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34、決意
しおりを挟む初めての2人きりの夜を過ごしてから、ジュードとの距離が更に近付いたような気がする。
結婚した時にはレニーとティアが居て、夫婦というより家族として暮らして来た。それも幸せだったけど、ジュードと一緒にいる時のドキドキも心地好くて幸せ。
8日でヒルダの国境に到着した。ジュードのスピードも私に合わせているからか、早くなっていた。ヒルダは王都が5つの町で囲まれている。つまり、町が6つしかない小さな国だ。
結婚式が行われる王都まで、私達なら1日で行くことが出来る。
「早く着きすぎちゃったかな」
国境の町に入ると、辺りを見渡しながら休めそうな店を探す。王都よりもここの方が情報を集めるにはいいと思ったからだ。
「サンドラが早すぎるからだ。ゆっくり新婚旅行を楽しみたかったのに」
いじけた顔をするジュード。
ジュードの方が女の子みたい。だけど、そんな風に思ってくれて嬉しい。
「帰りは、ゆっくり帰ろう」
「よく言うよ。帰りは、レニー達に早く会いたいって、サンドラは全速力で帰ると思う」
それは、否定出来ない……
レニーとティアと離れているのは、やっぱり寂しい。
「さあ! あのお店で食事をしよう!」
誤魔化すようにジュードの腕を掴んでお店に入る。
店に入ると注文をし、これからのことを話し合う。
「今日はこの町に泊まろう」
「そうだね。あまり早く王都に入っても、監視されそうだし、少しでも情報は集めたい」
招待状を見る限り、アンナの結婚相手はヒルダの伯爵らしい。
この国に入った時、結婚式が行われることは大々的に発表されていて、国民までも参加出来る結婚式だと知った。伯爵の結婚式なのに、随分大事になっている。
「俺も結婚式行きたかったな~」
「俺もだよ。バーク伯爵のお相手は、ヒルダの王族の妹なんだってな」
隣の席についた男性2人が、アンナの結婚式のことを話し出した。私達は何気ない顔をしながら食事をし、隣の席の話に聞き耳を立てる。
「元王族が、生き残っていたとはな。ロックダムのヤツら、この国の王族を皆殺しにしやがって!」
「ロックダムは、壊滅したらしいな。自業自得だ」
国民は、この国の貴族がロックダムに手を貸したことを知らないんだ……
「アンナ様のおかげで、この国に聖女が来るという話だし、また魔物に怯えなくてすむ日が来るんだな」
アンナは、私がこの国に戻ることでも約束したんだろうか……
「勝手だな」
ジュードは話をしていた2人の男性を睨みつけた。
「ジュード!?」
見つかったら困ると思って、立ち上がって男性達の元に行こうとしているジュードを必死に止める。
「……行こう」
思いとどまってくれたのか、そのままお店を出て行ったジュードを追いかける。
店の外に出ると、ジュードは私に頭を下げた。
「ごめん!」
私の為に怒ってくれたのに、謝る必要なんてない。ジュードの手を握り、笑顔を向けた。
「嬉しかった。でも、私は大丈夫。この国は、私が終わらせる」
国民が悪くないことは分かった。
だけど、この国はもう国として存在してはいけない。聖女がいないと終わってしまう国なら、また聖女を求めて悲劇が繰り返されてもおかしくない。
私はこの国で生まれたわけではないし、この国に関わって生きて来たわけでもない。それでも、この国の王族としてやらなければならない。
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