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43、イベントは続く
しおりを挟む応接室に着くと、マーガレット様がモリアール子爵を睨み付けながらソファーに座っていた。
「お父様、皆さんがいらっしゃいました。話してください!」
私達が来るまで、待つように言われていたようだ。
「待ちなさい。ベン、お茶を頼む」
「かしこまりました」
執事は、お茶を淹れる為に応接室から出て行く。
「座ってくれ。
皆さんをこんなことに巻き込み、申し訳ない。
妻を見られたからには、私の話を聞いて欲しい」
モリアール子爵は、前にお会いした時よりもやつれていた。
執事がお茶を出し終えると、モリアール子爵は静かに口を開いた。
「妻が病にかかったのは、娘が生まれてすぐのことだった。何十人もの医者に診せたが、原因は分からなかった。日に日に肌のただれが酷くなり、陽の光が悪化させているようだった。数人の医者が、この病は伝染る可能性があると口にした為、妻を娘のそばにおくことは出来ず、日の当たらない地下室へと彼女を移した。マーガレットが大きくなるにつれ、母親を恋しがるようになって行った。私は、娘に……母親は死んだと話した。彼女の病を治せるあてもなく、毎日毎日痛みに耐える彼女を助けてやることが出来ない……
マーガレットに同じ思いをさせたくないと思う一方で、妻に会わせたい……妻に会ってやって欲しいという気持ちがあった。私の気持ちを察してか、執事がマーガレットに鍵を渡したようだ」
凄くお辛そう。愛する人が治らない病で苦しんでいるところを、ずっと見ているしかないなんて……
「少し、よろしいでしょうか?」
ずっと何かを考え込んでいたパトリック様が、急に手をあげて話し出した。
「その病、治すことが出来るかもしれません」
パトリック様の一言で、その場に居る全員が彼を見た。
「それは……本当ですか!?」
モリアール子爵は、パトリック様の方に身を乗り出し、すがるような目で見つめた。
「夫人の病が、私の妹の病と似ているようなのです。妹は幼い時に、その病にかかりました。国中の医者に診せましたが、ほとんどの医者に原因不明と言われました。ただ一人の医者を除いて。その医者が妹に薬を飲ませると、瞬く間にただれていた皮膚が回復していったのです」
パトリック様の妹、シルビア王女は後遺症もなく元気にしているとのことだ。その薬は、バスタナード王国の国境近くにある森に生えている薬草だそうだ。ここまで聞いて、思い出した。これは、ゲームのイベントだということに……
ゲームでは幽霊騒動じゃなく、一緒に薬草を隣国に採りに行って欲しいと、ヒロインがアーサー様から頼まれるイベントだった。
私は、ウィルソン様との好感度だけは高かったから、パトリック様のルートは知らないけど、薬草にはこんな意味があったのね……
隣国に行くのは、ウィルソン様、アーサー様、ジョナサン様、そしてヒロインだった。ヒロインであるローリーが居なくなっても、ゲームイベントは起こるのか……
でも、これがイベントで良かった。普通に考えたら、あんなに酷い病が薬草で治るなんてありえないと思う。都合良く、明日から学園は3ヶ月の長期休暇に入る(休みに合わせたイベントなんだろうけど)。夫人の病が良くなるなら、隣国でもどこでも行ってやる!
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