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19.王妃の恋
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「国王陛下・・・?」
そう呼ばれて、アレクセイは、心臓が飛び出すほどに驚いた。
振り返ると、ベッドの上に、クリスティーヌが身を起こし、こちらの様子をうかがっている。
何か言わなくてはと思うものの、とっさのことで、言葉が出てこなかった。
「国王陛下でいらっしゃいますの?」
重ねて、クリスティーヌが尋ねて来た。
そして、クリスティーヌは、ベッドの下に脚を降ろし、アレクセイが姿を隠す、カーテンの方へと歩みを向けた。
とっさに、アレクセイは逃げ出しかけた。
「待って・・・」
懇願するような、クリスティーヌの声音だった。
「どうして、お姿を現しては下さいませんの?わたくし、何か失礼をしましたでしょうか?わたくし・・・、陛下に嫌われているのでしょうか?」
アレクセイは、驚いた。
何故、クリスティーヌが、そのようなことを言うのかわからなかった。
近づいて来たクリスティーヌが、クリスティーヌとアレクセイを隔つ、深紅のカーテンを開けようとした。
「いけない」
とっさに、アレクセイは叫んでいた。
「開けては、いけない・・・」
きっと、お顔のことなのだろう、クリスティーヌはそう思って、カーテンから手を引いた。
しばらく、お互い、かける言葉を探す様に、沈黙が続いた。
「昨夜は・・・、すばらしい歌声だった」
先に口を開いたのは、アレクセイの方だった。
聴いてくださっていた・・・。
クリスティーヌの胸が、躍った。
「頼みがある」
「何でございましょう?」
「昨夜の歌を、もう一度、聴かせてはもらえないか?」
「今?」
「そう、今」
クリスティーヌは、一瞬、戸惑った。
けれども、直ぐに、歌いだした。
甘く、切ない調べを。
いつも、ブロンピュール宮殿の寝室でしていたように、歌いながら、そっと、窓辺に寄って、夜空に月を探した。
艶やかな月の輝きに、クリスティーヌはいつも心慰められた。
今夜、夜空に月はなく、諦めて、クリスティーヌは、アレクセイが身を隠すカーテンの方を向いて、優しく微笑んだ。
アレクセイは、カーテンの陰から、灯りに映るそのクリスティーヌの姿を、熱い眼差しで見つめた。
心酔わせるその歌声と、闇の中、ほのかに照らし出される姿が、まるで月の女神、アルテミスのようで、クリスティーヌが織りなす幻想的な世界に、惹きつけられて、目が離せなかった。
やがて、クリスティーヌは、高らかに、のびやかに声を震わせて、歌い終えた。
そうして、カーテンの前へと戻って来た。
「ありがとう・・・クリスティーヌ、素晴らしかった」
実際、アレクセイの瞳は、潤んでいた。
魂を揺さぶるような歌声に触れて、込み上げてくる感情があった。
気を取り直す様に、アレクセイは、小さく咳払いをすると、
「私は、明日から、しばらく王宮を離れる。女官たちには、よく申し渡してあるので、困ったことや希望があったら、何でも言うように」
努めて、冷静な声で、事務的に伝えた。
「おやすみ」
「待って・・・」
言い残して、立ち去ろうとするアレクセイを、呼びとめたかと思うと、クリスティーヌはとっさにカーテンの向こうに手を差し入れて、アレクセイの手を握った。
「どうか・・・、お待ちになって。どうしてこのまま、わたくしを、ひとりになさるの?」
「クリスティーヌ・・・」
クリスティーヌは、カーテンを開いた。
咄嗟に、アレクセイは顔を背けていた。
クリスティーヌは、そっとアレクセイに歩み寄って、その胸に頬を寄せた。
アレクセイは、自分が震えているのがわかった。
そして、震える指で、胸の中のクリスティーヌのブロンドに触れた。
クリスティーヌが、ゆっくり顔を上げて、アレクセイの顔を見上げ、隠す様に、顔にかかるアッシュブロンドの髪を、そっと掻きあげた。
アレクセイは、固く目を瞑った。
クリスティーヌの顔を、見ることはできなかった。
次の瞬間に起こりうる事態を想像して、恐怖に取りつかれた。
まるで、神の裁きを受けているような時間だった。
だから、自分の醜い左の頬にクリスティーヌの頬を感じた時、アレクセイは、驚いて目を開いた。
涙に濡れたクリスティーヌの顔が、目に入った。
「怖くは・・・ないのか?」
小さく、クリスティーヌは頷いた。
「この顔が・・・、怖くはないのか?」
はい、国王陛下、と、クリスティーヌが答えた途端、アレクセイは、その身体を抱きしめていた。
アレクセイの頬にも、涙が伝った。
十年に及ぶ呪縛から、解き放たれる思いだった。
アレクセイは、クリスティーヌを抱き上げると、そのままクリスティーヌのベッドに向かった。
そして、クリスティーヌを横にすると、直ぐに唇を重ねた。
アレクセイは、急いていた。
四年の間、恋い焦がれたクリスティーヌと、愉悦の時間を迎えることに、夢中になっていた。
クリスティーヌの白い寝巻の裾をたくしあげて、手を滑り込ませると、直ぐに乳房を探し当てて、味わった。
クリスティーヌは、目をつぶったまま小さな声を漏らし、アレクセイの背に腕を回した。
その切ない吐息は、アレクセイを煽った。
受け入れられているのだと思うと、一層、強く激しく高まっていった。
夢にまで見た、クリスティーヌの絹のように滑らかな肌。
それが、今、腕の中にある。
私の愛撫を受けて、悦びに、声を震わせている。
アレクセイは、込み上げる衝動を抑えることができなかった。
クリスティーヌを一糸纏わぬ姿にさせると、自分も全てを脱ぎ捨てて、夢中で、その肌の至る場所に唇を押しつけ、クリスティーヌの脚を開いた。
クリスティーヌもまた、長い間、心の奥に仕舞っていた、愛されたいという、待ち焦がれた願望が、今ようやく叶って、ためらいを越え、アレクセイを迎え入れたい一心だった。
アレクセイは、秘薬でも盛られたかのように、クリスティーヌの虜になっていた。
だから、クリスティーヌの感触を確かめることをしないまま、衝動の赴くがまま、クリスティーヌを一気に貫いた。
その途端、クリスティーヌは、絶叫した。
その悲鳴で、アレクセイは、我に返った。
咄嗟に、クリスティーヌから、身体を離した。
「あ・・・」
クリスティーヌの赤い血が、白いシーツに落ちた。
破瓜の血だった。
アレクセイは、混乱した。
一体、何故・・・。
クリスティーヌは、すぐには引かない痛みに、耐えるように、目を瞑ったまま、苦しそうな呼吸を繰り返していた。
「誰か・・・」
「待って!」
人を呼ぼうとするアレクセイを、クリスティーヌは引きとめた。
「どうか、おやめ下さい。わたくしは、大丈夫でございます・・・」
「だが・・・」
先ほどまでの昂りが、一気に冷め、当惑と、罪悪感が、一気に押し寄せていた。
アレクセイは、脱がせた寝巻で、クリスティーヌの裸身を覆った。
「何故、このようなことが・・・」
クリスティーヌには、アレクセイの疑念がよくわかった。
国王の結婚は、政治に大きな影響を及ぼした。
それ故、一国の国王と王妃ともなれば、その契りに、客観的な証明が必要となることは、当然のことだった。
つまり、初夜を、しかるべき者たちに確認されるのが、通例だった。
「そのようなことは・・・、実際のところ、どのようにでも取りつくろえるものですわ。本当に、あったかどうかは、当の本人にしかわからないことでございます」
「クリスティーヌ・・・」
「何故、夫に振り向いてもらえないのか・・・、どうすれば、愛されるのか、わたくしの何がいたらないのか、幾度も眠れない夜を過ごしました。けれども・・・、最初から、わたくしではいけなかったのです。ジャン王は、女性に興味が無かったのです。わたくし、この目で確かめました。あの方が・・・、男性と、同じベッドにいるところを」
確かに、そういった噂が、アレクセイの耳に届いたことはあった。
けれども、にわかには信じられなかった。
アレクセイにしてみれば、女神のようなクリスティーヌを妻に迎えて、何もないなどとは、考えられないことだった。
そして、ラングラン公爵も、そのようなことは一言も言わなかった。
クリスティーヌと引き換えに、支配すべき土地さえ手に入れば、あとはどうでもいいということか。
実の父に、そのような扱いを受けるクリスティーヌを、改めて哀れに思った。
クリスティーヌは今、身を震わせて、ひっそりと泣いていた。
一体、幾夜、このように孤独を募らせて、耐えて来たのだろう。
そして、アレクセイは、その時、気付いた。
クリスティーヌは、アフロディーテでも、アルテミスでもなく、王妃と言う身分を取り払えば、ただ、愛されたいと願う、美しくも孤独な娘にすぎないのだと。
アレクセイより、十六歳も年下の、純粋な娘なのだと。
アレクセイは今初めて、クリスティーヌを、幻想ではなく、生身の女として理解した。
アレクセイは、クリスティーヌの裸身に被せた寝巻を取った。
「陛下・・・」
再び、アレクセイは、クリスティーヌの肌に唇を滑らせた。
けれども、先ほどのように、性急ではなかった。
クリスティーヌのブロンドを優しく撫で、美しさを惜しみなく称え、自らの愛を伝えた。
クリスティーヌは、うっとりと眼をつむり、先ほどとは違う、アレクセイの深い労わりを含んだ愛撫に、吐息を重ねる。
口で湿り気を与えられて、急激に駆けあがって来た快感に、クリスティーヌは、思わず身をよじった。
「陛下・・・、国王陛下」
秘所にアレクセイを感じて、クリスティーヌは、夢中で、そう呼んだ。
「クリスティーヌ、アリョーシャだ・・・」
アレクセイは、自身の愛称を、クリスティーヌの耳元に囁いた。
「アリョーシャ・・・、ああ、アリョーシャ・・・!」
アレクセイを呼ぶクリスティーヌの声が、次第に、喘ぎに変わり、アレクセイの緩やかな律動で、昇りつめた。
そう呼ばれて、アレクセイは、心臓が飛び出すほどに驚いた。
振り返ると、ベッドの上に、クリスティーヌが身を起こし、こちらの様子をうかがっている。
何か言わなくてはと思うものの、とっさのことで、言葉が出てこなかった。
「国王陛下でいらっしゃいますの?」
重ねて、クリスティーヌが尋ねて来た。
そして、クリスティーヌは、ベッドの下に脚を降ろし、アレクセイが姿を隠す、カーテンの方へと歩みを向けた。
とっさに、アレクセイは逃げ出しかけた。
「待って・・・」
懇願するような、クリスティーヌの声音だった。
「どうして、お姿を現しては下さいませんの?わたくし、何か失礼をしましたでしょうか?わたくし・・・、陛下に嫌われているのでしょうか?」
アレクセイは、驚いた。
何故、クリスティーヌが、そのようなことを言うのかわからなかった。
近づいて来たクリスティーヌが、クリスティーヌとアレクセイを隔つ、深紅のカーテンを開けようとした。
「いけない」
とっさに、アレクセイは叫んでいた。
「開けては、いけない・・・」
きっと、お顔のことなのだろう、クリスティーヌはそう思って、カーテンから手を引いた。
しばらく、お互い、かける言葉を探す様に、沈黙が続いた。
「昨夜は・・・、すばらしい歌声だった」
先に口を開いたのは、アレクセイの方だった。
聴いてくださっていた・・・。
クリスティーヌの胸が、躍った。
「頼みがある」
「何でございましょう?」
「昨夜の歌を、もう一度、聴かせてはもらえないか?」
「今?」
「そう、今」
クリスティーヌは、一瞬、戸惑った。
けれども、直ぐに、歌いだした。
甘く、切ない調べを。
いつも、ブロンピュール宮殿の寝室でしていたように、歌いながら、そっと、窓辺に寄って、夜空に月を探した。
艶やかな月の輝きに、クリスティーヌはいつも心慰められた。
今夜、夜空に月はなく、諦めて、クリスティーヌは、アレクセイが身を隠すカーテンの方を向いて、優しく微笑んだ。
アレクセイは、カーテンの陰から、灯りに映るそのクリスティーヌの姿を、熱い眼差しで見つめた。
心酔わせるその歌声と、闇の中、ほのかに照らし出される姿が、まるで月の女神、アルテミスのようで、クリスティーヌが織りなす幻想的な世界に、惹きつけられて、目が離せなかった。
やがて、クリスティーヌは、高らかに、のびやかに声を震わせて、歌い終えた。
そうして、カーテンの前へと戻って来た。
「ありがとう・・・クリスティーヌ、素晴らしかった」
実際、アレクセイの瞳は、潤んでいた。
魂を揺さぶるような歌声に触れて、込み上げてくる感情があった。
気を取り直す様に、アレクセイは、小さく咳払いをすると、
「私は、明日から、しばらく王宮を離れる。女官たちには、よく申し渡してあるので、困ったことや希望があったら、何でも言うように」
努めて、冷静な声で、事務的に伝えた。
「おやすみ」
「待って・・・」
言い残して、立ち去ろうとするアレクセイを、呼びとめたかと思うと、クリスティーヌはとっさにカーテンの向こうに手を差し入れて、アレクセイの手を握った。
「どうか・・・、お待ちになって。どうしてこのまま、わたくしを、ひとりになさるの?」
「クリスティーヌ・・・」
クリスティーヌは、カーテンを開いた。
咄嗟に、アレクセイは顔を背けていた。
クリスティーヌは、そっとアレクセイに歩み寄って、その胸に頬を寄せた。
アレクセイは、自分が震えているのがわかった。
そして、震える指で、胸の中のクリスティーヌのブロンドに触れた。
クリスティーヌが、ゆっくり顔を上げて、アレクセイの顔を見上げ、隠す様に、顔にかかるアッシュブロンドの髪を、そっと掻きあげた。
アレクセイは、固く目を瞑った。
クリスティーヌの顔を、見ることはできなかった。
次の瞬間に起こりうる事態を想像して、恐怖に取りつかれた。
まるで、神の裁きを受けているような時間だった。
だから、自分の醜い左の頬にクリスティーヌの頬を感じた時、アレクセイは、驚いて目を開いた。
涙に濡れたクリスティーヌの顔が、目に入った。
「怖くは・・・ないのか?」
小さく、クリスティーヌは頷いた。
「この顔が・・・、怖くはないのか?」
はい、国王陛下、と、クリスティーヌが答えた途端、アレクセイは、その身体を抱きしめていた。
アレクセイの頬にも、涙が伝った。
十年に及ぶ呪縛から、解き放たれる思いだった。
アレクセイは、クリスティーヌを抱き上げると、そのままクリスティーヌのベッドに向かった。
そして、クリスティーヌを横にすると、直ぐに唇を重ねた。
アレクセイは、急いていた。
四年の間、恋い焦がれたクリスティーヌと、愉悦の時間を迎えることに、夢中になっていた。
クリスティーヌの白い寝巻の裾をたくしあげて、手を滑り込ませると、直ぐに乳房を探し当てて、味わった。
クリスティーヌは、目をつぶったまま小さな声を漏らし、アレクセイの背に腕を回した。
その切ない吐息は、アレクセイを煽った。
受け入れられているのだと思うと、一層、強く激しく高まっていった。
夢にまで見た、クリスティーヌの絹のように滑らかな肌。
それが、今、腕の中にある。
私の愛撫を受けて、悦びに、声を震わせている。
アレクセイは、込み上げる衝動を抑えることができなかった。
クリスティーヌを一糸纏わぬ姿にさせると、自分も全てを脱ぎ捨てて、夢中で、その肌の至る場所に唇を押しつけ、クリスティーヌの脚を開いた。
クリスティーヌもまた、長い間、心の奥に仕舞っていた、愛されたいという、待ち焦がれた願望が、今ようやく叶って、ためらいを越え、アレクセイを迎え入れたい一心だった。
アレクセイは、秘薬でも盛られたかのように、クリスティーヌの虜になっていた。
だから、クリスティーヌの感触を確かめることをしないまま、衝動の赴くがまま、クリスティーヌを一気に貫いた。
その途端、クリスティーヌは、絶叫した。
その悲鳴で、アレクセイは、我に返った。
咄嗟に、クリスティーヌから、身体を離した。
「あ・・・」
クリスティーヌの赤い血が、白いシーツに落ちた。
破瓜の血だった。
アレクセイは、混乱した。
一体、何故・・・。
クリスティーヌは、すぐには引かない痛みに、耐えるように、目を瞑ったまま、苦しそうな呼吸を繰り返していた。
「誰か・・・」
「待って!」
人を呼ぼうとするアレクセイを、クリスティーヌは引きとめた。
「どうか、おやめ下さい。わたくしは、大丈夫でございます・・・」
「だが・・・」
先ほどまでの昂りが、一気に冷め、当惑と、罪悪感が、一気に押し寄せていた。
アレクセイは、脱がせた寝巻で、クリスティーヌの裸身を覆った。
「何故、このようなことが・・・」
クリスティーヌには、アレクセイの疑念がよくわかった。
国王の結婚は、政治に大きな影響を及ぼした。
それ故、一国の国王と王妃ともなれば、その契りに、客観的な証明が必要となることは、当然のことだった。
つまり、初夜を、しかるべき者たちに確認されるのが、通例だった。
「そのようなことは・・・、実際のところ、どのようにでも取りつくろえるものですわ。本当に、あったかどうかは、当の本人にしかわからないことでございます」
「クリスティーヌ・・・」
「何故、夫に振り向いてもらえないのか・・・、どうすれば、愛されるのか、わたくしの何がいたらないのか、幾度も眠れない夜を過ごしました。けれども・・・、最初から、わたくしではいけなかったのです。ジャン王は、女性に興味が無かったのです。わたくし、この目で確かめました。あの方が・・・、男性と、同じベッドにいるところを」
確かに、そういった噂が、アレクセイの耳に届いたことはあった。
けれども、にわかには信じられなかった。
アレクセイにしてみれば、女神のようなクリスティーヌを妻に迎えて、何もないなどとは、考えられないことだった。
そして、ラングラン公爵も、そのようなことは一言も言わなかった。
クリスティーヌと引き換えに、支配すべき土地さえ手に入れば、あとはどうでもいいということか。
実の父に、そのような扱いを受けるクリスティーヌを、改めて哀れに思った。
クリスティーヌは今、身を震わせて、ひっそりと泣いていた。
一体、幾夜、このように孤独を募らせて、耐えて来たのだろう。
そして、アレクセイは、その時、気付いた。
クリスティーヌは、アフロディーテでも、アルテミスでもなく、王妃と言う身分を取り払えば、ただ、愛されたいと願う、美しくも孤独な娘にすぎないのだと。
アレクセイより、十六歳も年下の、純粋な娘なのだと。
アレクセイは今初めて、クリスティーヌを、幻想ではなく、生身の女として理解した。
アレクセイは、クリスティーヌの裸身に被せた寝巻を取った。
「陛下・・・」
再び、アレクセイは、クリスティーヌの肌に唇を滑らせた。
けれども、先ほどのように、性急ではなかった。
クリスティーヌのブロンドを優しく撫で、美しさを惜しみなく称え、自らの愛を伝えた。
クリスティーヌは、うっとりと眼をつむり、先ほどとは違う、アレクセイの深い労わりを含んだ愛撫に、吐息を重ねる。
口で湿り気を与えられて、急激に駆けあがって来た快感に、クリスティーヌは、思わず身をよじった。
「陛下・・・、国王陛下」
秘所にアレクセイを感じて、クリスティーヌは、夢中で、そう呼んだ。
「クリスティーヌ、アリョーシャだ・・・」
アレクセイは、自身の愛称を、クリスティーヌの耳元に囁いた。
「アリョーシャ・・・、ああ、アリョーシャ・・・!」
アレクセイを呼ぶクリスティーヌの声が、次第に、喘ぎに変わり、アレクセイの緩やかな律動で、昇りつめた。
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