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決戦~先代の声~

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 黒炎と美咲の関係はドラゴンファングでボスである龍牙から全員に命令じみた言葉で告げられた。

『美咲は黒炎のものだが、癒やし係は今後も続ける。だがあの娘を害なす者は私と黒炎直々に処分されると思え』


「目玉欲しいーとか軽々しく言えなくなったー!」
「首が欲しいなどという冗談も言えなくなりましたね……」
「かじらせてとか言ったらどうなるんだ?」


 問題発言をしていた部下達は戦々恐々していた。
 そうでない人物達は──




「ふむ、今日も紅茶が美味いな」
「有り難うございます」

「うわーん! 今日も上司に叱られたー! 慰めて美咲ちゃーん!」
「はいはい、どうしましたか?」




 など、平穏に過ごしていた。
 そんなある日──


「美咲」
「どうしましたか、黒炎さん」
 黒炎は美咲の左手の薬指に指輪をはめた。
 透明な宝石が光っている。
「これ……」
「本来なら君と一緒に作りに見に行くのがいいのだが、君は今世界的状況を踏まえてここから出すことができない」
「……」
「だから、終わったら──」
「ストップ」
 美咲は黒炎の言葉に歯止めをかけた。
「それ以上言うと黒炎さんの場合フラグになりかねません」
「ぐ……」
「今回はドラゴンファング総出で、WGと決戦になるのでしょう?」
「ああ」
「命だけは大事に、お願いしますね」
「分かっている」
 そう言って黒炎は出て行った。
 美咲はウキウキしながら自室に戻った。


「……♪」
『次は貴方の番よ、お願い』
「‼」


 最近夢だけでなく、起きてる時まで聞こえる声。

「次って何? 私は何をすればいいの?」
『あの子をなだめて?』

 美咲にだけ聞こえる声が答える。

「あの子?」
『この星の命を、なだめて』
「は?」

 スケールがでかすぎて美咲は幻聴が幻聴である気がますますしてきた。

「いやいや、命をなだめるって……しかも星の命」
『龍牙は星の命を消そうとしているわ』
「は?」
『王牙はそれをなんとか防ぎたいみたい。でも、それが出来ない。あの子はもう龍牙に勝てない』
「王牙って……確かWGのトップの方ですよね」
『ええ』
「って事はこのままだとこの星はお終い⁈」
『そうなるわ』
「わー‼ 待ってそれはいやー‼」
『使いを出すわ、どうか終わらせて今回で。貴方が頼みの綱なのよ』
「ちょ、そうだ、なんでそんな事知ってるんですか、貴方誰ですか?」
『リフレイン、鎮めの乙女リフレイン』
「はー⁈⁈」
 美咲は素っ頓狂な声を上げた──




「黒炎、美咲をどうしたぁ⁈」
 以前出会って美咲を誘拐したようにつれて行った黒炎に鵤は問いかけた。
「彼女なら既に私の物だ」
「テメェ……‼ 美咲はテメェらなんぞにわたさねぇ‼」
「良いだろう、来い」
 黒炎と鵤の拳がぶつかり合う。

 鵤は怒りを込めて、黒炎の腹に腕に拳をぶつける。

「おらぁ‼」
「っ……やはり成長が速度が速いな、いいだろうバースト」

 黒炎が炎に包まれる、周囲が燃えさかる。

「この程度の炎、どうってことねぇ‼」

 炎の中で命がけの戦いを黒炎と鵤は繰り広げていた──




「ここに来ると思ってたぞ」
 WGのトップ王牙が、とある岬に立っていた。
 龍牙は黒い笑みを浮かべて歩み寄る。
「そうだろうとも、ここに奴が来る。リフレインの命を奪った奴が」
「それが星の命だと知ってもお前は殺すのか?」
「殺す、それで星の命が急激に短くなろうとしったことか」
「ならば儂がお前を殺さなければならなんな」
「老いぼれが俺を殺せるか?」
 その一言を最後に、二人は激突した。

 周囲の木々がその衝撃で吹き飛ばされる。
 岬の先端も破壊される。
 地形が壊れる。


 拳がぶつかり合う度に空気が振動し、周囲が震える。
 二人の戦いに怯えるかのように。


「ごは……!」
「倒れろ!」

 龍牙の拳が王牙の腹部にめり込み、王牙は血を吐いてその場に倒れた。
 龍牙は王牙を見下ろす。

「勝負あったな」
「ま、まだじゃ……」

 王牙は立ち上がろうとしたが、その場に倒れ込んだ。

 龍牙はそれを何処か哀れな目で見送ると、岬があった先を見据える。
 そこには青い蛇とも龍とも取れる生き物が居た──




「ちょっ、ドラゴンファングってこんな場所にあったのー⁈」

 癒やし部屋に穴があいたと思うと龍のような生き物が顔を出し頭を下げたので美咲は周囲が止めるのも関わらず飛び乗り、外へ出ると悲鳴じみた声を上げた。

 そうドラゴンファングは空にあったのだ。

 美咲は頭にしがみついてガクブルと震えながら、龍のような生き物が動きだすのに耐えた。

 龍のような生き物は一気にスピードを上げて目的地が何処か分かっているかの如く直進した。

「わわわー‼」

 美咲は生き物の上で悲鳴を上げながらも、空気抵抗やらそう言った物がないなと思った。


──風圧のないジェットコースターのってるみたーい──


 そう現実逃避しながらその生き物にしがみついていた──





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