上 下
11 / 23

大好きなお姉ちゃん

しおりを挟む

 ホーク王子と再会してから数週間が経っていた。授業は順調に進み、リーアの癒しの力はみるみる上達して行った。

 「やっぱりすごいな。癒しの力は私よりも上手く使えるようになった。元々の力が私よりも遥かに強いから、今のあんたならお姉さんの病を治すことが出来るかもしれない。」

 「ほ、本当ですか!?」

 やっと……やっとお姉ちゃんを救える!

 「先生……ありがとうございます!」

 授業が終わった後、マーサの元へ向かった。


**********************


 「またリーアは森に出かけたの!?あれほど森には行くなと言ったのに!」

 リーアはよく森に出かけては、母から叱られていた。

 「お母さん、もういいじゃない。リーアだって反省してるし、森の奥に行っちゃ行けないことくらい分かってるわ。」

 お母さんから叱られる度に、姉は庇ってくれていた。

 「リーア、あんまり無茶しちゃダメよ?お母さんはあなたを心配してるからこそ叱るんだからね。」

 「…ごめんなさい。」

 母に叱られても反省する気は起きないのに、姉に言われると素直に反省した。姉はいつだって私の味方でいてくれて、自分よりも私を優先してくれた。父が仕事を失い、収入がなくなって食べるものに困った時も、自分の分を私に与えてくれた。
 そんな優しい姉が病気になるなんて、神様はいないんじゃないかと思えた。

 「悪いが、私達では手の施しようがない。」

 医者は何も出来なかった。

 「お姉ちゃんは、私が絶対に助けてみせる!だから待ってて?」

 そして私は、姉の病気を治すために聖女学院へと入学した。


**********************


 「お姉ちゃん!」

 家に着くとすぐにマーサの元へと急いだ!
 ベッドに横たわるマーサの姿は、学院に入る前よりも明らかにやせ細っていた。

 「お姉ちゃん、約束を守りに帰って来たよ!」

 「……リーア、お帰りなさい。随分やつれたわね。勉強大変だったんじゃない?」

 やつれたのはお姉ちゃんの方だよ……。いつだって、私のことばかり心配して……。

 「お帰り。リーアが学院に行ってからも、マーサはあなたの事ばかり心配していたのよ。」

 お姉ちゃんの看病で疲れているのか、お母さんも痩せたみたい。

 「リーアの顔が見られてすごく幸せ!」

 自分の病気のせいで、ひたすら隠して来た力を使う事を選んだ妹に申し訳なくて…自分の病気の事よりもリーアの事ばかり考えていたマーサは、妹の帰宅を心から喜んだ。

 「お姉ちゃん、すぐに済むから目を閉じて?」

 マーサはにっこりと微笑み、静かに目を閉じた。

 お姉ちゃん、信頼してくれてありがとう。

 リーアがマーサに触れた瞬間、

 ぱあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
 
 柔らかい光が2人を包み込み、その光はマーサの体内へと吸い込まれた。吸い込まれた光はマーサの病を浄化し、静かに消えていった。

 「……お姉ちゃん、気分はどう?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

〖完結〗聖女の力を隠して生きて来たのに、妹に利用されました。このまま利用されたくないので、家を出て楽しく暮らします。

藍川みいな
恋愛
公爵令嬢のサンドラは、生まれた時から王太子であるエヴァンの婚約者だった。 サンドラの母は、魔力が強いとされる小国の王族で、サンドラを生んですぐに亡くなった。 サンドラの父はその後再婚し、妹のアンナが生まれた。 魔力が強い事を前提に、エヴァンの婚約者になったサンドラだったが、6歳までほとんど魔力がなかった。 父親からは役立たずと言われ、婚約者には見た目が気味悪いと言われ続けていたある日、聖女の力が覚醒する。だが、婚約者を好きになれず、国の道具になりたくなかったサンドラは、力を隠して生きていた。 力を隠して8年が経ったある日、妹のアンナが聖女だという噂が流れた。 そして、エヴァンから婚約を破棄すると言われ…… 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 ストックを全部出してしまったので、次からは1日1話投稿になります。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

ここは私の邸です。そろそろ出て行ってくれます?

藍川みいな
恋愛
「マリッサ、すまないが婚約は破棄させてもらう。俺は、運命の人を見つけたんだ!」 9年間婚約していた、デリオル様に婚約を破棄されました。運命の人とは、私の義妹のロクサーヌのようです。 そもそもデリオル様に好意を持っていないので、婚約破棄はかまいませんが、あなたには莫大な慰謝料を請求させていただきますし、借金の全額返済もしていただきます。それに、あなたが選んだロクサーヌは、令嬢ではありません。 幼い頃に両親を亡くした私は、8歳で侯爵になった。この国では、爵位を継いだ者には18歳まで後見人が必要で、ロクサーヌの父で私の叔父ドナルドが後見人として侯爵代理になった。 叔父は私を冷遇し、自分が侯爵のように振る舞って来ましたが、もうすぐ私は18歳。全てを返していただきます! 設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。

噂好きのローレッタ

水谷繭
恋愛
公爵令嬢リディアの婚約者は、レフィオル王国の第一王子アデルバート殿下だ。しかし、彼はリディアに冷たく、最近は小動物のように愛らしい男爵令嬢フィオナのほうばかり気にかけている。 ついには殿下とフィオナがつき合っているのではないかという噂まで耳にしたリディアは、婚約解消を申し出ることに。しかし、アデルバートは全く納得していないようで……。 ※二部以降雰囲気が変わるので、ご注意ください。少し後味悪いかもしれません(主人公はハピエンです) ※小説家になろうにも掲載しています ◆表紙画像はGirly Dropさんからお借りしました (旧題:婚約者は愛らしい男爵令嬢さんのほうがお好きなようなので、婚約解消を申し出てみました)

兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜

藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。 __婚約破棄、大歓迎だ。 そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った! 勝負は一瞬!王子は場外へ! シスコン兄と無自覚ブラコン妹。 そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。 周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!? 短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

旦那様は私に隠れて他の人と子供を育てていました

榎夜
恋愛
旦那様が怪しいんです。 私と旦那様は結婚して4年目になります。 可愛い2人の子供にも恵まれて、幸せな日々送っていました。 でも旦那様は.........

自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!

ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。 ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。 そしていつも去り際に一言。 「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」 ティアナは思う。 別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか… そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。

処理中です...