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33、新しい友達

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 彼の表情からは、何を考えているのか読み取れない。さっきの質問は、どちらの意味なのだろう……

 「パトリック様! この学園の人達は、皆ミシェル様に騙されているのです! パトリック様は、私を信じてくださいますよね!?」

 ローリーは、ナンシー様から差し出された手を振り払って立ち上がり、パトリック様に助けを求めた。

 用済みになったからか、ナンシー様を雑に扱うローリー。初めて味方してくれた人に、なぜそんな真似が出来るのか……。
 それにしても、ローリーはどうしてパトリック様のことを知っているのだろう? 他にも、他国から来た貴族や王族の方達が居るのに、パトリック様なら信じてくれると確信しているように感じる。
 
 「お前は、誰だ?」

 誰だって……
 さっき副会長が紹介したばかりなのに、全くローリーに興味がないようだ。
 ということは、パトリック様はローリーを知らないということになる。
 
 「私は、ローリー・ダナドアです。ずっと、ミシェル様から虐めにあってきました。それを訴えても、誰も信じてくれません。パトリック様なら、公正な判断をしてくださると思ったのです!」

 目に涙を浮かべてパトリック様に訴える姿は、真実なんじゃないかと思えるほどの演技力だ。ローリーのことを知らないパトリック様なら、信じてしまうかもしれない。

 「公正な判断……ね。演技力には感心するけど、君、矛盾しているよ? ずっと虐めにあってきたのなら、裏切られたとはどういうことなんだ? ずっと虐めにあってきたのなら、ミシェル嬢が君と仲良くしていたのは、どういうことなんだ?」

 「それ……は……」

 パトリック様の返事に、ローリーは何も言い返すことが出来ず、そのまま立ち尽くしていた。

 「えー……と、エントリーナンバー8番のローリー嬢のアピールタイムは終了したようなので、投票にうつりま~す! 一番良かった方の名前を書き、ステージの前にある投票箱に入れてください!」

 ローリーに手を振り払われて倒れ込んだナンシー様と、立ち尽くしたままのローリーを無視して、副会長が先に進めた。
 出場している他の令嬢達も、二人には目もくれずに手を振ってアピールしている。

 まさか、パトリック様がローリーの嘘を見抜いてくれるなんて思わなかった。

 私はナンシー様に近付き、手を差し出した。

 「え……?」

 私の行動に、戸惑うナンシー様。

 「今までナンシー様のお気持ちも考えず、傷付けてしまい申し訳ありませんでした」

 ローリーのことは、もう許すことは出来そうにない。でも、ナンシー様は別だ。婚約者であるアーサー様も悪いし、そそのかしたローリーも悪いし、ナンシー様の気持ちを考えてあげられなかった私も悪い。

 「ミシェル様……私を、許してくださるのですか?」

 目に涙を浮かべながら、ナンシー様は私の手を取った。ローリーとは違う、純粋な涙。

 「許していただかなければならないのは、私の方です。ナンシー様、友達になっていただけませんか?」

 ナンシー様は、何度も何度も頷いた。 
 そんな私達をローリーは睨みつけ、ステージから降りて行った。

 票を集計する為に、 1時間の休憩時間が設けられた。ナンシー様と一緒にステージを降りると、ウィルソン様とアーサー様が待っていた。

 ウィルソン様の姿を見た瞬間、 彼から目が話せなくなった。

 「あの、ミシェル様? どうされたのですか?」

 ナンシー様に顔をのぞき込まれて、我に返る。

 「あ、えっと……」

 私ったら、動揺し過ぎ! 

 「ふふっ」

 なぜか、ナンシー様に笑われてしまった。

 「何?」

 「お顔が、真っ赤になっています。私はずっと、ミシェル様を誤解していたようです。実は、ミシェル様はアーサー様をそそのかしている悪女なのだと思っていました。アーサー様が突然、前とは別人のようになってしまい、ミシェル様のことだけを追いかけるようになっていたので……」

 「そう思われても、仕方ないですね。ナンシー様のお気持ちを、考えることが出来なかったのですから」

 変わったのは、アーサー様の前世の記憶が戻ったからだろう。前のアーサー様は、女好きだけど一人に固執したりはしなかった。彼は、前世の罪悪感から私を好きだと勘違いしているんだと思う。

 「ミシェル様は、ウィルソン様のことが本当にお好きなのですね」

 え……
 私って、そんなに分かりやすいの!?

 「何の話をしているんだ?」

 近付いてきたウィルソン様に、また顔が真っ赤になる。

 「な、な、なんでもありません!」

 私の慌てように、ナンシー様はクスクス笑っている。

 「ミシェル、お疲れ! やっぱり君が、一番美しかった!」

 アーサー様は、婚約者のナンシー様が隣にいるというのに、どういう神経をしているのか……
 アーサー様の顔を、思いっきり睨む。

 「アーサー様、いい加減にしてください。ナンシー様と、お友達になりました。これからは、軟派な態度はとらずに、ナンシー様だけを見てください! でないと、許しませんよ?」

 アーサー様は頭をポリポリかきながら、ナンシー様の前に立った。
 
 「ナンシー、さっきは悪かった。お前にあんなことをさせてしまったのは俺だ。だが、悪いけど俺は変わらない。好きなのはミシェルだ」

 「アーサー様!? どういう……」
 
 「ミシェル様、いいのです。アーサー様がミシェル様を好きなことは、最初から分かっていました。ですが、ミシェル様にはその気がないようですので、アーサー様が私を見てくださるまで待つことにしました!」

 そう言って、にっこりと笑ったナンシー様がとても綺麗だった。

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