上 下
15 / 42

15、変わり始めたクラスメイト

しおりを挟む


 ダンスパーティーが終わり、いつもの学園生活へと戻ったのだけれど……

 「ディアム様とのダンス、素晴らしかったです!」
 「もしかして、お二人は付き合っていらっしゃるのですか?」
 
 今まで関わろうとして来なかったクラスメイト達に、なぜか囲まれている。

 「あの……」

 オリビア様とエリック様の婚約は、陛下に許可を得たものではなかった。勝手に婚約をすると宣言したことで、エリック様と一緒にまた停学処分になってしまった。そんなオリビア様の目を、クラスメイト達は気にするのはやめたようだ。それでも、急に変わったクラスメイト達に戸惑う。

 「レイチェル様のことを、もっと知りたいです!」
 「父から聞いたのですが、レイチェル様は王妃様にそっくりだとか。王妃様に似ているなんて、羨ましいです」

 それを聞いた瞬間、そういうことかと納得がいった。昨日のダンスパーティーで、私を見た貴族達が驚いていたのを思い出す。
 似ているからといって、まさか私とオリビア様が入れ替わっているとは思わないだろうけれど、この噂はすぐに広まるだろう。そして、母にも届く。
 噂が広まってしまったら、母が大人しくしているとは思えない。けれどまだ、私達が入れ替えの件を知っていることを気付いてはいないだろう。
 どちらにしろ、今まで以上に用心しなければならない。

 「ちょっとちょっと! みんな、何なのよ!? 今まで関わろうとしなかったくせに、今さらレイチェルと仲良くしようだなんて図々しい! 王妃様に似ているから何? オリビア様とレイチェルが入れ替わっているとでも言いたいの?」

 デイジーから飛び出した言葉に、私とディアム様の心臓が飛び跳ねた。デイジーは何も知らない。危険に巻き込みたくなかったから、話さなかった。何も知らないからこそ、素直に思ったことを口にしたのだろう。

 「デイジーったら、そんなわけないじゃない。王妃様にも、オリビア様にも失礼よ。お昼休みが終わってしまうから、お昼を食べに行きましょう!」

 必死に平静を装いながら、私とディアム様でデイジーを屋上へと連れ出す。
 ダニエル殿下との待ち合わせ時間にはまだ早かったけれど、あのまま教室にいられるほど冷静ではいられなかった。

 「どうしたの? お昼休みは、まだ始まったばかりじゃない」

 これ以上、無自覚に確信をつかれる前に、デイジーにも全てを知ってもらうことにした。

 「デイジーに、黙っていたことがあるの。実はね、さっきデイジーが言ったことはあっているの」

 デイジーは自分が言ったことを思い出すように、考え込む。

 「……えぇーーーっ!!」

 デイジーが目を見開いて驚いたところで、ダニエル殿下が屋上に来た。
 殿下に事情を話し、デイジーに全てを話した。デイジーは驚いていたけれど、オリビア様が王女ではないことを喜んでいるように見える。

 「また復讐が出来るのね……ふふふっ……」

 今まで見た中で、一番悪い顔になっている。オリビア様にされたことを、相当根に持ってるようだ。

 「デイジー嬢、ありがとう。レイチェルの友人になってくれたそうだな。仲良くしてくれて、感謝している」

 「とんでもありません! 私の方こそ、感謝しています!」

 気のせいか、殿下を見るデイジーの瞳がキラキラしているように見える。

 「これからも、レイチェルを頼む」

 「もちろんです!」

 殿下が微笑むと、デイジーの瞳はさらにキラキラと輝いた。どうやら、デイジーは殿下に恋をしているようだ。

 「ごめんね、デイジー。こんなことに巻き込んでしまって……」

 このことを知っているというだけで、デイジーが危険になるのは避けられない。それだけでなく、私と一緒にいること自体が危険かもしれない。

 「謝るなら、今まで私に黙っていたことを謝って欲しい。私は、レイチェルを親友だと思っているわ。隠し事なんてされたら、悲しい」

 デイジーを危険に巻き込みたくないということばかり考えていたけれど、肝心のデイジーの気持ちを考えられていなかったのだと反省した。

 「隠していてごめんね」

 「私を、守ろうとしてくれたのよね。分かってる」

 私は本当に、恵まれていると思う。

 「デイジーが危険になるかもしれないなら、殿下が守るのはどうだろう? 殿下はもうすぐ卒業だ。殿下とデイジーがそういう仲だと噂になれば、デイジーに会いに来ても違和感はないと思う」

 ディアム様、ナイス!
 デイジーはまた瞳をキラキラさせながら、殿下を見ている。

 「そうか……私が、デイジー嬢を守ろう。それで、構わないか?」
 「はい! もちろんです!」

 嬉しそうなデイジーの様子を見れば、殿下に恋をしているのは一目瞭然なのに、殿下だけはその気持ちに気付いていないようだ。
 殿下が守ってくださるなら、デイジーも心配いらない。

しおりを挟む
感想 135

あなたにおすすめの小説

愛を求めることはやめましたので、ご安心いただけますと幸いです!

風見ゆうみ
恋愛
わたしの婚約者はレンジロード・ブロフコス侯爵令息。彼に愛されたくて、自分なりに努力してきたつもりだった。でも、彼には昔から好きな人がいた。 結婚式当日、レンジロード様から「君も知っていると思うが、私には愛する女性がいる。君と結婚しても、彼女のことを忘れたくないから忘れない。そして、私と君の結婚式を彼女に見られたくない」と言われ、結婚式を中止にするためにと階段から突き落とされてしまう。 レンジロード様に突き落とされたと訴えても、信じてくれる人は少数だけ。レンジロード様はわたしが階段を踏み外したと言う上に、わたしには話を合わせろと言う。 こんな人のどこが良かったのかしら??? 家族に相談し、離婚に向けて動き出すわたしだったが、わたしの変化に気がついたレンジロード様が、なぜかわたしにかまうようになり――

記憶を失くした彼女の手紙 消えてしまった完璧な令嬢と、王子の遅すぎた後悔の話

甘糖むい
恋愛
婚約者であるシェルニア公爵令嬢が記憶喪失となった。 王子はひっそりと喜んだ。これで愛するクロエ男爵令嬢と堂々と結婚できると。 その時、王子の元に一通の手紙が届いた。 そこに書かれていたのは3つの願いと1つの真実。 王子は絶望感に苛まれ後悔をする。

あなたには、この程度のこと、だったのかもしれませんが。

ふまさ
恋愛
 楽しみにしていた、パーティー。けれどその場は、信じられないほどに凍り付いていた。  でも。  愉快そうに声を上げて笑う者が、一人、いた。

これ以上私の心をかき乱さないで下さい

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユーリは、幼馴染のアレックスの事が、子供の頃から大好きだった。アレックスに振り向いてもらえるよう、日々努力を重ねているが、中々うまく行かない。 そんな中、アレックスが伯爵令嬢のセレナと、楽しそうにお茶をしている姿を目撃したユーリ。既に5度も婚約の申し込みを断られているユーリは、もう一度真剣にアレックスに気持ちを伝え、断られたら諦めよう。 そう決意し、アレックスに気持ちを伝えるが、いつも通りはぐらかされてしまった。それでも諦めきれないユーリは、アレックスに詰め寄るが “君を令嬢として受け入れられない、この気持ちは一生変わらない” そうはっきりと言われてしまう。アレックスの本心を聞き、酷く傷ついたユーリは、半期休みを利用し、兄夫婦が暮らす領地に向かう事にしたのだが。 そこでユーリを待っていたのは…

拝啓、婚約者様。ごきげんよう。そしてさようなら

みおな
恋愛
 子爵令嬢のクロエ・ルーベンスは今日も《おひとり様》で夜会に参加する。 公爵家を継ぐ予定の婚約者がいながら、だ。  クロエの婚約者、クライヴ・コンラッド公爵令息は、婚約が決まった時から一度も婚約者としての義務を果たしていない。  クライヴは、ずっと義妹のファンティーヌを優先するからだ。 「ファンティーヌが熱を出したから、出かけられない」 「ファンティーヌが行きたいと言っているから、エスコートは出来ない」 「ファンティーヌが」 「ファンティーヌが」  だからクロエは、学園卒業式のパーティーで顔を合わせたクライヴに、にっこりと微笑んで伝える。 「私のことはお気になさらず」

あなたに未練などありません

風見ゆうみ
恋愛
「本当は前から知っていたんだ。君がキャロをいじめていた事」 初恋であり、ずっと思いを寄せていた婚約者からありえない事を言われ、侯爵令嬢であるわたし、アニエス・ロロアルの頭の中は真っ白になった。 わたしの婚約者はクォント国の第2王子ヘイスト殿下、幼馴染で親友のキャロラインは他の友人達と結託して嘘をつき、私から婚約者を奪おうと考えたようだった。 数日後の王家主催のパーティーでヘイスト殿下に婚約破棄されると知った父は激怒し、元々、わたしを憎んでいた事もあり、婚約破棄後はわたしとの縁を切り、わたしを家から追い出すと告げ、それを承認する書面にサインまでさせられてしまう。 そして、予告通り出席したパーティーで婚約破棄を告げられ絶望していたわたしに、その場で求婚してきたのは、ヘイスト殿下の兄であり病弱だという事で有名なジェレミー王太子殿下だった…。 ※史実とは関係なく、設定もゆるい、ご都合主義です。 ※中世ヨーロッパ風で貴族制度はありますが、法律、武器、食べ物などは現代風です。話を進めるにあたり、都合の良い世界観となっています。 ※誤字脱字など見直して気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません。

【完結】愛したあなたは本当に愛する人と幸せになって下さい

高瀬船
恋愛
伯爵家のティアーリア・クランディアは公爵家嫡男、クライヴ・ディー・アウサンドラと婚約秒読みの段階であった。 だが、ティアーリアはある日クライヴと彼の従者二人が話している所に出くわし、聞いてしまう。 クライヴが本当に婚約したかったのはティアーリアの妹のラティリナであったと。 ショックを受けるティアーリアだったが、愛する彼の為自分は身を引く事を決意した。 【誤字脱字のご報告ありがとうございます!小っ恥ずかしい誤字のご報告ありがとうございます!個別にご返信出来ておらず申し訳ございません( •́ •̀ )】

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

処理中です...