上 下
2 / 10

見知らぬ人の優しさ

しおりを挟む

 気づくと町を歩いていたメリッサを、町の人達はジロジロ見ている。

 そんなにジロジロ見るほど私は醜いのですか……?そうよね、お母様もサマーも、私が醜いから嫌いなんだもの。

 「私なんて、生まれて来なければ良かった……。」

 最後の生きる希望さえ嘘だったのだと知り、何もかもどうでもよかった。

 「お嬢さん、顔色が良くないようですが大丈夫ですか?」

 こんな私に誰かが話しかけて来た……私になんて関わらない方が……………………

 バタッ!!

 「お嬢さん!?」

 メリッサは意識を失った。


*********************


 「………………………………ん。」

 私……どうしたんだっけ……?サマーとティナが私の悪口を……もしかしてあれは夢!?

 「気が付かれましたか?」

 男性の声……やっぱり夢じゃないか。

 「私……」

 起き上がろうとしたメリッサの肩に手が触れ、

 「まだ起きない方がいいですよ。医者の話だと、しばらく安静だそうです。何があったか覚えてますか?」

 忘れたくても覚えています。ティナの優しさが全部嘘だったこと、サマーがティナに私の事を騙すように仕組んでいた事……。そして私はあの邸を出て……

 「町を歩いていたら、意識を失いました。」

 「いきなり倒れたので、びっくりしました。気分は悪くないですか?」

 どうしてこの人は、見ず知らずの私にこんなに優しくしてくれるんだろう?
 またサマーの差し金……そんな風に疑ってしまう。

 「助けて下さり感謝します。もう大丈夫ですので、これで失礼します。」

 メリッサが起き上がろうとすると、また肩に手が触れ、

 「ダメです。安静にとさっきも言いましたよね。見ず知らずの男といるのが嫌なのでしたら、私が出ていきます。ここは宿屋ですし、何かあったら宿の者を呼んでください。数日分の宿代は払ってあるので、ゆっくり休んでください。」 

 男性はそう言うと、部屋を出ていった。

 ……私、名前も聞いてない。こんなに良くしてくれた人に失礼にも程があるな。でもごめんなさい……今は少し、眠りたい。

 メリッサは静かに目を閉じ、眠りについた。


 コンコン……

 ノックの音で目を覚ます。

 「お食事をお持ちしました。」

 ……ティナ?なんだ、やっぱり夢だったんだ。

 「……はい。」

 ドアを開けて入ってきたのは、ティナ……ではなく、見知らぬ女性だった。

 「体調はいかがですか?消化のいい食事にしたので、食べてくださいね。」

 ティナみたいに優しい言葉が、今はつらい。

 「あの……私を助けてくれた男性は、どんな方なのですか?」

 女性は少し考えると、

 「ラウル様の事ですか?私もよく知らないんです。2ヶ月ほど前からこの宿に泊まってるんですけど、何をされてる方なのかはさっぱり。」

 ラウル様というお名前なんだ……。

 「ラウル様のお部屋はどこですか?」

 「お隣ですよ。」

 ちゃんとお礼を言わなくちゃ。そう思った私は、隣の部屋のドアをノックした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

裏切られた令嬢は死を選んだ。そして……

希猫 ゆうみ
恋愛
スチュアート伯爵家の令嬢レーラは裏切られた。 幼馴染に婚約者を奪われたのだ。 レーラの17才の誕生日に、二人はキスをして、そして言った。 「一度きりの人生だから、本当に愛せる人と結婚するよ」 「ごめんねレーラ。ロバートを愛してるの」 誕生日に婚約破棄されたレーラは絶望し、生きる事を諦めてしまう。 けれど死にきれず、再び目覚めた時、新しい人生が幕を開けた。 レーラに許しを請い、縋る裏切り者たち。 心を鎖し生きて行かざるを得ないレーラの前に、一人の求婚者が現れる。 強く気高く冷酷に。 裏切り者たちが落ちぶれていく様を眺めながら、レーラは愛と幸せを手に入れていく。 ☆完結しました。ありがとうございました!☆ (ホットランキング8位ありがとうございます!(9/10、19:30現在)) (ホットランキング1位~9位~2位ありがとうございます!(9/6~9)) (ホットランキング1位!?ありがとうございます!!(9/5、13:20現在)) (ホットランキング9位ありがとうございます!(9/4、18:30現在))

有能婚約者を捨てた王子は、幼馴染との真実の愛に目覚めたらしい

マルローネ
恋愛
サンマルト王国の王子殿下のフリックは公爵令嬢のエリザに婚約破棄を言い渡した。 理由は幼馴染との「真実の愛」に目覚めたからだ。 エリザの言い分は一切聞いてもらえず、彼に誠心誠意尽くしてきた彼女は悲しんでしまう。 フリックは幼馴染のシャーリーと婚約をすることになるが、彼は今まで、どれだけエリザにサポートしてもらっていたのかを思い知ることになってしまう。一人でなんでもこなせる自信を持っていたが、地の底に落ちてしまうのだった。 一方、エリザはフリックを完璧にサポートし、その態度に感銘を受けていた第一王子殿下に求婚されることになり……。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!

ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。 幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。 婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。 王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。 しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。 貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。 遠回しに二人を注意するも‥ 「所詮あなたは他人だもの!」 「部外者がしゃしゃりでるな!」 十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。 「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」 関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが… 一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。 なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

悪役令嬢の孫だけど、今度は私が婚約破棄をして王子様に溺愛されたいと思います。

朱之ユク
恋愛
 世紀の大悪役令嬢とバカにされていた主人公のヒルラは今年で十六歳。婚約者を作って、盛大に執り行われる夜会に参加するはずになっていた。  しかし、悪役令嬢の孫という立場から彼女を婚約者とするものなどどこにもおらず、それどころか悪役令嬢の孫という理由だけで虐げてくるものばかりであった。  ある一人の男性に出会うまでは。  彼の名前はフィル・ネイビー。このネイビー王国の皇太子で、次期国王であった。  彼に出会ったことにより運命は急速に変化していく。  いじめはなくなり、婚約者も見つけ、溺愛されるシンデレラストーリーが今始まる。

茶番には付き合っていられません

わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。 婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。 これではまるで私の方が邪魔者だ。 苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。 どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。 彼が何をしたいのかさっぱり分からない。 もうこんな茶番に付き合っていられない。 そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。

【完結】全てわたしが悪者みたいに言ってますが、お義姉様だって悪女ですよね?

たろ
恋愛
正妻のクラシアナ様が産んだ娘のファーラは厳しく接する父親に心を開かない。 政略結婚で妻になったクラシアナが心が病んで亡くなった。 その原因である父親の元恋人で愛人のステラ。ティアを産み育てていたが妻が亡くなったことで後妻として迎えた。 ティアを可愛がる父親。フアーラは父親に虐げられ新しい家族とも馴染めずにいた。 ティアはそんなことも知らずに幸せに暮らしていた。 15歳までは…… 父が病床についてから全ては変わっていく。 でもティアは義姉の幸せを自分が奪ったせいだと思い耐え続ける。 虐げられるのは正妻の娘。 意地悪な後妻と義妹。そんな二人を可愛がる父親。 よくある話を目線を変えて書いてみました。 主人公は義妹。 義妹視線からの話を書いてみました。 ◆かなり辛い場面があります ◆設定は曖昧です。

処理中です...