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半吸血鬼の彼氏から見て
初めてのデート
しおりを挟む優しい愛撫がじれったいのに、愛おしくてたまらない。
自分が汚れた存在なのに、慈しんでくれる彼女の存在無しではもう居られない。
でも、物足りない。
優しい愛撫だけでは我慢ができない。
もっと欲しい。
君が欲しい。
「先輩そろそろ挿れますね」
「はや……く……」
かすれた声は聞くに堪えないだろう、でもそれくらい焦らされていたのだ。
だから、早く彼女が欲しかった。
「では、失礼します」
つるつるとした触手の一本が、私のナカに入ってくる。
「お゛お゛」
ゆっくりと望む場所へと入ってきてくれる感触に濁った声が出てしまう。
「あ゛、あ゛ー……!!」
前立腺を刺激されながら、奥を貫かれる感触に、気がつけば射精していた。
「もっと……」
「はい、先輩」
ねだってしまう私が見たのは優しく微笑むマナの顔だった。
それがあまりにも綺麗で、何度も何度もねだり続けてしまい──
「先輩ごめんなさい」
「いや……いいんだ、やめてくれと言わなかった私に非がある」
体力が底を尽きるまでやってもらってしまった。
ベッドにマナが運んでくれたので私は横になりながら彼女の腕を握る。
「側に……いてくれ……」
「──分かりました、側にいます」
マナは優しく微笑んで、私の顔を撫でてくれた。
すると触手が血液パックを持ってきてくれた、器用だ。
「先輩、飲めますか?」
私はそれに頷いて、少し体を起こそうとすると、マナが補助してくれた。
私は彼女に補助されながら血液を飲み干した。
「マナ……」
私は血液パックをゴミ箱に捨てて、マナに抱きついた。
「何ですか?」
「ありがとう……」
そう言ってまどろみ、私は目をつぶってしまった。
夢を見た。
マナが優しく微笑んで、私を撫でてくれる夢を。
「マナ、すまない……」
「いえ、いいんですよ先輩」
目を覚ました私は土下座してマナに謝った。
一人だけ安眠をむさぼり、彼女を放置してしまったのだから。
「先輩に無理させちゃった私が悪いんですし……」
「だが……」
マナは私の手を握って言った。
「失敗は誰にでもあるものです、次に生かしましょう?」
「……」
優しすぎて、不安になってしまった。
「もし気にしているというなら、今度私とデートをしませんか?」
「な……?! で、でーと?!」
マナの言葉に耳を疑う。
「と、言っても買い物して、カフェでのんびりとかするだけですよ。あ、それよりもおうちデートがいいですか?」
「い、いや! き、君と外で一緒に歩きたい!!」
否定した、私はマナと一緒に外を歩きたかった。
「本当ですか? いつにします?」
「明日!!」
ためらいも無く答えてしまった。
「え」
彼女は少し考え込んでから、口を開いた。
「んー……分かりました、では明日。先輩の家まで迎えに来ますね」
「え、しかし……」
「また、先輩に近づく輩が私の家に来るまで出るのは嫌なんですよ」
「わ、分かった……」
「では先輩、今日はゆっくり休んでくださいね。明日の朝十時に迎えに来ますから」
「ああ」
私はマナを見送り、部屋に一人きりになった。
「でーと……」
一人頭を抱える。
デートなんてしたことがないから分からなかった。
エスコートなんてできないから彼女に任せるしかないと。
父に相談しようかと考えたが、そうなると庶民的な彼女がドン引きしかねないコースを出しかねないので相談できなかった。
母も忙しいだろうし、相談はできない。
「……」
きゅうと寂しくなる下腹部を撫でる。
マナの存在がもう恋しくなっている自分がみっともなかった。
いつでも彼女に頼り切り、だから少しは頼らない何かができないかと悩んだけども何も無かった。
自分には、何も無いのだ。
私はため息をついてベッドに横になった。
勿論寝る前の薬を飲んで。
しかし、今日は眠れない。
眠れなかったので、追加の眠剤を服薬して漸く眠ることができた。
夢を見た。
マナと花畑で一緒に歩き回る夢を。
「──先輩?」
マナの声にはっと目を覚ます。
私は慌てて起き上がる。
「す、すまない……薬を飲んだのだが寝付けなくて……量を増やしたら……その寝ててすまない」
みっともないいいわけをしてしまう。
「いいんですよ、じゃあ先輩着替えてください」
寝間着姿のままだったのを指摘され、マナが後ろを向いた。
「わ、わかった」
私は慌てて服を着替えた。
いつものシンプルな黒い服を身につける。
すると、マナが黒い帽子を手渡し、かぶるように言ってきた。
「人避けになるかわかりませんが、ないよりはマシかもと」
「分かった、ありがとう」
「いえいえ」
マナとともに、マンションから出掛ける。
手はマナがしっかりと握ってくれていた。
それが心強かった。
「お金は大丈夫ですか?」
「一応、現金と電子、カード全部持っている」
「分かりました」
金銭面では負担が無いようにしっかり持ってきたし、確認もしたので大丈夫なはずだ。
私はマナに連れられながら、カフェに入った。
生まれて初めての経験に戸惑う。
「先輩大丈夫ですよ、吸血鬼用のメニューもありますから」
「そ、そうか」
彼女は季節限定のお茶を頼み、私はO型の血液を頼んだ。
「店員が少し驚いていたようだが……」
店員が驚いていたのが、気になった。
「朝に吸血鬼のメニューを出されたからちょっと驚いただけかと」
マナの言葉に納得する。
メニュー通りのものを持ってきてくれた。
O型の血は一番飲んでいて気が楽な血だなと思いながら飲み干した。
マナは楽しそうに私を見ている。
それだけで胸が高鳴った。
デートとはこれだけでも楽しいものなのか。
そう思った──
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