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英雄と聖女

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 「リーア、すまない。君に負担をかけてしまった。」

 ホーク王子は申し訳なさそうに、そして愛おしそうに眠っているリーアの頭を撫でた。リーアはその日、目を覚ますことはなかった。

 翌日

 「王子様!魔物の群れがこちらへ向かっております!」

 寝ずにリーアのそばを離れなかったホーク王子の元に、見張りをしていた兵が報告にやって来た!

 「来たか……」

 「王子様……聖女様が目覚めるまでの間の時間稼ぎをし、また聖女様に殲滅していただく事を繰り返していては、キリがないかと……。」

 「分かっている。これ以上リーアに負担をかけたくないのだが、どうしたらいいのだろうか……。」

 「……ホーク王子、私は大丈夫です。それに、あと6日の辛抱です。」

 「リーア!目を覚ましたのか!……あと6日とは?」

 「王都を出る時に、マリヤ様と話しました。マリヤ様が国全土に結界を張ってくださいます。結界を張り終えるまで、10日の月日が必要なのです。だからあと6日耐えしのぎ、残った魔物を殲滅することが出来れば、この国は救われます!」

 「そうか……マリヤなら必ずやってくれるだろう。リーアは今日は俺達に任せて休んでいなさい。」

 「でも……」

 「でもじゃない。君が強いのは知っているが、少しは守らせて欲しい。」

 ホーク王子の気持ちがとても嬉しかった。

 「……はい。」

 「よし!聞いたな?あと6日だ!気合いを入れろ!」

 「はっ!」

 結界の話を聞いた兵士達は、先が見えた事に歓喜した。だが、リーアが戦わない事で、戦況は思わしくなかった。兵士達は疲弊し、次々に倒れて行く。結界に守られ平和だった国であったことが、兵士達の衰退を招いていたのだ。
 ただ1人、リーアを守るためにずっと鍛錬して来たホーク王子は、体力の限界を迎え戦えなくなった兵士達を守りながら戦っていた。

 今日は任せると、ホーク王子と約束したリーアだったが、宿屋の窓から見えた光景に不安を募らせていた。
 
 このままじゃもたない……ホーク王子1人であの数を相手にするのはムリだ!でも私の力はまだ回復していないから、昨日みたいなことは出来ない。少しの力で出来ることを考えるんだ!

 …………………………やってみよう!

 リーアは宿屋から出て、ホーク王子達の元へ急いで向かい、祈りを捧げだした!
 リーアの体から光が放たれ、ホーク王子と兵士達を包み込んだ!

 「これは……!?」
 「すごい!みるみるうちに体力が回復して行く!」
 「うおーーー!!まだまだ戦えるぞ!」

 戦えなくなっていた兵士達の体力が回復して行った!

 「リーア!ムリをするな!」

 「大丈夫です!体力を回復しているだけで、傷を治すことまでは出来ませんが、これなら一日中でもあまり力を使わずに出来そうです!」

 リーアは戦いの場で目を見張るほどに成長していた。

 「疲れたら休むんだぞ!」

 「はい!ホーク王子こそ、疲れたら休んでください!ムリをし過ぎですよ!」

 逆に心配されたことで、ホーク王子は苦笑いを浮かべた。

 ホーク王子と兵士達、そしてリーアの働きで、無事に一日が終わろうとしていた。残り5日耐えしのぎ、国へと侵入して来た魔物全てを殲滅しなければいけない。だがそれは不可能に近かった。
 魔物は次々に侵入して来て、昼夜問わず襲ってくる。休んでる暇などない現状で、寝ずに戦うなどムリな話だ。

 どうしたらいいのだろう……このままでは私達は全滅してしまう。
 ……待って!どうして魔物が現れるのは東方だけなの!?もしかして……!?


 
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