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魔王に再会しました。

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 アーロン王子が去った後も、戦いは続いていた。

 ガンッ!ガンッ!ガンッ!

 「はぁはぁ…はぁはぁ…」

 エヴァンはもう限界だった。

 「エヴァンじいさん、大丈夫か?はぁはぁ…かっこよくアーロン王子を送り出したんだから、負けんじゃねーぞ!」

 ザザザザザザバッ!!

 「おぬしこそ…はぁはぁ…わしより先にくたばるなよ!はぁはぁ…」

 倒しても倒しても減らない魔物達…
 兵士達も限界を迎えていた…

 「死ねーー!!人間共!!」

 ズザザザザザザザザッ!!
 
 斧を振り回したオークによって、次々兵士達が倒れて行く!

 そして…

 ザババッ!!
 
 「…っ!!」

 鎧騎士の槍の一撃で、エヴァンは崩れ落ちた。

 「エヴァンじいさん!!くそーーーーッ!!」

 剣を振り上げ、鎧騎士に飛びかかる兵士…

 ズバッッッ!!

 兵士は鎧騎士の槍に貫かれ、命の火が消えた…

 …………アーロン王子と共に来た兵士達とエヴァンは、全滅した。
 


 リローナの祈りは丸一日経っても続いている。
 天高くほとばしる光は、次第にヒダリヤを包み始めた。

 「何をしておるのだ?」

 その声の主は、魔王センキ。
 センキはゆっくりと、リローナへ近づいて行く。

 「やはり、あの時の魔人…センキ…あなたが魔王だったのですね。」

 近づいて来るセンキに臆することなく、リローナは祈り続ける。

 「…おまえは、リローナ!?」

 見た目がどんなに変わっていても、センキの目には、あの時の面影が見えた。

 「私の本当の名はアリア。私をお探しなのですよね?」
 
 「おまえがアリアだったとはな…。ふははははははっ。」

 センキは大声で笑いだした。

 「一番殺したかったアリアが、唯一殺したくないと思ったおまえだったとはな。くくくっ。」

 「私を…殺すのですか?」

 「殺すつもりでここに来た。だが、おまえは私を殺すつもりなど、最初からなかったのだろう?」

 センキの言う通り、リローナはセンキを殺すつもりなどなかった。

 「あなたのしたことは許せません。ですが、全て私のせいなのです。あの時あなたは、私を殺さなかった。残酷無慈悲な魔王ではないと感じました。あなたの優しさを信じます。」

 リローナは、センキに向かって笑顔を見せた。
 その笑顔は、センキがまた見たかった笑顔だった。

 「その光は、おまえの魔力全てだろう?その光を出し尽くした時…おまえは…」

 「かまいません。例え死が待っていたとしても…」


 
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