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大切な存在
しおりを挟む「な!? スチュワート様は何を言っているのですか!?」
「聞こえただろ? お前に興味なくなったから、出て行け。」
あまりにも感情のこもっていない言葉で言われ、モニカは奇声をあげた。
「キーーー!! なんなのよー!! あんたが旦那と別れて俺と結婚してくれって頭を下げてきたんじゃない! 今更どういうつもり!?」
「何度も言わせるな!! お前みたいな女が、貴族の俺と結婚出来るわけないだろ! お前には、平民の男がお似合いだ! つまみ出されたくなかったら、とっととこの邸から出ていけ!」
「冗談じゃないわ! 慰謝料よこしなさいよ! 慰謝料貰うまでは、一歩も動かないわよ!」
「誰かいないか!? この女をすぐにつまみ出せ!」
スチュワートに呼ばれた使用人数人が、モニカの腕をつかみ邸の外へと連れ出す。
「私に触るな! 私はここの奥様よ!」
モニカが何を言っても反応しない使用人達。使用人達は、マリアンヌに戻って来て欲しいと思っていた。モニカを迎えに行った使用人も、無愛想なわけではなく、モニカのせいでマリアンヌが出ていった事が許せなかったのだった。
「失ってから、マリアンヌの大切さに気づくなんて……」
そう気づいたスチュワートだったが、すぐにマリアンヌを迎えには行かなかった。
マリアンヌは一度も気持ちを口にはしなかったが、マリアンヌが自分を愛している事にスチュワートは気づいていた。自分を愛しているマリアンヌならば、マリアンヌから何か言ってくるはずだと思ったのだ。
だが、数ヶ月経っても、マリアンヌからの連絡はなく……痺れを切らしたスチュワートは、マリアンヌの実家へと様子を見に行く事にした。
そこで見たものに、スチュワートは困惑していた。
「なぜ、マリアンヌはあいつと一緒にいるのだ? それも、あんなに楽しそうにしやがって……マリアンヌは、俺の事だけを見ていればいいんだ!」
マリアンヌが実家に戻って来たあの日から、ロナルドは毎日ロード侯爵邸へ訪れていた。
「お気をつけてお帰りください。」
「気をつけるのは、デンべの方だな。乱暴な操縦は控えるように、マリアンヌからも言ってくれ。」
「それは、ロナルド様がマリアンヌ様に早くお会いしたいからと、急かすからではないですか!」
使用人のデンべに言い返されて、ロナルドは頬を赤く染めた。
ロナルドが乗った馬車が見えなくなるまで、マリアンヌはずっと見送っていた。その様子をじっと見つめるスチュワート。
「明日、あいつより早くマリアンヌに会いに来なくては! 俺のマリアンヌに手を出そうとしやがって、絶対に許さない!」
その日はマリアンヌに会うことなく、スチュワートは邸へと帰って行った。
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★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
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