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23、レイチェルの思惑通り
しおりを挟む手紙が届いてすぐに、寮からクライド伯爵邸へと馬車が出発した。
一時間程走らせたところで、馬車は人通りの少ない道に入る。すると道のど真ん中に、荷車が置いてあった。荷車を移動させようと馭者が馬車をとめたところで、ガラの悪い男達に辺りを囲まれていた。
「おい、女! 出て来い!」
リーダー格の男が、馬車の中に向かってそう言った。だが、中から出て来たのはケリーではなく、四人の兵士達だった。
「どういうことだ!? なんで兵士が乗ってやがる?? 話が違うぞ!」
男達が動揺しているすきに、兵士が次々と男達を倒していく。そしてすぐにダニエル殿下率いる騎士団が到着し、男達は皆捕らえられた。
ダニエル殿下は、リーダー格の男の首元に剣を突き付けた。
「お前達の雇い主はどこだ?」
捕らえた者達は、サラに金で雇われた者だ。金で雇われただけの男達にとって、サラには義理もない。命欲しさに、全てを話し出した。
男達はサラに金で雇われ、ケリーを殺す依頼を受けた。それだけでなく、ガードナーも殺すように依頼されていた。サラは、愛ではなく貴族として生きると決めたようだ。
数日後、ガードナーを見張っていた兵から、商人の身柄を確保したと連絡が届いた。だが、ガードナーの身柄はまだ確保していない。その理由は、サラがガードナー殺害を誰かに依頼すると、レイチェルが予想していたからだ。長い間家族でいたことで、両親の性格もキャロルの性格も理解していた。
「なんなんだ、お前達は!?」
サラが雇った男達が、ガードナーの住む小屋に押し入った。ここは森の中で、周りには木しかない。どんなに叫んだところで、誰にも聞こえはしない。
「悪く思うなよ? 俺達はただ、お前を殺せという依頼を受けただけだ」
剣を持った男が、ジリジリとガードナーに近付いて行く。リーダーがいないからか、獲物を苦しめて楽しみながら殺すつもりのようだ。
「私を……殺せだと……?」
ガードナーには、すぐに誰がそう依頼したか分かった。十六年もの間、一人の女性を待ち続けてきたというのに、愛する人の裏切りにショックを隠せない。そんなことはお構いなしに、男達は楽しそうに近付いて行く……
その時、小屋の外が騒がしくなった。
「何が起きているんだ!?」
小屋の外で、剣と剣が交わる音が聞こえる。外に置いて来た見張りが、誰かと戦っているようだ。誰もいないと思っていたのだから、予期せぬことに男達は慌てる。
ようやく音が止むと、小屋の中に兵が突入してきた。
「お前達の仲間は、皆斬り捨てた。死にたくなければ、剣を下ろせ」
ガードナーを助けに来たのは、ガードナーを見張っていた兵士達だった。
「冗談じゃねえ! 最後の一人になろうとも、戦い抜く!」
男達が素直に言うことを聞くはずはなく、兵に斬りかかる……が、あっさり捕らえられた。
「こんなに弱いのに、口だけは一人前だな……」
兵士は呆れた顔で、男を見た。
ガードナーは無事だったが、ショックからまだ立ち直れずにいた。それほど、サラを愛していたようだ。
兵士達は、商人、サラに雇われた男達、そしてガードナーを連行する為に、王都へと出発した。
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