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番外編 澤部弥生(ローリー)視点

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 私の名前は、澤部弥生。
 ものすごく努力して、憧れだった大学の先輩がいる会社に入社することが出来た。彼の名前は、相田智哉。大学では、ただの後輩としてしか見てもらえなかった。後輩なんかじゃ満足出来ない。私は、相田先輩を必ず手に入れてみせる。彼に近付く女は、全て蹴落としてやるわ。

 早速、身の程知らずの女が相田先輩にアピールしていた。彼に近付く女は、絶対に許さない!

 「あんたさ、ブスなんだから男に媚び売るのやめたら? 鏡見てみなよ。その顔で、よく生きてこられたよね」

 言いなりになる女を二人仲間にして、人気のないところに女を呼び出した。泣きべそをかきながら、「ごめんなさい……」しか言わないこの女に、余計にイライラして来た。

 「ブスは泣いてもブスだな! あはははッ」

 その時、同期の佐倉が目の端に映った。佐倉は、私達に気付いてこちらに近付いてくる。

 「何をしているんですか? その人、怯えてるじゃない。虐めなんて、最低の人間がすることだと思います。そんなことをして、自分が嫌になりませんか?」

 正義の味方のつもり? この女の偽善者ぶりに、イライラがおさまらない。

 「あんたに関係ない! この女は、絶対に許さない! 身の程を教えてやらないといけないの!」

 私はイライラがおさまらないのに、佐倉は私をあわれむような目で見ていた。それが余計に腹が立つ。

 「何の騒ぎだ? 」

 「相田先輩!? な、何でもありません! 少し、お話をしていただけです!」

 イライラし過ぎて、声をかけられるまで全く気付かなかった! 佐倉のせいだ!

 「そう? それなら、いいけど。そろそろ昼休憩終わるぞ」

 良かった……怪しんではいないみたい。そのまま私達は、仕事に戻った。だけど、佐倉莉音だけは、許すつもりはない。いい子ちゃんぶって、何様なの!? 

 そしてある日、相田先輩が佐倉を好きなのだと気付いてしまった。

 どうして私じゃないの? こんなに好きなのに、なんであの女なの!? 許せない許せない許せない許せない……あの女が、許せない!!

 あの女をどうしようか考えていたら、呆気なく死んでくれた。やっぱり神様も、あの女が嫌いだったのね! これで、相田先輩は私のもの……になるはずだった。

 佐倉が死んだ後、相田先輩は会社をやめて姿を消した。私はずっと彼を探し続けた。見つけた時には、彼は病気で死んでいた。私の何がいけなかったんだろう? 彼はどうして、私じゃなく佐倉を好きになったんだろう? いくら考えても、分からなかった。その後、母の勧めでお見合いをして結婚をした。愛することは出来なかったけど、一人で生きるのは限界だった。そして、55歳で私は死んだ。


***


 死んだはずの私は、なぜか大好きなゲームのヒロインになっていた。そのゲームの攻略対象者が、相田先輩に少し似ていたから始めたけど、彼が姿を消してからは唯一の心の支えだった。

 前世の記憶を取り戻したのは入学式。今日、ウィルソン様に出会う。
 相田先輩とは違っても、似ているウィルソン様と結ばれる。私は、ヒロインになっていたことに感謝した。

 ゲームのシナリオ通り、私は生徒達に虐められていた。本当は言い返したいところだけど、我慢我慢。だって、ウィルソン様が助けてくれるから!

 「離してください!」

 シナリオ通り、ヒロインのセリフを言う。

 「準男爵令嬢ごときが、俺達に逆らう気か!?」 
 「このブスが!!」

 カチンと来たけど、ここでウィルソン様が助けに……

 「いい加減にしなさい! この学園の生徒でいる限り、生徒は皆平等なはずよ! 身分で差別するなんて、許されないわ!」

 耳を疑った。なぜ、私を助けたのが女なのか……
 そう思って顔を上げると、そこには相田先輩にそっくりの男性と、悪役令嬢ミシェルが立っていた。

 相田先輩そっくりの男性から、目が離せない。こんな奇跡みたいなことが起きるなんて……

 「カッコイイね、ミシェル。君、大丈夫だった?」

 私を気遣ってくれる相田先輩……
 顔が一気に熱くなった。

 「ありがとうございます。あの……お名前は?」

 「僕は、ウィルソン。彼女は、ミシェルだよ」

 相田先輩そっくりのウィルソン様……私の心臓が、激しく脈うつ。もう二度と会えないと思っていた、愛する人が目の前に居る。しかも、ウィルソン様は必ずヒロインである私を好きになる。やっぱり神様は、私の味方だった!!

 だけど、あの女……ミシェルが目障りね。シナリオとは違う行動をとっていた。 まさか、あの女は佐倉莉音……!? まあ、それでもいいわ。だって、悪役令嬢ミシェルはウィルソン様から婚約破棄されて破滅するんだから!

 今度こそ、相田先輩は私のものよ!

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