上 下
4 / 11

デルダン王子の怒り

しおりを挟む

 「縁談を持ちかけてきたのはそちらなのに、なぜそんなにお怒りに??」

 「私が縁談を申し込んだのは、クーバー公爵の長女ティナのはずだが?」

 「ですからティナは、すでに嫁いでしまったのです。姉のティナよりも、妹のイライザの方が美しいのに、なぜお怒りになっているのか分かりません。」

 「それが理由だと言うのだな? ティナが嫁いだのは数日前という話ではないか。しかも急遽決まったとか……。私がティナを指名したのに、なぜ男爵になど嫁がせたのだ? 貴様らは私を愚弄する気か!?」

 「愚弄するなどとんでもない! イライザがいるではありませんか!」

 「イライザなどどうでもよい! 私の妻に相応しいのは、王族の血を引くティナだ! なぜこの私が、お前の後妻の連れ子などと婚約せねばならんのだ!? この私を愚弄したのだから覚悟しておくんだな!!」

 王子が欲しかったのは、王族の血を引くティナだけだった。ティナを急いで嫁がせたクーバー公爵を、デルダン王子は許すことは出来ず、そのままデイモン王へと抗議しにサチアーナ城へと向かった。

 「お義父様! これはどういう事ですか!? どうして私があんなに侮辱されなくてはならないのですか!?」

 「そうよ! 私のイライザを侮辱するなんて、あんな王子に嫁がなくて良かったわ! 旦那様、ちゃんと隣国に抗議してくださいますよね!?」

 「うるさい!! お前達は黙っていろ!! クソっ!お前達のせいで私はもう終わりだ……」

 隣国ブレディントは、この国サチアーナよりも大国だった。その大国の次期国王であるデルダン王子に覚悟しておけと言われた事で、クーバー公爵は取り返しのつかないことをしてしまったのだと気づいた。
 クーバー公爵が容姿の優越で女性を選ぶのと同じように、デルダン王子は血統で女性を選んでいた。
 サチアーナには年頃の王族はティナしかいなかった。そのティナはすでに婚姻をしてしまったのだから、デルダン王子が激怒するのも無理はない。



 「デイモン王の弟である、セルドア・クーバーの爵位を剥奪し、国を追放していただきたい!」

 抗議をしにサチアーナ城を訪れたデルダン王子は、デイモン王にクーバー公爵を追放するよう言った。

 「それは一体……」

 挨拶もなしに、いきなり弟を追放して欲しいと言われたデイモン王は困惑していた。

 「あの者は私を愚弄し、あろう事か後妻の連れ子などを私と婚約させようと企てたのです! 絶対に許す事は出来ません! 聞き入れていただけないのでしたら、分かっていますよね?」

 デルダン王子の申し出を受け入れない選択肢などない。もしも拒絶したならば、サチアーナはブレディントに侵略されるであろう。

 「……分かった。我が弟セルドア・クーバーの爵位を剥奪し、国外追放とする!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

妹に一度殺された。明日結婚するはずの死に戻り公爵令嬢は、もう二度と死にたくない。

たかたちひろ【令嬢節約ごはん23日発売】
恋愛
婚約者アルフレッドとの結婚を明日に控えた、公爵令嬢のバレッタ。 しかしその夜、無惨にも殺害されてしまう。 それを指示したのは、妹であるエライザであった。 姉が幸せになることを憎んだのだ。 容姿が整っていることから皆や父に気に入られてきた妹と、 顔が醜いことから蔑まされてきた自分。 やっとそのしがらみから逃れられる、そう思った矢先の突然の死だった。 しかし、バレッタは甦る。死に戻りにより、殺される数時間前へと時間を遡ったのだ。 幸せな結婚式を迎えるため、己のこれまでを精算するため、バレッタは妹、協力者である父を捕まえ処罰するべく動き出す。 もう二度と死なない。 そう、心に決めて。

完結 王子は貞操観念の無い妹君を溺愛してます

音爽(ネソウ)
恋愛
妹至上主義のシスコン王子、周囲に諌言されるが耳をを貸さない。 調子に乗る王女は王子に婚約者リリジュアについて大嘘を吹き込む。ほんの悪戯のつもりが王子は信じ込み婚約を破棄すると宣言する。 裏切ったおぼえがないと令嬢は反論した。しかし、その嘘を真実にしようと言い出す者が現れて「私と婚約してバカ王子を捨てないか?」 なんとその人物は隣国のフリードベル・インパジオ王太子だった。毒親にも見放されていたリリジュアはその提案に喜ぶ。だが王太子は我儘王女の想い人だった為に王女は激怒する。 後悔した王女は再び兄の婚約者へ戻すために画策するが肝心の兄テスタシモンが受け入れない。

妹に人生を狂わされた代わりに、ハイスペックな夫が出来ました

コトミ
恋愛
子爵令嬢のソフィアは成人する直前に婚約者に浮気をされ婚約破棄を告げられた。そしてその婚約者を奪ったのはソフィアの妹であるミアだった。ミアや周りの人間に散々に罵倒され、元婚約者にビンタまでされ、何も考えられなくなったソフィアは屋敷から逃げ出した。すぐに追いつかれて屋敷に連れ戻されると覚悟していたソフィアは一人の青年に助けられ、屋敷で一晩を過ごす。その後にその青年と…

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

(完結)妹に病にかかった婚約者をおしつけられました。

青空一夏
恋愛
フランソワーズは母親から理不尽な扱いを受けていた。それは美しいのに醜いと言われ続けられたこと。学園にも通わせてもらえなかったこと。妹ベッツィーを常に優先され、差別されたことだ。 父親はそれを黙認し、兄は人懐っこいベッツィーを可愛がる。フランソワーズは完全に、自分には価値がないと思い込んだ。 妹に婚約者ができた。それは公爵家の嫡男マクシミリアンで、ダイヤモンド鉱山を所有する大金持ちだった。彼は美しい少年だったが、病の為に目はくぼみガリガリに痩せ見る影もない。 そんなマクシミリアンを疎んじたベッツィーはフランソワーズに提案した。 「ねぇ、お姉様! お姉様にはちょうど婚約者がいないわね? マクシミリアン様を譲ってあげるわよ。ね、妹からのプレゼントよ。受け取ってちょうだい」 これはすっかり自信をなくした、実はとても綺麗なヒロインが幸せを掴む物語。異世界。現代的表現ありの現代的商品や機器などでてくる場合あり。貴族世界。全く史実に沿った物語ではありません。 6/23 5:56時点でhot1位になりました。お読みくださった方々のお陰です。ありがとうございます。✨

お姉様、わたくしの代わりに謝っておいて下さる?と言われました

来住野つかさ
恋愛
「お姉様、悪いのだけど次の夜会でちょっと皆様に謝って下さる?」 突然妹のマリオンがおかしなことを言ってきました。わたくしはマーゴット・アドラム。男爵家の長女です。先日妹がわたくしの婚約者であったチャールズ・ サックウィル子爵令息と恋に落ちたために、婚約者の変更をしたばかり。それで社交界に悪い噂が流れているので代わりに謝ってきて欲しいというのです。意味が分かりませんが、マリオンに押し切られて参加させられた夜会で出会ったジェレミー・オルグレン伯爵令息に、「僕にも謝って欲しい」と言われました。――わたくし、皆様にそんなに悪い事しましたか? 謝るにしても理由を教えて下さいませ!

そんなあなたには愛想が尽きました

ララ
恋愛
愛する人は私を裏切り、別の女性を体を重ねました。 そんなあなたには愛想が尽きました。

処理中です...