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スチュワートの愛する人
しおりを挟むマリアンヌが出ていった事に、すぐに気づいたスチュワートは、マリアンヌが生活していた部屋で呆然としていた。
「……こんな手紙で終わりか? 3年間、共に暮らしてきたのに、マリアンヌには情というものがないのか!?」
マリアンヌが残した『さようなら。』だけの手紙が、納得いかないようだ。
「まあいい! もう終わった事だ! 明日にはモニカが来れるように、邸を徹底的に掃除させよう。」
使用人達に邸の隅々まで掃除させたスチュワートだったが、マリアンヌの部屋へは入る事を禁じ、誰にも触れさせなかった。
翌日、1人の女性がデブリン侯爵邸へと訪れた。
「モニカ、よく来たな。迎えの馬車は、ちゃんと時間通りに着いたのか?」
「スチュワート様! お会いしたかったですう! 時間通りには来ましたが、なんだか無愛想で嫌な感じでした。それより、私の部屋はどこですか?」
「ああ、部屋に案内しよう。」
スチュワートは1番日当たりが良かったマリアンヌの部屋の隣りの部屋に、モニカを案内した。
「ここが君の部屋だ。足りないものがあったら、使用人に頼むといい。」
「ここ……ですかあ? 私、隣りの部屋がいいです。ここは木の陰で日当たりが悪そうです。」
「隣りの部屋はダメだ。亡くなった母の部屋で、生前のままにしておきたいんだ。」
スチュワートは嘘をついた。本当の事を言えるはずはないが。
「亡くなってるならいいじゃないですか。死んだ人より生きてる人が使った方が、部屋も喜ぶわ。ねえ、隣りの部屋にしてくださいよお。」
マリアンヌなら絶対にそんな事は言わない。スチュワートはそう思っていた。
「ダメだと言ったはずだ。わがままが過ぎるぞ。」
イラッとしたのか、少しキツめの口調になっていた。
「こわーい! どうして怒ってるんですか? ずっと住む部屋なんだから、わがままくらいいいじゃないですかあ。」
スチュワートは考えていた。こいつのどこに惚れたのかと。久しぶりに会ったというのに、愛しさでいっぱいになるどころか、イライラが募る一方だった。
スチュワートがモニカに惚れた理由……それは、容姿だった。その容姿でさえ、派手に着飾り、化粧を塗りたくった顔に嫌悪感を抱いていた。
スチュワートはマリアンヌと暮らすうちに、マリアンヌの控えめな所やナチュラルな化粧でも美しい顔、夫を立ててくれる気づかいに、自然に惹かれていた事に今更気づいた。
「……モニカ、もうお前はいらない。出ていってくれ。」
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