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番外編 大好きな親友 エイリーン視点

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 私は今、牢獄に捕らえられている。けれど、どこかホッとしていた。

 あの日、サンドラ様が突然邸にやって来た。
 用件は、モニカを殺せと命じる為。
 モニカは、何も悪くないと分かっている。けれど、私に選択肢なんかなかった。
 お父様が作った借金は膨れ上がり、ドレスも宝石も全て持っていかれ、邸が奪われるのも時間の問題だった。

 「お前だけが、頼りなんだ! 何としても、バーディ侯爵から金を借りてくれ!」

 お父様は口癖のように、毎日同じことを言っていた。モニカに近付いたのは、お金の為。けれど、いつしか彼女が大好きになっていた。そんな時間も、ルーファス様にモニカが婚約を破棄されたことで終わってしまった。

 サンドラ様は涙を流しながら、モニカに突き飛ばされたと言っていた。それが嘘だということは、分かっていた。あのモニカが、そんなことをするはずがない。でも私は、サンドラ様を選んだ。そうするしか、道がないと思っていたからだ。モニカを嫌いになる為には、彼女から嫌われる必要があった。彼女は、優し過ぎる。私が迷いを見せたら、きっと私を心配する。私に必要なのは、親友なんかじゃない。とことん悪を演じて、サンドラ様に認めてもらわなければと思っていた……それが、全て間違いだったのだと、モニカからの手紙で知った。

 モニカは、すでに侯爵だった。
 サンドラ様が、侯爵家を継ぐことなど最初からありえなかった。そんなことも知らずに、バカみたいにサンドラ様に尽くしていたなんて笑えてくる。それに、両親にも捨てられてしまった。これは、モニカを裏切った報いね。
 モニカはもう……許してくれないだろうな。彼女と過ごした学園生活だけが、私の人生で唯一幸せな時間だった。幼い頃から、お父様は多額の借金をしていた。お母様は浪費癖があり、借金は更に膨れ上がって行った。それでも、私にとっては家族だった。それさえ失ってしまった私には、もう何もない。

 モニカに……会いたい……けれど、会わないと決めた。会えばきっと、モニカを苦しめてしまう。最後くらい、親友として終わりたい。

 サンドラ様に命令されたことを、手紙に残した。この手紙が届く頃には、私はこの世には居ない。
 死罪にして欲しいと、自ら申し出た。実行犯の私が死罪になれば、それを命令したサンドラ様の罪も重くなると考えた。
 私のことは自業自得だけれど、サンドラ様も相応の罪を償うべきだ。

 牢の鍵が開けられ、兵が毒を持って入って来た。私はこの牢獄で、毒を飲んで死ぬ。不思議と、怖くはない。私の死が、少しでもモニカの役に立てるのが嬉しいとさえ思えてくる。

 私の人生はここで終わるけれど、モニカの幸せを願ってる。本当に、私はバカだ。こんなにも、彼女を大切だと思っていたのに、苦しめることしか出来なかったなんて……

 毒を受け取り、一気に飲み干す。

 喉が……焼けるように熱い……
 
 「……モニカ……私と……ともだ……ちにな……ってくれ……て……ありが……と………………」

 消え行く意識の中で、モニカの笑顔が見えた気がした。幻でも構わない。最後に、あなたの笑顔が見られて良かった……

 
 エイリーンの死に顔は、満足したように微笑んでいた。

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