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5、自分らしく生きよう!

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 ウィルソン様に送ってもらい、邸に帰って来た。先輩とは違うことは分かっているけど、見た目が相田さんそのものな彼をどう扱ったらいいのか分からずにいる。

 彼を見送り、邸の中に入る。
 玄関を開けると、豪華な階段がど真ん中にある。高い高い天井には、大きなシャンデリア。壁には、両親と弟の肖像画。ミシェルのはない。貴族って最悪。ここが、自分の家だなんて思えない。アパートが恋しい。

 「お帰りなさいませ!」

 執事とメイド達が出迎えてくれた。毎日こんなにめんどくさいことをされるのかと思うと、憂鬱で仕方がない。とりあえず、自分の部屋と食堂の場所だけは覚えた。部屋に戻り、ベッドにダイブする。

 疲れた……

 令嬢やるのも、楽じゃない。ミシェルは、使用人達にどう接していたんだろう?
 待って……ミシェルはすでに嫌われてるんだから、私が今までと違う行動をとってもマイナスにはならないんじゃ? そっか! それなら、私の好きにしていいんだ!
 ミシェルになる必要なんかない。今は、私がミシェルなんだから、私らしく行動すればいい。両親にも好かれていないんだから、令嬢を演じる必要もない! そう考えたら、なんだか楽しくなって来た。
 
 ベッドから起き上がり、最初にしたことは、くっさい香水を捨てること。別に、香水が嫌いなわけじゃないけど、ここにある香水は匂いがキツくて好きじゃない。服は可愛い服が並んでいるけど、宝石類は好みじゃない。もう少し、可愛らしい方が好きだな。てことで、引き出しに全部しまっておこう。

 部屋に居ても暇だし、庭園に行ってみようかな。そう思って、制服から私服に着替えて部屋を出て右に行く。

 ……私は右しか知らんのか!

 自分にツッコミを入れて、回れ右をして部屋から出て左に歩き出す。迷子になっても構わない。いつまでも、邸で迷子になるわけにはいかないし、探検するのもなんだかワクワクする。
 左に進んで来たのはいいけど、長い廊下が続いている。ドアはいくつか見たから、何部屋かは通過した。やっと曲がり角を見つけて曲がると、また長い廊下が続いている。またかと思ったけど、今度は片側が窓になっていて、綺麗に整えられた庭園が見える。今朝は、反対側から庭園に出たようだから、右に行っても左に行っても、グルっと一周するだけだったようだ。
 二階は明日探索するとして、今日はこの美しい花々に癒されよう。
 大きな窓を開けて外に出る。大きく深呼吸をすると、花の香りが漂って来て幸せな気分になった。
 
 庭園を歩いていると、庭を手入れしている男性の使用人が居た。この人が毎日手入れしているから、この庭園はこんなにも美しいんだ。

 「ご苦労様」

 使用人に声をかけると、物凄く驚いた顔をされた。

 「ミシェル様!? どうされたのですか!?」

 普通に労っただけで、こんなに驚かれるミシェルって……

 「いつも、こんなに綺麗に手入れしてくれているから、声をかけたんだけどダメだった?」

 「い、いえいえ! ミシェル様に、そんな風に仰っていただけて嬉しいです!」

 この感じは、嫌われているわけではなさそう。

 「私も、やってみたい!」

 思い切って、お願いしてみた。
 戸惑ってはいるみたいだけど、嫌な顔はしていないから、花壇の前にしゃがんで雑草を抜き始めた。

 「ミ、ミシェル様!? お召し物が、汚れてしまいます!」

 慌てた様子の使用人を尻目に、雑草を抜きまくる。服が汚れても構わない。部屋着感覚で、あんまり好きじゃない服を着てきたのだ。

 「平気平気! 私に気をつかわないで。お父様もお母様も、私が何をしていても気にしないから、叱られたりしないし」

 まさか、娘に無関心な両親で良かっただなんて思ってしまうなんて、考えもしなかった。

 「そんなことは……」

 ……やっぱり、無関心なんだ。素直な人だな。

 「ねえ、あなたの名前は?」

 ミシェルなら、使用人の名前を覚えていなくても不思議じゃないから、聞いても大丈夫……だよね?

 「ザックです」

 「ザックは、花が好き?」

 「大好きです!」

 そうだと思った。好きじゃなかったら、こんなに綺麗に手入れすることは出来ないと思う。

 「私も好きなの。だから、一緒に綺麗にさせて?」

 ザックは、なぜか私の顔をじっと見てコクンと頷いた。その後は、ザックが掃き掃除をして、私はそのまま草取りを夕食の時間までしていた。

 「お嬢様!? 何をなさっているのですか!?」

 夕食の時間だと知らせる為に、メイドが私を探しに来たようだ。

 「雑草を抜いているの。体を動かすのって、気持ちがいいわね」

 伸びをしながら立ち上がる。

 「お嬢様が、そのようなことをなさる必要はありません! ザックも、どういうつもりなの!?」

 使用人はみんな、私の目なんて見ようともしなかったのに、このメイドだけは私の目を真っ直ぐ見つめている。しかも、叱ってくれた。嬉しくなって、笑ってしまった。

 「笑い事ではありません! お部屋に戻って、着替えてください!」

 この邸で、初めて私を叱ってくれたメイドの名前は、セシリーだそうだ(ザックに聞いた)。セシリーに怒られながら、着替えをすませて食堂に向かった。

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