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やり直し

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 「これより、サンドラ・バークの刑を執行する!」

 処刑場の絞首台の上で首に縄を巻き付けられ、大勢の人の前に立たされているサンドラは、妹を殺そうとした罪で有罪となり、処刑される事となった。
 サンドラの元婚約者だったアンドレは、まるで汚いものを見るような目で見ている。その隣にいるのは、妹のカレン。
 サンドラの婚約者を奪い、それだけでは飽き足らず、サンドラを貶めた。


 私はサンドラ・バーク。16歳。バーク侯爵の長女です。私には二つ下の妹、カレンがいるのですが、お父様もお母様も、カレンの事ばかりを可愛がっていました。
 こんな状況にならなければ、カレンがして来た事に気付きもしなかった。カレンは純真なフリをして、周りを騙す悪女です。

 
 もっと早く、カレンの本性に気付いていたら、こんな事にはならなかったのでしょうか……
 私は罪など犯してはいません。それなのに、絞首台の上で処刑されるのを待っている。
 どこで間違えてしまったのでしょう……もう一度、やり直したい……

 ガタンッ

 絞首台の床が開き、縄を首に巻かれたまま落下する。

 くる……し……た……すけ……て……

 縄が首を締め付け、息が出来ない!!

 最後に見たのは、カレンが笑った顔でした。
 そして、意識を失った。

 

 コンコン……
 「お嬢様、朝食の用意が出来ております。旦那様も奥様も、既にお待ちになっておりますので、お急ぎになってください。」

 …………………………え? 何これ!?
 えええ!? えええぇぇぇぇ!!!
 これはいったい、どういう事なの!?
 私……生きているの!?
 それともここが、天国なの?
 状況が全く分かりません……

 死んだはずのサンドラは、自室のベッドの上に横たわっていた。

 コンコン……
 「お嬢様? いらっしゃらないのですか?」

 この声は、ポーラね。
 とりあえず、返事をしてみましょう。

 「すぐに行くわ。」

 「かしこまりました。その様にお伝えします。」

 会話が成立した。
 という事は、幽霊とかではなさそうね。
 あれ? 私、少し小さくなっていない?
 特に胸の辺りが……

 ベッドを下り、鏡で自分の姿を見てみると……
 少し、幼くなっているような??
 とりあえず、着替えて食堂に行ってみましょう。

 食堂へ行くと、お父様とお母様、そしてカレンが既に席に着いていました。

 「遅いじゃない! お父様を待たせるなんて、何様なの!?」

 お母様は私の顔を見るなり、鬼のような顔で怒鳴りつけてきました。

 「申し訳ありません……」

 「朝から怒鳴るな。
 カレンは優しい子だから、お前を待ちたいと言ったんだ。お前など待たずに、先に食べてしまえばよかった。」

 これは……覚えています。
 この日は私の15歳の誕生日でした。
 この時は私も、カレンが優しい子だと思っていました。誕生日を覚えていてくれたから、家族一緒に食事をと思ってくれていたのだと……
 でも今思えば、この日を最悪な日にしたのはカレンでした。

 今、分かりました。
 過去に戻り、私は人生のやり直しをしているのですね。
 
 この後、カレンはとんでもない事を言い出します。

 「お父様、お母様、お願いがあります。私……アンドレ様と結婚したいです。」
 
 そう、これを言うために、私が来るのを待っていた。

 「あら、アンドレはサンドラの婚約者だったわね。」

 「カレンはアンドレを気に入ったのか?」

 姉の婚約者と結婚したいと言い出した妹を叱ることもしなかった。

 「アンドレ様を、好きになってしまいました。」

 頬を赤く染めるカレン。

 アンドレ様を好きだなんて、嘘なのは知っています。

 だけど、お父様は……

 「サンドラ、お前の婚約者をカレンに譲りなさい。」

 この人は本当に私の親なのでしょうか?
 あの時お父様に譲れと言われ、私は断った。
 でも今は違う。

 「ええ、よろしいですよ。カレンに譲ります。」

 笑顔でそう言ってやりました。

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