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24、いつもと違うローリー

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 お昼休みに、ウィルソン様が迎えに来た。彼の顔を見た時、ちょっと嬉しいと思ってしまった。明らかに、昨日までの彼への気持ちとは違う。ただ、まだ気持ちの整理は出来ていなかった。
 単純に考えたら、今、目の前にいるウィルソン様は、前世で私が好きになった人。想いを伝えることもなく、他の人を好きだと誤解させたまま、私のせいで命を失った人。申し訳なくて、どう想いを伝えたらいいのか分からない。

 「食堂に行こうか」

 差し出された手を、素直に握る。暖かくて、どこか懐かしい。幼い頃からずっと、彼と手を繋いでいた。忘れていたミシェルの過去は、ウィルソン様との思い出でいっぱいだった。彼の記憶だけ戻らなかったのは、彼が相田さんに似ていたから、莉音の記憶が拒絶していたのかもしれない。

 「私、つい最近まで、ウィルソン様の記憶がなかったんです」

 彼に手を引かれながら、少し前を歩く彼の横顔を見て正直に話す。

 「知ってる。入学式のあの日、佐倉さんの記憶が戻ったんだよね。それと同時に、この世界のことを忘れた……ってところかな」

 時折振り返りながら、苦笑いを浮かべるウィルソン様。ミシェルとしての記憶を失った私は、彼を好きだったことまで忘れていた。それどころか、相田さんだと思ってかなり冷たく接していた。それなのに、彼は全力で愛してくれていた。

 「本当に、すみませんでした。つらい思いを、させてしまいました」

 「思い出してくれたんだから、それで十分だよ。それに、例え僕の記憶が全部消えてしまっても、僕は君を諦めるつもりはないから」

 そう言って、繋いでいない方の手で頭をポンポンされた。その時、自分の気持ちが少しだけ分かった。彼の手が触れた場所が、熱を帯びている。前世でも今でも、彼を好きみたいだ。

 食堂に着くと、ローリーはまた一人で大きなテーブルに座っていた。まだ、虐めは継続されているようだ。

 ローリーは私達が来たことに気付くと、凄い勢いで近付いて来た。

 「ミシェル様! 体調は、大丈夫なのですか!?」

 いつもと違う。なぜか、ローリーはウィルソン様をスルーして、私に話しかけて来た。今までの作戦は、上手くいかなかったからか、やり方を変えたのだろうか? いくらなんでも、露骨過ぎる。いきなり改心したなんて、悪いけど信じられそうもない。

 「……大丈夫よ。ありがとう」

 素っ気ない返事をすると、ローリーは目をキラキラさせた。

 「良かったです! 凄く凄く凄ーく、心配したんですよ! ミシェル様に何かあったら、私……」

 今度は、泣きそうな顔をしながら私の目を見つめてくる。初めて会った時に、こんな演技をされていたら、完全に信じていた。でも今は、彼女を信じたりはしない。

 「無理はしないでくださいね! 友達として、心配です!」

 あれ……? いつの間に、友達になっちゃったの?

 「ウィルソン様も、ちゃんとミシェル様を見ていてください!」

 あんなにあからさまに私を嫌っていたのに、こんな迫真の演技が出来るなんて、本当に感心する。
 ウィルソン様も呆気にとられている……と思ったら、ローリーを無視して注文をし始めた。

 「ミシェルは、何を食べる?」

 私も、気まぐれローリー劇場に付き合うのはやめて、注文することにした。

 「今日は、お魚が食べたいです」

 それにしても、なんだか不思議な気持ちだ。前世のウィルソン様は、私とは話してくれなかったけど、私以外の人には優しかった。ローリーを平然と無視するなんて、戸ヶ崎さんならしなかった。相田さんほどじゃなかったけど、戸ヶ崎さんは会社で結構人気があった。きっと本人は、気付いていないだろうな。

 「私は、お二人と仲良くなりたいです! 今度の学園祭、一緒にまわりませんか!? そうそう、バスタナードからお客様がお見えになるみたいなんです!」

 学園祭……!?
 破滅しそうになかったから、忘れていた。学園祭で、ヒロインは四人目の攻略対象と出会う。四人目の攻略対象は、隣国バスタナードの第二王子パトリック様。彼に嫌われたら、私は破滅してしまうかもしれない……


 
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