) ※107話で完結。 ※共通のお話から、複数のルートに分かれます。 ※無理矢理な性的描写がございますので、苦手な方はご注意下さい。 ※R18にはタイトルへ※印を付けております。

処理中です...