上 下
42 / 57

番外編 澤部弥生(ローリー)視点

しおりを挟む


 私の名前は、澤部弥生。
 ものすごく努力して、憧れだった大学の先輩がいる会社に入社することが出来た。彼の名前は、相田智哉。大学では、ただの後輩としてしか見てもらえなかった。後輩なんかじゃ満足出来ない。私は、相田先輩を必ず手に入れてみせる。彼に近付く女は、全て蹴落としてやるわ。

 早速、身の程知らずの女が相田先輩にアピールしていた。彼に近付く女は、絶対に許さない!

 「あんたさ、ブスなんだから男に媚び売るのやめたら? 鏡見てみなよ。その顔で、よく生きてこられたよね」

 言いなりになる女を二人仲間にして、人気のないところに女を呼び出した。泣きべそをかきながら、「ごめんなさい……」しか言わないこの女に、余計にイライラして来た。

 「ブスは泣いてもブスだな! あはははッ」

 その時、同期の佐倉が目の端に映った。佐倉は、私達に気付いてこちらに近付いてくる。

 「何をしているんですか? その人、怯えてるじゃない。虐めなんて、最低の人間がすることだと思います。そんなことをして、自分が嫌になりませんか?」

 正義の味方のつもり? この女の偽善者ぶりに、イライラがおさまらない。

 「あんたに関係ない! この女は、絶対に許さない! 身の程を教えてやらないといけないの!」

 私はイライラがおさまらないのに、佐倉は私をあわれむような目で見ていた。それが余計に腹が立つ。

 「何の騒ぎだ? 」

 「相田先輩!? な、何でもありません! 少し、お話をしていただけです!」

 イライラし過ぎて、声をかけられるまで全く気付かなかった! 佐倉のせいだ!

 「そう? それなら、いいけど。そろそろ昼休憩終わるぞ」

 良かった……怪しんではいないみたい。そのまま私達は、仕事に戻った。だけど、佐倉莉音だけは、許すつもりはない。いい子ちゃんぶって、何様なの!? 

 そしてある日、相田先輩が佐倉を好きなのだと気付いてしまった。

 どうして私じゃないの? こんなに好きなのに、なんであの女なの!? 許せない許せない許せない許せない……あの女が、許せない!!

 あの女をどうしようか考えていたら、呆気なく死んでくれた。やっぱり神様も、あの女が嫌いだったのね! これで、相田先輩は私のもの……になるはずだった。

 佐倉が死んだ後、相田先輩は会社をやめて姿を消した。私はずっと彼を探し続けた。見つけた時には、彼は病気で死んでいた。私の何がいけなかったんだろう? 彼はどうして、私じゃなく佐倉を好きになったんだろう? いくら考えても、分からなかった。その後、母の勧めでお見合いをして結婚をした。愛することは出来なかったけど、一人で生きるのは限界だった。そして、55歳で私は死んだ。


***


 死んだはずの私は、なぜか大好きなゲームのヒロインになっていた。そのゲームの攻略対象者が、相田先輩に少し似ていたから始めたけど、彼が姿を消してからは唯一の心の支えだった。

 前世の記憶を取り戻したのは入学式。今日、ウィルソン様に出会う。
 相田先輩とは違っても、似ているウィルソン様と結ばれる。私は、ヒロインになっていたことに感謝した。

 ゲームのシナリオ通り、私は生徒達に虐められていた。本当は言い返したいところだけど、我慢我慢。だって、ウィルソン様が助けてくれるから!

 「離してください!」

 シナリオ通り、ヒロインのセリフを言う。

 「準男爵令嬢ごときが、俺達に逆らう気か!?」 
 「このブスが!!」

 カチンと来たけど、ここでウィルソン様が助けに……

 「いい加減にしなさい! この学園の生徒でいる限り、生徒は皆平等なはずよ! 身分で差別するなんて、許されないわ!」

 耳を疑った。なぜ、私を助けたのが女なのか……
 そう思って顔を上げると、そこには相田先輩にそっくりの男性と、悪役令嬢ミシェルが立っていた。

 相田先輩そっくりの男性から、目が離せない。こんな奇跡みたいなことが起きるなんて……

 「カッコイイね、ミシェル。君、大丈夫だった?」

 私を気遣ってくれる相田先輩……
 顔が一気に熱くなった。

 「ありがとうございます。あの……お名前は?」

 「僕は、ウィルソン。彼女は、ミシェルだよ」

 相田先輩そっくりのウィルソン様……私の心臓が、激しく脈うつ。もう二度と会えないと思っていた、愛する人が目の前に居る。しかも、ウィルソン様は必ずヒロインである私を好きになる。やっぱり神様は、私の味方だった!!

 だけど、あの女……ミシェルが目障りね。シナリオとは違う行動をとっていた。 まさか、あの女は佐倉莉音……!? まあ、それでもいいわ。だって、悪役令嬢ミシェルはウィルソン様から婚約破棄されて破滅するんだから!

 今度こそ、相田先輩は私のものよ!

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お飾りの側妃ですね?わかりました。どうぞ私のことは放っといてください!

水川サキ
恋愛
クオーツ伯爵家の長女アクアは17歳のとき、王宮に側妃として迎えられる。 シルバークリス王国の新しい王シエルは戦闘能力がずば抜けており、戦の神(野蛮な王)と呼ばれている男。 緊張しながら迎えた謁見の日。 シエルから言われた。 「俺がお前を愛することはない」 ああ、そうですか。 結構です。 白い結婚大歓迎! 私もあなたを愛するつもりなど毛頭ありません。 私はただ王宮でひっそり楽しく過ごしたいだけなのです。

【完結】婚姻無効になったので新しい人生始めます~前世の記憶を思い出して家を出たら、愛も仕事も手に入れて幸せになりました~

Na20
恋愛
セレーナは嫁いで三年が経ってもいまだに旦那様と使用人達に受け入れられないでいた。 そんな時頭をぶつけたことで前世の記憶を思い出し、家を出ていくことを決意する。 「…そうだ、この結婚はなかったことにしよう」 ※ご都合主義、ふんわり設定です ※小説家になろう様にも掲載しています

家出した伯爵令嬢【完結済】

弓立歩
恋愛
薬学に長けた家に生まれた伯爵令嬢のカノン。病弱だった第2王子との7年の婚約の結果は何と婚約破棄だった!これまでの尽力に対して、実家も含めあまりにもつらい仕打ちにとうとうカノンは家を出る決意をする。 番外編において暴力的なシーン等もありますので一応R15が付いています 6/21完結。今後の更新は予定しておりません。また、本編は60000字と少しで柔らかい表現で出来ております

【完結】公女が死んだ、その後のこと

杜野秋人
恋愛
【第17回恋愛小説大賞 奨励賞受賞しました!】 「お母様……」 冷たく薄暗く、不潔で不快な地下の罪人牢で、彼女は独り、亡き母に語りかける。その掌の中には、ひと粒の小さな白い錠剤。 古ぼけた簡易寝台に座り、彼女はそのままゆっくりと、覚悟を決めたように横たわる。 「言いつけを、守ります」 最期にそう呟いて、彼女は震える手で錠剤を口に含み、そのまま飲み下した。 こうして、第二王子ボアネルジェスの婚約者でありカストリア公爵家の次期女公爵でもある公女オフィーリアは、獄中にて自ら命を断った。 そして彼女の死後、その影響はマケダニア王国の王宮内外の至るところで噴出した。 「ええい、公務が回らん!オフィーリアは何をやっている!?」 「殿下は何を仰せか!すでに公女は儚くなられたでしょうが!」 「くっ……、な、ならば蘇生させ」 「あれから何日経つとお思いで!?お気は確かか!」 「何故だ!何故この私が裁かれねばならん!」 「そうよ!お父様も私も何も悪くないわ!悪いのは全部お義姉さまよ!」 「…………申し開きがあるのなら、今ここではなく取り調べと裁判の場で存分に申すがよいわ。⸺連れて行け」 「まっ、待て!話を」 「嫌ぁ〜!」 「今さら何しに戻ってきたかね先々代様。わしらはもう、公女さま以外にお仕えする気も従う気もないんじゃがな?」 「なっ……貴様!領主たる儂の言うことが聞けんと」 「領主だったのは亡くなった女公さまとその娘の公女さまじゃ。あの方らはあんたと違って、わしら領民を第一に考えて下さった。あんたと違ってな!」 「くっ……!」 「なっ、譲位せよだと!?」 「本国の決定にございます。これ以上の混迷は連邦友邦にまで悪影響を与えかねないと。⸺潔く観念なさいませ。さあ、ご署名を」 「おのれ、謀りおったか!」 「…………父上が悪いのですよ。あの時止めてさえいれば、彼女は死なずに済んだのに」 ◆人が亡くなる描写、及びベッドシーンがあるのでR15で。生々しい表現は避けています。 ◆公女が亡くなってからが本番。なので最初の方、恋愛要素はほぼありません。最後はちゃんとジャンル:恋愛です。 ◆ドアマットヒロインを書こうとしたはずが。どうしてこうなった? ◆作中の演出として自死のシーンがありますが、決して推奨し助長するものではありません。早まっちゃう前に然るべき窓口に一言相談を。 ◆作者の作品は特に断りなき場合、基本的に同一の世界観に基づいています。が、他作品とリンクする予定は特にありません。本作単品でお楽しみ頂けます。 ◆この作品は小説家になろうでも公開します。 ◆24/2/17、HOTランキング女性向け1位!?1位は初ですありがとうございます!

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

大切なあのひとを失ったこと絶対許しません

にいるず
恋愛
公爵令嬢キャスリン・ダイモックは、王太子の思い人の命を脅かした罪状で、毒杯を飲んで死んだ。 はずだった。 目を開けると、いつものベッド。ここは天国?違う? あれっ、私生きかえったの?しかも若返ってる? でもどうしてこの世界にあの人はいないの?どうしてみんなあの人の事を覚えていないの? 私だけは、自分を犠牲にして助けてくれたあの人の事を忘れない。絶対に許すものか。こんな原因を作った人たちを。

もしもし、王子様が困ってますけど?〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...